光ファイバーによるセンシングは、細径で軽量、施工しやすいなど広範囲の測定に多くの活用メリットがあり期待が寄せられているが、既存商品で採用されている技術では微弱な光を測定する必要があるため測定結果を得るために時間がかかり、たとえば製造ラインでの温度分布のようにリアルタイム性が要求される測定には対応できなかった。また、光部品も非常に高価になるため、歪み分布を測定する構造物の監視ソリューションなどの実用化を困難にしていた。
「WX-1033」は、OKIが通信市場で長年取り組んできた高速光通信技術を活かした独自の技術「SDH-BOTDR(注1)方式」(特許取得済)を採用することで、従来のBOTDR方式では数十分かかっていた測定を1秒に短縮し、かつ低価格での提供を可能とした。これにより、光ファイバーをセンシングデバイスとして活用するメリットを損なわずに、広い測定範囲における温度・歪みのリアルタイムセンシングを実用化できる。
注1:SDH-BOTDR
BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry:ブリルアン光時間領域反射測定法)は、光ファイバーに光パルスを入射したときに発生する後方散乱光の1つである「ブリルアン散乱光」の周波数が温度や歪みに比例して変化するという特性を利用した従来の光ファイバーセンシング手法。
SDH-BOTDR(Self Delayed Heterodyne -BOTDR:自己遅延ヘテロダインBOTDR)は、OKI独自の新技術(特許取得済)により、「ブリルアン散乱光」の周波数の変化を電気信号の位相シフトに変換して捉えることで大幅に測定時間を短縮した新たな光ファイバーセンシング手法。
また、内蔵した測定ソフトウェアにより、現場での時間や距離において温度・歪み変化の可視化や、センサーの測定範囲および、測定結果に応じた警報監視範囲の設定変更が可能。これらにより顧客のインフラ整備や機器の最適な維持管理、測定にかかる時間を短縮し業務効率化に貢献する。さらに、Modbus(注2)やMQTT(注3)などのIoT通信プロトコルにも対応しているため、IoT GW、エッジサーバーまたはクラウドシステムと組み合わせて、遠隔での常時リアルタイム監視IoTシステムも構築が可能だ。
注2:Modbus
プログラマブルロジックコントローラ(PLC)向けに策定されたシリアル通信プロトコル。デファクト標準のプロトコルで産業用電子機器を接続する最も一般的な手段。
注3:MQTT(Message Queueing Telemetry Transport)
TCP/IP上で動作するPublish/Subscribe型のシンプルな非同期、双方向プロトコル。軽量さ、柔軟性の点でIoTに最適なネットワーク・プロトコルの一つ。
【光ファイバーをセンシングデバイスとして活用するメリット】
・細径で軽量なため、施工しやすい
・電気部品を含まないため故障率が低く、メンテナンスフリーで長期間使用可能
・電源供給が不要で、落雷や電磁誘導の影響を受けずに測定可能
・防爆対策が必要な環境でも利用可能
・高温・低温などの厳しい環境にも設置可能
OKIは、「WX-1033」を通じて構想物監視、製造、防災などの社会問題の解決に積極的に貢献していく。
【販売計画】
販売価格:WX-1033A 9,900,000円(税別)
WX-1033B 15,000,000円(税別)
提供開始時期:2018年9月28日
販売計画:2020年までに20億円
・構造物監視
橋梁やワイヤーロープなどの長距離インフラ構造物の常時監視
・製造
大型製造装置の内部温度分布測定による品質管理や製品のトレーサビリティ管理
工場内の温度分布測定を空調管理に活用することによる省エネ
・防災
大型プラントや倉庫の火災・異常温度の位置検知による防火対策
ベルトコンベア・ケーブルトンネルの火災・異常温度の位置検知による防火対策