PHOTO&REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
国内損保唯一の施設で衝突実験を公開、EDRを活用した損害調査や予防安全装備エーミング研修も紹介…あいおいニッセイ同和損保 AD損調では、今後のCASE(つながるクルマ、自動化、シェア、電動化)普及・進化を見据え、エアバッグ制御用コンピューターに内蔵されており、一定以上の衝撃が加わるとその前後5秒間の挙動に関する詳細な車両情報を記録するEDR(イベントデータレコーダー)を、自動車事故の損害調査に活用する取り組みを昨年より開始。
ボッシュのEDRデータ抽出ツール「CDR(クラッシュデータリトリーバル)」を用いてEDRを解析するための専門トレーニングを受け、試験に合格した者にのみ与えられる「CDRアナリスト」を増員するなど、EDR調査の組織体制構築を進めている。
また、能力開発部の駒形三雄部長と同部支援開発グループの宇津木孝弘グループ長が、自動運転技術の進化に伴う各国の事故原因調査の変化を振り返りつつ、同社が過去1年弱の間に実際の事故で行われたEDR調査が61件にのぼったことを報告。
交差点での出会い頭事故において、契約車両が事故直前に一時停止したかどうかの判定にEDRデータを用いるなどの具体的事例が紹介され、「これまでの調査でも複雑な事故を迅速に解決できるようになり、契約者からも感謝の声が寄せられている」と、EDR調査の成果を示している。
さらにその後、視界共有システムとskypeを用いたEDR調査を実演。前者では事故車両の実車調査を行っているアジャスターのiPadを介してEDRデータの抽出方法を、後者では支店駐在のアジャスターから送られたEDRデータに記載された舵角およびヨーレートのプラスマイナスどちらが左または右かを確認・分析する方法を、本社オペレーターがレクチャーする様子が披露された。
AD損調では今後、EDR調査の組織体制構築とともに調査実績・ノウハウを蓄積。毎年調査件数を倍増させていく計画を掲げている。
2020年頃にEDRの搭載が義務化されるとともに、今後レベル3以上の自動運転車両が普及すれば、損害保険会社は事故の原因がどの車両にあるのか、そしてドライバー側と車両側のどちらにあるのかを、より正確かつ綿密に分析し特定する必要がある。
そのためには、事故前後の車両の挙動やドライバーの操作のみならず、車両側でどのようにパワートレインやシャシーを電子制御したかをEDRデータから、事故当時の天候や路面、交通状況をテレマティクスに蓄積されたビッグデータから読み取らなければならない。
これからの事故調査において、損害保険会社とアジャスターに求められるものは余りにも大きい。