REPORT◎塩見 智(SHIOMI Satoshi)
PHOTO◎Audi AG
新型アウディA6の試乗会はポルトガル第2の都市、ポルトで開催された。港町として知られるが、今回は空港から内陸のドウロというワインで有名な川沿いの街を目指すルートだ。ポルトガルは風光明媚で、温暖な国。そして走らせて楽しい道路が多い。山道はツイスティかつアップダウンが多く、クルマの素性を把握するのに適している。高速道路の交通量が少ないのも重要だ。
新型A6の外観は全体的にクリーンで細部がシャープな印象だ。ボディサイズは現行モデルとほぼ変わらない。ロングホイールベース、ショートオーバーハングで、ルーフに沿って美しいアーチを描く6ライトのサイドウインドウが車内の広さを想起させる。そして実際に広い。
日本仕様の55TFSI(3.0ℓ V6ターボ)を選んで、エアサスと標準サス、またタイヤサイズの異なる数台をテストした。先代モデルにも搭載されたこのエンジンは、特別官能的ではないが、実直によく仕事をこなす。新型A6は最高出力がわずかに増し、最大トルクは60Nm向上したが、先代との違いがはっきりわかるほどではない。ただしBAS(ベルト駆動式のオルタネータースターター)が組み込まれ、マイルドハイブリッド化された部分においては、新しさを体感することができた。
55〜160km/hでコースティング機能(ドライブモードでエフィシェンシーを選んだ場合、アクセルオフでニュートラルとなるのではなくエンジンが停止する)を使えるほか、いわゆるアイドリングストップはワゴンRもびっくりの22km/h以下となるとエンジンが停止するタイプだ。
こうなると走行中でも頻繁にエンジンが停止することになる。逆に言えば頻繁にエンジンが再始動することになるのだが、再始動の際、BASがその時の速度に合った回転数までエンジンを一瞬でスムーズに回すため、振動がほぼゼロ。滑らかに再加速できる。この辺りはいかにも電動車だなという印象。アウディは「2025年までに80万台の電動車の販売を目指す」と宣言しているが、それには今回のA6も含まれる。
ADASの発達もある。近年、高速走行時のドライバーの負荷がどんどん減ってきた。その先にある自動運転の実現にはまだ時間を要するにせよ、今後、高速走行中のドライバーの負荷はさらに減る。そうなるとブラインド操作が必須とも言えなくなってくる。
いずれにせよ、上下2段の大型タッチスクリーンはステアリング奥のバーチャルコクピットと合わせて運転席に未来感を漂わせる。これはUX面のみならず、インテリアデザインの面でも新世代アウディの特徴となるはずだ。日本への導入は2018年内を予定している。
※本記事は『GENROQ』2018年7月号より転載したものです。
SPECIFICATIONS
アウディA6セダン55TFSIクワトロSトロニック
■ボディサイズ:全長4939×全幅1886×全高1457㎜ ホイールベース:2924㎜ トレッド:F1630 R1617mm ■車両重量:1760㎏ ■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 総排気量:2995cc 最高出力:250kW(340ps)/5000〜6400rpm 最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1370〜4500rpm ■トランスミッション:7速DCT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:F5リンクR5リンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:F&R225/55R18 ■パフォーマンス 最高速度:250km/h(リミッター介入) 0→100km/h加速:5.1秒 ■環境性能(EU複合モード) CO2排出量:151g/km 燃料消費率:6.7L/100km