しかし、こうした経済活動に伴い、生産現場では、プランテーション開発による森林減少や、地域住民の権利侵害といった環境・社会面での課題も報告されている。これらの地域のなかには、ゾウやトラなどの絶滅危惧種が生息可能な生物多様性が豊かな自然が残る場所もあることからも、自然環境を守りながら持続可能な生産を行なえるかの検討と具体的な取り組みの開始は急務とWWFは考えている。
こうした背景から、世界のタイヤ・自動車関連産業が天然ゴムの持続可能性に果たす役割は大きく、またこれらの業界でグローバルにビジネスを展開する企業の多く存在する日本は、市場という側面から大きな貢献ができる可能性がある。ここ数年の間にも、WWFはミシュランやトヨタ自動車とのグローバルパートナーシップにおいて、天然ゴムのトレーサビリティや持続可能性の確認について協働をしてきた。
そして、こうした動きを一部の先進企業だけの取り組みに留めず、世界中の天然ゴムサプライチェーンと生産地へ拡大させるため、天然ゴムや持続可能性に関する様々なステークホルダーによって、GPSNRの設立に向けた準備が進められてきた。
WWFでは、GPSNRが今後WBCSD傘下のTIPの枠を超え、天然ゴムの生産者、加工企業、自動車メーカー、NGOなどがサプライチェーンを通じて協働し、トレーサビリティーの確立や、より高い持続可能性が実現されることを期待している。