REPORT◎佐藤久実(SATO Kumi)
PHOTO◎篠原晃一(SHINOHARA Koichi)
ステルヴィオ峠は、イタリア北部、スイスとの国境近くのアルプス山中にあり「世界最高のドライビングロード」と呼ばれる。標高2757mで最大斜度度、ものヘアピンコーナーが続く、走り屋の聖地とも言われる峠。自転車レースのジロ・デ・イタリアで度々使われるコースとしても有名だ。
さて、アルファロメオ初のSUVモデルにこの峠の名前が冠されたが、その由来となったのがアイライン。目尻がキュッと切れ長になっている。その鋭角的なラインをヘアピンカーブになぞらえたのだという。
いかにもパッションを感じそうな面構えのステルヴィオ、このクルマは「ジュルジオ・プロジェクト」から誕生した。これは、FCAグループの精鋭により、FRプラットフォームをイチから開発するというプロジェクト。アルフォロメオのみならず他ブランドのメンバーも加わり、またフェラーリのエンジニアがエンジンの開発にも携わっている。その第1弾となったのが昨年登場したスポーツセダンのジュリアで、第2弾がこのステルヴィオというわけだ。実際、〝ジュリアのSUV版”ともいうべきキャラクターを持っている。
ルックスもさることながら、イタリアンデザインのインテリアが刺さる。今回試乗したのはチョコレート(ブラウン)レザーをあしらったシックなもの。ホワイトのボディとのコントラストも含めてオシャレ。シンプルなのにちゃんとデザインされていて、独特な雰囲気を作り出している。センターコンソールには必要最低限のスイッチしかレイアウトされておらず、実にシンプルだ。
ドライバーズシートに座ると、SUVにありがちなアップライトな感じではなく、スポーツカー同様のやや低いドライビングポジションが取れるので、動き出す前からテンションが上がる。そして、パーキングスピードで動き出し、ステアリングを切った瞬間に度肝を抜かれた。キレッキレなのだ。ステアリングギヤ比は12対1とクイック。このボディでこんなクイックにして大丈夫?と普通は思う。だが、その後スピードを上げていっても何の問題もなかった。始めは少しとまどうかもしれないが、慣れると少ない舵角で操作できるので、たとえ峠を飛ばしているような状況じゃなくても楽なのだ。そして、この機敏さが、街中を普通に走っている時もスポーティさを演出してくれる。
なぜ車高が高くてボディも大きいのに、こんなにステアリングをクイックにしても大丈夫なのかというと、ジュリアとロール角がほぼ同じだからだ。つまり、他のセダンやSUVと比べて圧倒的にロール角が少ない。また、ロール軸もジュリアと同距離なので、実際のヒップポイントは上がっていながら、スポーツセダンと運転感覚が非常に近く、ユサユサッとした動きは見られない。
2.0ℓターボエンジンには8速ATが組み合わされ、2000rpm〜5000rpmくらいまではフラットなトルクな特性だ。アクセルを踏み込んでいくと、その加速感は凄くパワフル! というほどではない。だが、スルスルと気持ち良く走り、速い。この感覚はボディの軽さによるものだろう。エンジンフードやリヤハッチなどにはアルミを使い、プロペラシャフトは何とカーボン製だ。プロペラシャフトにカーボンを使うなんて、本格スポーツカーでしか聞いたことがない。結果、欧州仕様で約1600kg、パワーウエイトレシオは6.0kg/ps以下とクラストップを実現。さらに前後重量配分は50対50と、バランスにも優れている。これらの効果で軽快なドライブフィールが得られるのだ。DNAのD(ダイナミック)を選べばさらにレスポンス良い走りを堪能できる。
さらにこのクルマのキャラクターを際立たせているのは、通常は100%リヤ駆動で、滑った時だけフロントにトルクを流すというシステムだ。世の中スポーティSUVが多いが、ピュアFRベースのAWDはほとんどない。でもスポーティとはいえホイールベースが長く、室内空間やラゲッジルームはゆとりがあるので心配なく。
とどめはブレーキ。始めて乗ると、「効かない」と感じるかもしれないが、ステルヴィオはスポーツカーのような踏力コントロールタイプなのだ。つまり、しっかり踏まないと止まらないがコントロール性には優れる。もちろん、意図的なチューニングとのこと。このクルマ、いろんな意味でSUVの範疇を超えている。
ステルヴィオは、Dセグメントで比較的大きなボディサイズのSUVでありながら、スポーツカー並みにパッションが感じられるクルマだ。年内に導入予定という2.0ℓ510psエンジン搭載のクアドリフォリオの試乗が今から楽しみだ。
※本記事は『GENROQ』2018年9月号の記事を再編集、転載したものです。
SPECIFICATIONS
アルファロメオ・ステルヴィオ・ファーストエディション
■ボディサイズ:全長4690×全幅1905×全高1680mmホイールベース:2820mm ■車両重量:1810kg ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ総排気量:1995cc最高出力:206kW(280ps)/5250rpm最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2250rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:FダブルウイッシュボーンRマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F&R255/45R2(08.5J) ■環境性能(JC08モード)燃料消費率:11.8km/ℓ CO2排出量:197g/km ■車両本体価格:689万円