ではなぜ彼らは吊り下げ式ではなくオルガン式にこだわるのだろう。まずひとつ考えられるのは、右足の疲労軽減だ。膝下には脛筋と背面の平目筋という2つの筋肉がある。踵を固定できるオルガン式は、ペダルに右足を載せ、反力で足の重さで支えておけば、背面の平目筋のみを使ってアクセル操作が可能となる。だが、吊り下げ式だと、足が固定されないため、足を引くときに使う脛筋も頻繁に使うことになる。長距離運転になればなるほど、オルガン式と吊り下げ式では疲労度に差が出てくるのは自明のことだろう。
もうひとつはスムーズなアクセル操作にある。オルガン式は踵を支点として、右足を上から下への回転運動でスムーズに動かすことができる。つまり右足がビシッと固定されることで、微細なアクセルワークが可能となるのだ。特に低速トルクが豊かなディーゼル車やエンジンレスポンスの良いスポーツカーほど、オルガン式ペダルのメリットは大きいだろう。
だが、時代は変わり、日本車でもオルガン式ペダルのメリットに注目し、積極的に全車採用しているメーカーがある。それが“人馬一体”の走りを提唱するマツダだ。マツダはSKYACTIVテクノロジー導入後から、すべての車種にオルガン式ペダルを採用してきた。人間工学に基づくドライビングポジションを構築した上で、オルガン式ペダルを採用することで、他の日本車メーカーを上回る良好な運転環境を実現しようと努めている。ドライビングに対するマツダの高い意識は、こんなところからも垣間見えるのだ。