フェルッチオ・ランボルギーニ生誕100周年を記念して用意されたチェンテナリオに続いて、そのオープン仕様のロードスターが上陸を果たした。しかも限定20台のうちの生産1号車。威圧するような存在感を放つものの、細部に渡り美しくも機能的なフィニッシュが見て取れる。




TEXT◎野口 優(Masaru Noguchi)


PHOTO &MOVIE◎小林邦寿(Kunihisa Kobayashi)


SPECIAL THANKS◎ランボルギーニ福岡(LAMBORGHINI FUKUOKA)

【動画】ランボルギーニ チェンテナリオ ロードスター

全身に匠の技が際立つ唯一無二の存在!

 激化するスーパースポーツカー界において、いま着実に成功しているブランドといえばランボルギーニにほかならない。その理由は、生真面目なまでの車両製作のみならず、巧みなブランディングによるものと言っていいだろう。アヴェンタドールSやウラカンシリーズといった従来モデルのほか、先頃はスーパーSUVのウルスまでラインナップに加えた。しかし、こうしたモデルだけでは今やブランドのステイタス性を高めることは厳しいのも事実。そうした背景からランボルギーニは、よりエクスクルーシブ性を高めるために不定期ながらも限定車を用意、その最新モデルこそこの「チェンテナリオ・ロードスター」である。

 正式に初披露されたのは、2016年8月19日、カリフォルニアで開催されたモントレー・カー・ウィークのイベント、モータースポーツ・ギャザリング。クーペのチェンテナリオの発表からわずか半年で、そのロードスター版をリリースしたことになるが、その背景にはクーペが発表を待たずして完売してしまったこともひとつの理由。もっとも限定20台という極小数に抑えられているのもその要因だが、ロードスターにおいてもその数を同様に設定していることを考えれば、ランボルギーニが狙う“スーパーエクスクルーシブクラス”は、マーケティング的に見ても確実な線をとっていると言える。

 だが、この20台限定というのは、中身を知れば納得できるだけの説得力があるのも確か。創始者であるフェルッチオ・ランボルギーニの生誕100週年記念モデルということもあり、その価値はさらに高まる。




 ベースになっているのは、フラッグシップのアヴェンタドールS。カーボン製モノコックを基本としながらも独自のエクステリアデザインが与えられ、しかもボディパネルのすべてにカーボンを使用する。前後に設けられた巨大なデュフューザーまでカーボンで造られているから軽量化へのアプローチも抜かりない。その結果、乾燥重量は1570kgを実現。これはアヴェンタドールSロードスターと比較すると55kgも軽量されていることになる。

 もちろん、こうした徹底した策は、これだけにとどまらない。その代表的な例こそ、リヤウイングだろう。最高速度350km/h以上を誇るパフォーマンスを、より安定させるためにリヤウイングは可倒式。走行状況に応じて150mmまで伸縮し、その角度も最大15度まで可倒する。そのうえ、オープンモデルにとってネガティブな部分でもあるキャビンへの乱流を防ぐためにヘッドレスト背部には通気口を設け、ボンネット後端からの流れをスムーズに促すようデザインしている。しかもこうすることによってリヤウイングの負荷が増加し、ダウンフォース量も向上したというから見事である。

 無論、スペシャルモデルゆえに、ミッドに搭載されるV型12気筒自然吸気ユニットもアヴェンタドールSをベースとしているとはいえ、パワーは30ps引き上げられ770psを出力する。リヤフェンダー下部に設けられたエンブレムにはそれを象徴するように“LP770-4”と刻まれ、その巨大なエアダクトとともに強烈なインパクトを与える。また、パワーアップに伴いブレーキ冷却も重要視されるのは言うまでもないが、それに対応するためにホイールにはカーボン製のスポークを追加し、セラミックディスクブレーキからの熱風を逃がすようホイールのスポーク部にフィンを設けているのも特徴だ。

 一方、インテリアは、ランボルギーニのカスタムプログラム“アド・ペルソナム”により、オーナーの好みに応じて配色や仕上げを選択できるが、特に印象的なのはチェンテナリオの場合、高解像度10.1インチのタッチスクリーンを与えられていることだろう。縦長となるこのスクリーンパネルは視認性の良さは当然としても操作性に関して高い機能性をもつだけに、他のランボルギーニ車にも採用を願いたいほどだ。

 それにしても実車のインパクトは強烈だった。しかも今回撮影に協力していただいたランボルギーニ福岡に展示されていたこの個体は、20台の限定生産のうち最初の1号車である。オーナーは、納車された際にはツーリングなども含めて“普通に使う”と言っているようだから、遭遇した際には、その存在に幸運を感じるとともに圧倒されてしまうはず。まるでバットマンカーのようなアピアランスだから近づきたくもなるが、しかし、避けたほうが無難だ。何故なら巨大なデュフューザーの脇から大量の飛び石が襲ってくることは間違いない。ちなみに、メタルルーフも装備されなければ簡易型のソフトトップなどの用意もない。完全にオープンモデルとして割り切っている潔さも魅力のひとつだろう。









【SPECIFICATIONS】


ランボルギーニ・チェンテナリオ・ロードスター


■ボディサイズ:全長4924×全幅2061×全高1158㎜ ホイールベース:2700㎜ ■乾燥重量:1570㎏ ■エンジン:V型12気筒DOHC48バルブ 総排気量:6498cc ボア×ストローク:95×76.4㎜ 圧縮比:11.8 最高出力:566kW(770ps)/8500rpm 最大トルク:690Nm(70.4㎏m)/5500rpm ■トランスミッション:8速SCT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン(プッシュロッド式) ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク ディスク径:前400☓38 後380☓38㎜(カーボンセラミック) ■タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J) ■パフォーマンス 最高速度:350km/h 0→100km/h加速:2.9秒
Lamborghini Centenario Roadster

GENROQ 2018年8月号より転載
情報提供元: MotorFan
記事名:「 究極の猛牛「ランボルギーニ チェンテナリオ ロードスター」の生産1号車は日本にあった!【動画レポート付き】