REPORT●森本太郎(MORIMOTO Taro) PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)/神村 聖(KAMIMURA Tadashi)
まず、速さが違う。1.6L NAから1.4ターボに変更され、136ps、16.3kgmから140ps、23.4kgmへ。とくにトルクが44%増しと文字通りの別次元に突入した。車両重量は70kg減の970kgで、トルク・ウエイト・レシオは50%以上向上! そんなデータを知らなくても、ラテンの小型車のようにレスポンス良く鋭い加速を示すことに驚く。ボディがしっかりしており安心感もある。その速さは、まさに痛快!というコトバがぴったりだ。高価格で何百馬力、という贅沢なスポーツカーの速さもいいが、速さの実感、操っているリアリティが楽しめのはむしろこちらのほうだ。だから、通勤特急ナンバーには、やはりスイフトスポーツを推したい。できればMTで乗りたいところだが、先代のCVTから6ATに代わったこと、ターボエンジン化で2ペダルとのマッチングが良くなったことから、AT車も十分に検楽しめる。試乗したうえで、好みで選べばよいだろう。
2選と言うからには、もう1台の、ホンキのスポーツを紹介しておきたい。ズバリ、S660だ。こちらは軽自動車だが、200万円から購入できる点が、スイフトスポーツと重なる。ただし、オススメする理由はスイスポとはまったく異なる。速く、安くて実用性もバツグンのスイフトスポーツに対してS660は、速くて楽しいけれど、その速さは軽の限界もあり、なおかつ実用性はほぼない。その代わり、小さいけれどスポーツカーの雰囲気は満点だ。軽自動車のレベルを超えた高いボディ剛性や専用パーツの作り込み、こだわりの質感はさすが、ホンダが久々に放った本格派の軽ミッドシップスポーツというレベルにある。
200万円を投じて、速さと実用性という面でもコストバリューの高いスイスポを選ぶのが常套手段だろう。ただ、通勤特急という使い方では、実際の速さ以上にスポーツカーらしいストーリーが欲しい人もいるだろう。低いヒップポジション、タイトなコックピット、ミッドシップエンジン、パワーに対して十分過ぎるほど余力をもったシャシー、オープンエアドライブ、文句無しにスポーツカーらしいスタイリング。これらはすべて、スイスポにはないS660だけの特権だ。ふたりで乗るとカバンを置くスペースもない、というのもある意味スポーツカーらしいストーリーのひとつだろう。スイフトスポーツの刺激的な速さにドキドキするか、S660のストーリーやスポーツカーらしさに高揚するかは、あたなの判断に委ねられている。
モーターファン別冊 ニューモデル速報 第559弾 新型スイフトスポーツのすべて
1.4Lターボと970kgの軽量ボディが生む刺激に満ちた走りで、史上最速のスイフトスポーツ”の称号を得た痛快ホットハッチを、全方位から徹底解説!