未発売・未発表のトヨタ新型スープラ(A90)が『GAZOO Racing A90』としてSP8Tクラス(2600cc以上4000cc以下の市販ターボ車クラス)に参戦を果たしたのだ。
【超速報】モリゾウ選手(豊田章男トヨタ自動車社長)がニュルブルクリンクで新型スープラを電撃試乗!午前8時30分から予定されていた予選は濃霧のために一時間遅れで開始されたが、ニュルブルクリンクは気温は低いものの澄み渡る秋晴れの好天に恵まれた。
ドイツは秋休み中という事もあり、サーキットには子供連れの家族も多く訪れ大賑わい。162台ものマシンが華々しく並ぶ圧巻のスタートグリッドで、スープラの周りだけは他のどのマシンよりも一際大きな人だかりができており、その期待の高さがうかがえた。
午前中の予選で94番グリッド(クラス1位/エントリー2台)を獲得したA90。予選タイムは計測3周で9分31秒235とまずまず。モリゾウ選手(豊田章男トヨタ自動車社長)も最後にステアリングを握った。
午後1時、第一スタートグループ94番グリッドからスタートしたA90スープラは、途中マシンの状態の確認のためか6度のピットインを重ねながら無事完走。
綜合116位/クラス2位という成績を残した。
ベストタイムは10周目に計測した9分28秒164。予選タイムを上回った。
モリゾウ選手はラストスティントを担当。4時間経過後の、歴史的チェッカーフラッグを受けた。
19日(金)からテスト走行を開始した新型スープラA90。
関係者への取材を総合すると、今回の参戦の意義は、新型スープラの正式発表前に行われたモリゾウ選手による最終確認テストだったが、実はモリゾウ選手自らがこのニュルでの最終テストドライブを買って出たという。それも今回の仕様をドライブしたのが、今回が初めてというから驚きだ。
写真からも、GTウイングやオーバーフェンダーといったレース用のスペシャルエアロパーツや、極端な車高ダウンは行われていないことがわかり、まさにほぼ『市販車』状態でVLN最終戦に参加したことがわかる。
実はモリゾウ選手、新型スープラのみでレース出走しただけではなく、今回行われたこのVLN最終戦にダブルエントリーし、新型スープラで出走する直前にトヨタ86でもコースイン。2周を走行しているのだ。
市販状態の新型スープラでニュルを単独で走行するだけではなく、VLNに参戦して他車とのバトルを繰り広げることで、その走行フィーリングや挙動、そしてタイム比較が可能となる。新型スープラが現在の位置づけが、より明確に確認できたことだろう。
同時に乗り慣れたトヨタ86で同じレースを走ることで、新型スープラの市販車性能の比較テストを行なったと考えられる。
今回のVLN最終戦は、究極の『感応試験』をモリゾウ選手自らが行ったと考えてよいだろう。
残念ながらモリゾウ選手のコメントを得ることはできなかったが、レース後のその表情を写真から見る限り、満足のいくテストだったことは間違いなさそうだ。
ただ、モリゾウ選手のチェックにより仕様や採用パーツが変更されたという事例は過去にも存在する。それだけに、今回のテスト結果が市販車にどう反映されるのか、今後の取材が楽しみで仕方ない。
レース後、多田哲哉チーフエンジニアは、「モリゾウさんが『楽しいくて仕方がない』と言っており、それを聞いて何よりも嬉しいし、ほっとしています」とコメント。
また、「まるで我が子を送り出す気持ちでとても嬉しいです。86が(VLNに)これだけたくさん走り、トヨタの誇るクルマがニュルブルクリンクでどれだけ愛されているのかという事がよくわかり感動しました。いつかスープラも86と同様に、この伝統あるニュルブルクリンクでファンからもドライバーからも愛される存在に育ってくれる事を望んでいます」と、ドイツのモータースポーツ文化、そしてニュルブルクリンクに対する感謝の言葉も述べている。