排気ガス規制やオイルショックなどの影響もあり、1973年に生産を中止。全生産台数は420台と言われている。
滑らかにスラントしたフロ ントノーズの両端をえぐってヘッドライトを装着するのは、この時代のスポーツカーによく見られる手法で、これによりヘッドライトの高さも確保できる。ライト本体は2灯のシールドビーム。砲弾型のフェンダーミラーは、反射光を防ぐために艶消しブラックの塗装が施される。赤字の「432」のエンブレム。432というのは4バルブ、3キャブレター、2カムシャフトの意味だ。給油口は右リヤフェンダーにあり、メインキーとは別の専用キーで開閉する。ホイールはマグネシウム製。マグネシウムホイールを標準装備した日本車はトヨタ2000GTとZ432だけだ。重量はスチールの2/3だと、座談会で語られている。フロントブレーキは2ポッドディスクで、オリジナルのタイヤサイズは6.95H-14。スポーツモデルなのにリヤがアルミフィンながらドラムブレーキというのは、時代を感じさせる。しかし高速域でも効きは十分だと、岡崎氏が座談会で語っている。S20エンジンの性能は、スカイラインGT-Rと同様の160ps/7000rpm、18.0kgm/5600rpm。フェアレディZに搭載するにあたり、オイルパンやエアクリーナーの形状はGT-Rと異なると、座談会で語られている。シャシープレートは左フェンダー内側のやや低い位置に貼られている。シンプルかつスパルタンなインパネは、スポーツカーのコックピットらしい男っぽさを感じさせる。センター上部に丸3連メーターを埋め込むのはS30から始まったもので、現行モデルでも引き継がれている。メーターパネルというものを持たず、ダッシュボードに直接メーターを埋め込むという独自のスタイルは先代のフェアレディSR311後期モデルから継承したもの。イエローゾーンは最高馬力発生回転の7000rpmから。 | 3連メーターは右が水温系&油圧計、中央が電圧計&燃料計。左は本来時計だが、この車両では後付けの油圧計に変更されている。 |
センターコンソールは上から室内灯(ライト本体を押すと点灯する)、空調吹き出し口、ヒーター。その下にはラジオがあるのだが、この車両では取り外されている。 | 5速フロアシフトレバーの手前はチョークとスロットルレバー、その手前にはリヤ熱線でデフォッガーとパーキングライトスイッチ。 |
オルガン式アクセルペダルだったGT-Rに対し、Z432は吊り下げ式。小さいながらフットレストも装備されている。 | 助手席側の足元にも大きなフットレストを備える。 |
ビニールレザーのドア内張りは平板でシンプルな形状。ドアハンドルの位置の低さに驚く。ヘッドレスト一体型のシートはスポーティなバケットタイプで、GT-Rと違ってリクライニングも可能。当時の座談会で岡崎氏が「ブカブカ」と表現しているように、座った感触はソフトでタイト感は薄い。ノーズは切り落とされたような形状で、ボンネット前端とバンパーがほぼ同じ位置。1971年に登場した240ZGはボンネットが延長されてフラットなロングノーズとなっていた。この通称“Gノーズ”は社外パーツが大量に出回るなど、人気のスタイルとなる。ボンネットのZエンブレムは、リヤクォーターに装着されているものと微妙にデザインが異なる。丸形でスモール&ブレーキランプがウインカー機能を兼ねていたフェアレディSR311から、オレンジ色のウインカーを独立させたコンビネーションスタイルとなり、一気にモダンになったテールランプ。マフラーは左右ではなく上下の2本出しというのが、Z432の特徴のひとつ。金属製のバンパーはコーナーにラバーが装着されて小傷を防ぐ。北米では1974年から5マイル(約8km/h)の衝突を吸収できなければいけない、いわゆる5マイルバンパーが義務づけられたため、このようなクラシカルな金属製バンパーは急速に姿を消していくことになる。ダンパー付きのリヤハッチを開けると、意外と広いスペースが現れる。この実用性の高さも、人気を得た理由のひとつだろう。当時は高級車にしか装備されていなかった熱線でデフォッガーを装備。熱線が縦に入っているのが面白い。
福野礼一郎のクルマ論評3
『福野礼一郎のクルマ論評2014』『福野礼一郎のクルマ論評2』に続く単行本第三弾。今回は、14台のクルマ論評に加えて、モーターファン・ロードテストの5台(トヨタ2000GT、マツダ・コスモスポーツ、日産スカイラインGT-R(KPGC10)、日産フェアレディZ432、いすゞベレットGTR)を現代の視点で掘り下げる座談会も収録。スペシャルコンテンツとして、「福野礼一郎選定 項目別ベストワースト2018」も掲載しています。