とき:昭和42年6月3日・9日~10日


ところ:東京農工大学


    広島県三次(みよし)東洋工業テストコース


座談会:東洋工業本社会議室

1967年8月号に掲載した[Road Test マツダコスモ・スポーツ]を再録する。ページレイアウト、文章、グラフと表については出来るだけ当時のまま再現し、誤字脱字のみ修正した。写真は、オリジナル原稿が散逸していたため、同日(あるいは同時期)に撮影された写真に差し替えている。差し替えた写真のキャプションには「※」をつけた。

独自のロータリーエンジン完成

 本 誌 はじめに、コスモの心臓ともいうべき、ロータリーエンジンの完成までのご苦労をおきかせ下さい。


 山本(健) 東洋工業がロータリーエンジンを始めてから約6年経ちます。その間、一番問題となったのは、耐久性です。研究・開発の段階でも一番努力したのはこの点でした。そして一応、耐久性についてのメドがついたあとは、自動車用エンジンとしての適正化、たとえば、フレキシビリティを増して、低速での性能を上げるとか、トルクを上げるなどの問題を解決し、絶対の自信がもてるところまできまして、今回の発売となったわけです。


 耐久性に直接関係のある問題としてはトロコイドの内面に発生するチャター・マーク、つまり波状摩耗、これが一番の難題でした。これをいかに解決させるかが、研究の最重要課題だったのです。なぜ起きるのかが、まったくわからなかったので、その対策もありませんでした。そこで、まず、波状摩耗は何故おきるのか、という基礎的な問題から取り組んで、ジックリと研究を行いまして、結局、この地道な方法から、チャター・マーク解決の途がひらかれたのです。


 本 誌 コスモのエンジンはNSUのバンケル・スパイダーのシングルローターのエンジンとはずい分ちがっているようですね。


 山本(健) NSUのものと理論は同じですが、構造的には、非常に変わっています。スパイダーのエンジンは、どちらかといえば、高速、高出力という点に非常に重点をおいていましたが、東洋工業の開発したものは、できるだけ、広い回転数の範囲で使用できるフレキシブルなエンジンにするために、苦心しています。そのためにNSUのものと大きくちがっているのは、吸入方式です。ご存知のようにハウジングに直角の方向から吸気するサイド・ポート・タイプを採用していますし、ひとつのハウジングに、プラグを2コつけたのも、東洋工業がはじめてです。もちろん、2ローターということも、最大のちがいです。


 渡 辺 私の見方はちょっとちがいますが、開発のプロセスというものが東洋工業とNSUとは大分ちがっていたということを強調したいです。東洋工業の方は、いろいろな問題の研究を基礎的なところから積みあげていく、これは大変なようで、結局は、解決を早めたといえると思います。


 山本(健) うちでも最初はシングルローターを相当研究しましたが、途中から、自動車のエンジンとしてはやはり2ローターの方が運転しやすいものになるだろうということで、努力を2ローターの開発にしぼったのです。ですから、シングルローターのNSUの技術をそのまま、もち込むわけにはいかない……。そこらで、大分ちがってきています。


 平 尾 基礎的なところから積み上げるというのは大切なことですね。天才的な人が思いつきで、アイデアを生み出しても、そのあとの研究に、その気持ちがなければ実現は難しいことです。

「チャター・マーク」の解決

 近 藤 チャター・マークというのは、どのくらいの波長で現れるもので、その原因は一体、何だったのですか。


 山本(健) チャター・マークは、エンジンの運転条件でいろいろと変わるものですが、私たちの実験では、大体17000cpsくらいの振動現象のようなものが起きてくるので、これが原因となる一種の摩擦振動であり、このために摺動面とシールの間の摩擦の特性、それからシール自体の振動の特性などいろいろのものが、からんでいます。


 隈 部 トロコイドの内面はめっきしてあるのでしょうが、このチャター・マークでめっきがとれてしまうことがあるのですか。


 山本(健) これが進行すると、結局はめっきがはげてしまいます。これではエンジンも回らなくなりますし、破壊ということになってしまいます。


 隈 部 どのぐらいで起きるのですか。


 山本(健) これも運転条件によってちがいますが、最も起きやすいのは、高速回転で、スロットルを全開にしてやりますと最初の頃は100 時間ぐらいでその兆候がでました。それで、シールをいろいろと研究しまして、これに小さい孔をあけて(これをクロス・フロー式と呼びましたが)みたところ、大体、3倍ないし、5倍寿命がのびました。最終的にはシールに、金属を使わず、カーボン・シールというものを考えました。これですと、チャター・マークは全然発生しません。


 亘 理 さっきの17000cpsというのは何の振動数ですか。


 山本(健) これは、アペックス・シールの曲げの振動数です。


 隈 部 プラグの汚れの問題も、重大と思いますが、これは、どう解決されたのですか。


 山本(健) 最初はプラグを1本でやっていたのですが、低速回転時の始動が、なかなか難しかった。ちょっと、チョークを引きまちがえたりすると、プラグが濡れてしまって、始動がうまくいかない。もちろん、プラグの性質、プラグ付近の孔の形状をいろいろと変えたのですが、一番問題となるのはプラグの位置だということがわかりました。現在のエンジンはプラグを2コ使っていますが、一方は濡れに非常に強いという意味でつけています。もう一方は性能に対して、よろしい、というわけで、このふたつがあいまって、自動車エンジンとしての性能をカバーしています。

心配ないプラグや潤滑関係

 樋 口 今では一度始動しそこなったら、もうかからないということはありませんか。


 山本(健) ございません。


 隈 部 プラグの寿命はどのくらいですか。


 山本(健) ロード・テストをやってみまして、大体10000㎞から12000㎞くらいです。


 隈 部 今の時候なら問題はないと思いますが、冬の寒い時などのかかり具合はどうですか。


 山本(健) 寒い時には生ガス燃料が多く入りやすいのですが、そんな時にも濡れないようにしていますから、問題はありません。


 高 田 昭和39年に北海道で行われた寒冷地テストでは、2本のプラグの下側の威力をためすために、わざわざ、プラグを油で濡らしてから取りつけてみましたがまったく大丈夫でした。結局、混合比さえ正常なら、濡れたものでも、すぐ乾いて、正常に点火しました。混合比がくずれたらレシプロエンジンでもかかりません……。


 平 尾 もうひとつ私たちが心配していることは、潤滑なんですが、その点はどうですか。


 山本(健) ロータリーエンジンの潤滑はローターとトロコイド内面、もうひとつはサイド・シールの潤滑のふたつについて考えられます。ローターの方は、シール自体が非常に振動するので、油膜が破れることも当然に考えられるわけで、この点からもカーボン・シールは成功だったと思います。カーボンは自体が潤滑作用をもっています。しかし、ガス・シールという面からみると潤滑油も必要です。


 そこで、トロコイド面の潤滑の考え方は、そういう耐摩材、減摩剤という意味ではなくて、ガス・シール剤としての潤滑が必要という考えでやっています。これにはいろいろな方法がありますが、吸入ガスの中にオイルをコントロールして混ぜてやるという考え方でやっています。


 それから、サイド・シールの方は、ローターの中を冷却する潤滑油が、ローターを冷却すると、ローターから飛散し、下部に落ちるわけですが、その過程において、サイド・ハウジングの上に吹き出るわけです。そしてサイド・シールの内側にオイル・シールがあって、これによって、散らされた油がコントロールされます。これで十分に実用範囲の潤滑は可能だと思っています。

研究を重ねたギヤの取り付けなど

 宮 本 燃料はどんなものですか。


 山本(健) 普通のレギュラーガソリンでいいのです。


 平 尾 もうひとつ気になるのは中央のギヤですが、あのギヤは、技術的には問題はないのですか。


 山本(健) 実は、これも苦労した点のひとつなのです。最初の頃は、このギヤがよく壊れました。ある特定の回転数で壊れるわけです。スロットル全開の時というわけでなく、回転数に関係があるのです。これも、基礎からということで、歯車荷重の解析から始めました。そして、これには、燃焼圧力というものがエキサイティング・フォースのひとつとして働いていることがつかめました。それで、燃焼室の形状とか、プラグの位置、ローターの慣性モーメント、ギヤの取り付け法などをいろいろと変えて、現在では、ギヤの破損ということはまったくなくなっています。


 平 尾 一種のローターのねじれ振動みたいなものがでてくるわけですね。


 樋 口 NSUのに比べてオイル量が大変少ないようですね。NSUはシングル・ローターで4リッター以上のオイルを必要としているのですが、コスモの方は少ないですね。


 山本(健) NSUのことはよく知りませんが、コスモのものも最初の頃は、ずい分オイル消費が多くて、排気管から白煙がモウモウという状態だったのですが、その後オイル・シールの開発の結果、実用的な線にまでもってくることができました。


 それから、オイルが、冷却剤としても使われているので、オイルの汚染ということを心配しました。ガス・シールによるブローバイによって、オイルが汚れはしないかという研究もやりました。しかし、私たちのエンジンは、ブローバイ・ガスについては非常に条件が良い。つまり、サイド・ポート・タイプの吸入口は、サイド・シールとオイル・シールとの間に必ず位置するチャンスがある。それで、サイド・シールからの濡れたガスをリサーキュレートさせることができるので、オイルの汚染は、非常に少なくなっているのだと思います。


 樋 口 オイルは、説明書を読むと指定のオイルを使用のこととなっていますが、何か特殊のものですか。


 渡 辺 いえ、この指定というのは、純正のものを使ってもらいたいという意味で、もちろん普通のものでよいのです。

定地燃費はリッター当り14.3㎞

 平 尾 オイルの消費率はどのくらいですか。


 山本(健) 高速で使っている場合に、リッター当り、2000㎞、中・高速・低速をまぜて走れば大体3000㎞くらいです。


 平 尾 まあ、普通の量ですね。燃費の方はどうですか。


 山本(健) 定地燃費で50㎞/hのときがリッター当り14.3㎞。運行燃費は、平均時速53㎞/hで、リッター当り13.5㎞です。


 近 藤 g/ps/hだとどのくらいになりますか。


 山本(健) 全開で235g/ps/hです。


 平 尾 110psのエンジンがついていると思えば、リッター当り14.3㎞という値はいいところでしょうね。110psというと、セダン・タイプの2000㏄クラスですからね。


 樋 口 ガソリンエンジンの一種というように考えると燃焼室の形状は、できるだけ、球形に近い方が良いということになっていますね。ところがバンケルの燃焼室は薄ぺったい形状、これではノッキングが心配になりますがそのへんはいかがでしょう。


 山本(健) たしかに、フレームの伝播時間からいうと球形が最高で、このバンケルの形状ではノッキングが起こりそうに考えられがちです。しかし、バンケルの特徴として、コンプレッション・タービュレンスが回転方向に非常に激しい。このことが、燃焼の伝播の時間というものを短縮して、ノッキングに対する強さをもっているようです。

パワーに比較してコンパクトな車体

 本 誌 バンケルエンジンの話が大分長くなりましたが、話をコスモ・スポーツにもどして、コスモの開発にいたる経過などをお話し願います。


 皆 川 コスモは、基本的な考え方として、ロータリーエンジンの特性を生かすことを目標としています。特徴はいくつもありますが、第一にパワーに比較してコンパクトであることと、高速性能が非常に良いことがあげられます。もちろん、低速性能を重視することも乗用車としては当然の配慮です。振動とか、騒音とか、耐久性などももちろん、レシプロエンジンに負けないということで、当初から、スポーツ・クーペをねらいました。それも最初は、純然たるスポーツカーということで高速の長距離ツーリングを重点に考えていましたが、やはり、現実の問題として、低速走行でも十分の性能をもたせる要求が出ました。宣伝にもうたってありますがトップで25㎞/hから加速可能というわけで、実際にはトップで市街地の走行も不可能ではないという実用的な車に成長していきました。


 車のスタイルですが、これは「ロータリーエンジンは新しい技術だから、車自体もできるだけ新しいものとし、従来の観念を打ち破るようなスタイルがほしい」というわけで、社内の若いデザイナーたちの自由発想を生かしたまったく日本的なものです。


 現在、コスモ・シリーズの第2弾として、次のセダン・タイプの車も計画しています。こちらは比較的需要度の高いものですが、やはりロータリーエンジンにふさわしい、ボディ・スタイルを、ということを念頭において考えています。


 渡 辺 具体的にいうと、ロータリーエンジンの開発と歩調を合わせて、このコスモの性格も徐々に変わってきたということです。はじめは、単なるスポーティーカーということで変速機も5段だったし、ステアリングもシャープ、スプリングも硬めにして、サーキットを走行するような車だったのです。ところが、段々開発されて、非常にフラットな高性能が出てくるに従って、この車の性格をツーリングカー的にもっていこうということになったのです。


 例えば、変速機も4段に直す、ステアリング剛性も下げる、クッションもセダンに近くするといった具合です。

ロータリーエンジンの特徴の数々

 平 尾 ロータリーエンジンにはレシプロエンジンが真似のできないところがいくつかある。例えば、外形がコンパクトなこと、これでボンネット・ラインをぐっと低くすることができる。これは110psのレシプロエンジンの大きさとは比較になりません。そうするとレシプロエンジンでは、このようなスタイルの真似はどうしてもできない。もうひとつは、4サイクル・エンジンで一番いやなバルブ機構が全然ない。この点をフルに生かすと、これが非常にワイド・レンジの回転数となると思うのです。今は7000rpmにおさえているようですが、これは非常に慎重な行き方だと思うのです。これを2倍くらいまで上げれば、ローで100㎞/hくらいになります。これもレシプロでは真似のできないところです。この時トルクはずっと落ちるでしょうが、それもかまわない。ローで引っ張れるということはSS¹⁄₄マイルをぐっと短縮することができるわけで、きわめて有利と思います。


 そうすれば、変速機は3段どころか、2段でも……(笑)十分ということになります。


 山本(健) ロータリーエンジンの特徴を生かしたボディ・スタイル、ワイド・レンジの回転数、このふたつはたしかに、今後とも、重要なポイントになると思います。ご指摘の7000rpmというのはロータリーエンジンとして、少し低いのではないかということですが、いかにもその通りですが、最初に出す車として慎重の上にも慎重にというほど、耐久性に神経を使っているのです。今後は、本当のロータリーの良さを出すために、回転数を上げていく方向になるでしょう。もちろん、現在の低速の性能はそのまま維持させてです。


 渡 辺 ボンネット・ラインを低くするということはコスモでは、かなり効果的に実現しています。車高としてあのくらいの高さの車がないことはないですが、レシプロエンジンだと、ボンネットが高いためにフロント・ガラスが、かなり低くなって視界の悪い車になります。


 山本(峰) 今の問題に関連するのですが、ボンネットを開けるとエンジンが非常に小さいのですが、その他の補機類は従来のものと同じサイズなので、エンジンルームの中に大きく頑張っている。あれは残念ですね。


 山本(健) おっしゃる通りです。今後やはりアクセサリーも含めて、コンパクト化の研究は必要だと思います。


 平 尾 ロータリー・アクセサリーが必要ですね。

リヤ・サスペンションはド・ディオン式

 宮 本 保証期間が2年間、50000㎞というのは立派ですね。ローバーや、クライスラーでやっていたガスタービンカーは消えてしまったようですが、ロータリーとガスタービンとは、得失はどうでしょうか。


 山本(健) ガスタービンにも良いところがありますが、応用面で、ちがっているのだと思います。私の考えでは、現在開発されているガスタービンは、大型に向くのではないでしょうか。中型とか小型にはロータリーとか、レシプロエンジンが向くと莫然と考えています。


 亘 理 リヤ・サスペンションにド・ディオン式を使ったのはどういう理由ですか。


 渡 辺 これは、車高を低くして、重心を下げなければならないし、しかも中央のトンネルは、そんなに高くできないということになると、やはりコンベンショナルのサスペンションより、ド・ディオンということになるのではないでしょうか。


 亘 理 ド・ディオン式で、問題は起こりませんでしたか。


 渡 辺 やはり、最初は音で苦労しました。しかし、これも、大体解決がついています。一番の問題はいろいろな衝撃音が、ド・ディオンのマウントのあたりから入ってくるので、このマウントのしかたを変えたり、場所を変えたりして消しました。それから、スプライン・シャフトの音はよく問題になりますが、これはボール・スプラインで解決しました。あのクラスの車としてはいいところまできていると思います。


 樋 口 私は、今日の試乗で、三次の悪路コースも走らせてもらったのですが、車の性格がツーリング的になったのだとすると、もう少し郊外のラフな道路やヒルクライム、クロス・カントリーなどもやりたくなりますね。


 渡 辺 最低地上高はド・ディオン・チューブのところで140~145㎜くらいですから、米車などに比べるとずっと高いです。

スポーツカーとしては静かな音

0→400mスタートの瞬間。16.3 秒(2人乗り)というすばらしさだった。

 本 誌 それでは、騒音テストの結果について、亘理先生からお願いします。


 亘 理 まずデータを読み上げます。車内騒音は、Aスケールで測定して40㎞/hが62ホーン、60㎞/hが68ホーン、80㎞/hが73ホーン、100㎞/hが74ホーン、120㎞/hが77 ホーン、130㎞/hが78ホーンとなっています。テストコースの状況が、これまでの村山とはちがうので、他のモーターファン・テストのデータと、直接的な比較はできませんが、大体において、乗用車として考えれば特に静かでもないし、また、スポーツカーとしてみるとやや静かな方という感じになると思います。実際に乗った感じでは、割合に静かな車だという印象を受けました。


 ただ、トップで25㎞/hくらいまで下げたらガサガサという音がしました。


 渡 辺 それでもワインドアップ振動としては、低い方だと思いますが……。音の点は、この次のセダンに載せる場合には、排気音をもっと消すつもりです。


 亘 理 車外音の方は、比較データがないので何ともいえないが、少しは高い方じゃないかな。


 荒 木 よそのスポーツカーに比べれば低い方です。


 本 誌 振動数の方はいかがでしょう。


 亘 理 これはフロントが1.8cps、リヤが1.85cps、毎分にして、100 回くらい。バネ下振動数が大体12cps、これはやや硬めですが、スポーツカーなので、当然の値だと思います。実際には、この数字からみる以上にソフトな感じがあります。


 本 誌 つぎに、今日、三次のテストコースで実施した動力性能のテスト結果について、発表してください。


 小 口 0発進は1人乗りと2人乗りをやりましたが、1人乗りの場合は、50mに4.2秒、100mに6.5秒、200mに10.1 秒、0→400mは15.9秒となりました。今回は1000mまで実施できましたが、0→1000mは29.8秒でした。つぎに2人乗車の場合では、50mに4.3秒、100mに6.8秒、200mに10.3秒、0→400mが16.3秒。この数値は、ちょうどカタログと同じです。


 これを、車速と時間の関係でみますと、1人乗車の場合、60㎞/hに3.2秒、100㎞/hに8.1秒、140㎞/hに16.7秒、それから2人乗車ですと、60㎞/hに3.5秒、100 ㎞/hに8.8秒、140㎞/hに18.0秒となっています。


 つぎに追い越し加速ですが、トップの40㎞/hからの加速は、60㎞/hに6.8秒、100㎞/hに19.8秒。また、3速30㎞/hからでは、60㎞/hに6.2秒、100㎞/hに14.2秒、140㎞/hに23.8秒、という数字となっています。


 今日のテスト条件は、小雨が時折降るという、決して良い条件ではありませんでした。スタート時にスリップしまして0.3秒ほどロスしたようです。

素晴らしい高速性能

カタログ値では最高速185㎞/hだが、これはかなり余裕を見込んだもの。実際には200㎞/h以上の最高速を出す。

 本 誌 0→400mが15.9秒というと、今までどんな車がありましたか。


 小 口 この車種では、こんなに速い車はまだありません。同乗した時の印象ですが、スタート時のGが非常に大きく、強く感じられました。加速の良さはロータリーのひとつの特色といってよいでしょう。


 本 誌 それから、今回は最高のテストコースでしたので、最高速のテストが実施できましたね。


 小 口 最高速といっても、瞬間最高速でなくて、三次のテストコース(1周4.3㎞)を4周して、そのラップタイムから、1周の平均時速を算出したわけですが、平均200㎞/hを少し上回る好記録が出ました。


 山本(峰) ちょっとお聞きしたいのですが、この車のカタログの最高速は185㎞/hなのですが、私の試乗の時にも、何回も針が200㎞/hのところまでいくのです。カタログ値は、そんなに余裕がとってあるのですか。


 皆 川 この最高速度の意味は、瞬間最高ではなくて保証最高速度といった意味です。ファミリアの場合には保証回転数というところからみて115㎞/hで地球を1回か2回は回れるといったものですが、このコスモも同じように、実際には185㎞ /h以上で、瞬間的には200㎞/hは十分に出せます。ただ、エンジンのメンテナンス寿命という点を考えると、185㎞/hで回転数は約7000rpm、ここらが、十分責任のもてる保証速度というところです。


 一方では、タイヤの問題もあって、現在のロー・プロファイル・タイヤで連続200㎞/hを出されると、あるいは危険があるかもしれないという意味で、一応185㎞/hと発表したものです。


 平 尾 タイヤの問題がひっかかるなら、それを明示した方がいいですね。このタイヤなら185㎞/hにおさえて下さいとか、それ以上の場合にはラジアルタイヤをつけるとか……。日本では、200㎞/hで連続して走る道路はまだありませんが、ヨーロッパへ行くとラジアルが必要ですね。


 渡 辺 現在ついているのはロー・プロファイルのH型ですが、これで200㎞/hが保証できないことはありません。ただ、絶対大丈夫かということになるとラジアルタイヤになるでしょう。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 マツダ・コスモスポー真実 名車再考 マツダ・コスモ・スポーツ chapter2 再録MotorFan Road Test(1967年8月号)