LIMEXは炭酸カルシウムを50%以上含む、無機フィラー分散系の複合材料であり、日本発の新素材。通常、普通紙1トン生産する場合、樹木を約20本、水を約100トン使うが、LIMEXは原料に木や水を使用
せず、石灰石0.6~0.8トンとポリオレフィン約0.2~0.4トンからLIMEX の紙代替製品(LIMEXシート)1トンの生産が可能だ。
※国内の製紙業界においては、 単に伐採するだけでなく海外で植林活動を実施
※使用済みの LIMEX の紙代替製品を廃棄する場合は可燃ごみ扱い(古紙回収に出さない)
プラスチックの代替としても期待が集まる。従来のプラスチックの原料は石油由来樹脂100%であるが、LIMEXは主原料が石灰石であり、石油由来樹脂の使用量を大きく削減可能。単価の安い石灰石を主原料とすることで価格競争力を有する。石灰石は、日本でも100%自給自足できる資源。世界各地の埋蔵量も豊富で、ほぼ無尽蔵だ。また、LIMEXの印刷物等のリサイクル材から、LIMEX 製のプラスチック成形品(LIMEXペレットを加工)を作れ、環境負荷軽減に貢献できる。
アップサイクルとはサスティナブル(持続可能)な「モノづくり」の新たな方法論のひとつ。従来から行われてきたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化、その再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを最終的な目的としている。
現在、SDGsの達成に向けて企業及び自治体の配慮や対応が求められている。TBMが開発する石灰石を主原料としたLIMEXは、水や木をほぼ使わずに紙代替製品を、石油の使用量を減らしてプラスチック代替製品をつくれる。さらに、LIMEXはLIMEXシート(LIMEXをシート状に成膜したもの)からLIMEXペレット(LIMEXをペレット状に製造して加工したもの)を高効率につくることが可能なため、環境に配慮されたアップサイクルが可能だ。
2017年12月、TBMはLIMEXを活用して鯖江市の漆器産業の可能性を高め、持続可能な地域活性化の実現に貢献することを目的に、KMDの研究員や自治体、産地組合、企業が活動している「工芸みらいプロジェクト」、越前漆器協同組合の青年部との連携により、「ベース素材にLIMEXを採用した漆仕上げのiPhoneケース」を共同開発した。本LIMEX製品の開発にあたり、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて、 クラウドファンディングを行い、目標を達成した。
前述の取り組みをより発展させ、鯖江市における環境負荷の低い地域モデルの構築、持続可能なものづくりを推進することを目的に、TBM、鯖江市、KMDは、相互連携協定に基づき次の活動に取り組む。なお、アップサイクルに向けた使用済みLIMEX製品の回収は、日本郵便(鯖江市内の郵便局)と連携する。
1.紙やプラスチックの代替となる新素材LIMEX(ライメックス)を活用したアップサイクルの研究
(1)LIMEXを鯖江市内で使用される印刷物に用いたアップサイクルの実施
(2)地域企業と連携したLIMEX製印刷物の回収スキームの構築
(3)アップサイクルによって製造されたプラスチック代替成形品(LIMEX製の漆の食器等)の商品化
及びブランディング
(4)地域企業及び地域産業と連携した、アップサイクルにより製造した商品の販売スキームの構築。
また、アップサイクルの研究実施のため、それぞれ以下の役割を担う。
TBM…アップサイクル、 環境問題及び資源枯渇に関するソリューションの提供
鯖江市…人的ネットワークの提供
KMD…人的ネットワークの提供及び地域産業ブランディングの支援
2.まちづくりのための連携
3.地域産業振興のための連携
4.その他、 前条の目的を達成するために必要な事項
今後、鯖江市内で開催される一部のイベントや大会などの運営主体者と連携して、鯖江市内におけるLIMEXの紙代替製品(印刷物)の利用シーンの拡大を模索し、アップサイクルを実施していく。またアップサイクルによる漆仕上げの食器など、LIMEX製品のバリエーションを増やしながら、鯖江市の持続可能なものづくりに貢献し、環境負荷の低い地域モデルの構築を確立していく。