とはいえ、世の中には、ものすごく速くてハンドリングもいいクルマが登場してきている。古くは、BMWのX6Mやポルシェ・カイエン、最近ではマセラティ・レヴァンテなどがそれにあたるだろう。今回紹介するアルファロメオ・ステルヴィオも、スポーツドライビングが楽しめるSUVである。
前述したように、私はSUVというカテゴリーに食指が動かないタイプのクルマ好きだ。これまでの車歴でSUVを選んだことはない。だから、アルファロメオがSUVを作ると聞いて、「アルファよ、オマエもか」と思ったクチである。だが、アルファロメオに関しては、156を二台乗り継いだことがある。アルフィスタとまでは言わないが、アルファ・シンパではある。
さて、ステルヴィオである。
GIORGIO(ジョルジュ)アーキテクチャーという、アルファの後輪駆動の新しい技術基盤で最初に登場したのがジュリアだ。BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4、ジャガーXEなどのライバルと直接対決するDセグメントのセダンである。
エンジンは2.0ℓ直4ターボ(2.9ℓV6ターボも存在するが、価格が1100万円超えなので、ここでは扱わないことにする)。マルチエアという凝った可変バルブタイミング機構を持つエンジンと名機ZF 8HP(8速AT)を組み合わせる、ほどほどの大きさのセダンということで大いに気になる存在ではある。
今回試乗したステルヴィオは、ジュリアと技術基盤を同じくするSUVだ。
乗って驚いた。身のこなしが軽い。まるで、スポーティセダンを操っているかのようだ。いや、ジュリアよりもずっとスポーティなのだ。車重は重いし、重心だって高いはずなのに、それをまったく感じさせない。驚いた。ボディサイズは、ステルヴィオの方が、35mm長く40mm幅広く、245mm高いはずなのに、感覚的には小さく感じるほどだった。
これまで運転したSUVのなかでもっともスポーティなモデルはと聞かれたら、ステルヴィオと即答できるほど、ステルヴィオの走りは素晴らしい。プロモーションビデオで、イタリアのステルヴィオ峠を駆け抜けるステルヴィオの映像を見て、どうしてSUVであんな走りをしなくてはいけないのだろう?と思ったが、試乗後は納得した。
しかし、私が思ったのは、「ジュリアも同じ走りのフィーリングになればいいのに」だった。新しい技術基盤の最初のモデルは得てして、そのポテンシャルを使い切ることはできない場合がある(TNGAも第一弾のプリウスより、第二弾のC-HR、第三弾のカローラスポーツの方がずっと走りはいい)。GIORGIO(ジョルジュ)アーキテクチャーも、第二弾のステルヴィオの方が出来がいいのかもしれない。であれば、年次改良でジュリアもこうなるかも、と思うわけだ。
スポーティなSUVが欲しい、ならば、ステルヴィオを選んで間違いない。が、セダン好きでアンチSUV派は、それでもジュリアに期待したいのである。
アルファロメオ・ステルヴィオ・ファーストエディション(689万円)
全長×全幅×全高:4690×1905×1680mm
ホイールベース:2820mm
車重:1810mm
トレッド:F1610/R1650mm
エンジン
直列4気筒SOHCターボ
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
燃料供給:筒内燃料直接噴射
最高出力:280ps(206kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm/2250rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン/Rマルチリンク
タイヤ:255/45R20
駆動方式:フルタイム4WD
【参考】アルファロメオ・ジュリア・ヴェローチェ(597万円)
全長×全幅×全高:4655×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1670mm
トレッド:F1555/R1625mm
エンジン
直列4気筒SOHCターボ
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
燃料供給:筒内燃料直接噴射
最高出力:280ps(206kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm/2250rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン/Rマルチリンク
タイヤ:225/45R18
駆動方式:フルタイム4WD(FRモデルもあり)