2017年の東京モーターショーに続き、2018年のモーターサイクルショーでも展示され、市販化されることはまず間違いないとみられていたスズキの125ccスクーター、スウィッシュ。その発売日が6月26日と発表された。「上質なスタンダードスクーター」として開発されたこの新型モデルには、専用設定の駆動系や10インチホイールといった、ならではの特徴が満載であった。




PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

スズキ・SWISH……318,600円(6月26日発売)

スズキ・SWISH LIMITED……340,200円(9月21日発売)





 東京モーターショーで展示されていたスウィシュに対する私の第一印象は、「既存のスズキの125ccクラスのスクーターよりもデザインにこだわっている」であった。


アドレスV125よりも大柄でヤマハ シグナスXに匹敵する車格ながら、足元には12インチではなく小径の10インチホイールが組み込まれている。


 ちょっとアンバランスなような気もするが……。




 5月某日、そのスウィッシュに関するメディア向けの事前発表会が行われ、その疑問に対する答えは明らかとなった。

あえて選択した10インチホイール

スウィッシュの開発陣営。左からエンジン担当の福田善夫さん、開発コンセプト・デザイン担当の守谷安則さん、車体・操安担当の成田洋さん。

 今回のスウィッシュはスズキの従来の125ccの路線とは一線を画し、「上質なスタンダードスクーター」として開発。「軽快に」、「スタイリッシュに」、「便利に」を体現した最新モデルとしており、10インチサイズのホイールはその「軽快に」に欠かせない選択だったのだ。




 アドレス110の14インチは荒れた路面での走破性が高く、アドレス125の12インチ(フロント)は、ゆったりとした乗り味で定評がある。その一方で10インチを採用するアドレスV125/は小回りが利く、気軽に走れると好評だった。


 そこでスウィッシュが選択したのが10インチの足まわりだった。ただし、装着するタイヤには100/90-10(前後)というワイドサイズ(アドレスV125は前90/90-10/後100/90-10)を選択。設置面積を広くとり、ハイト(タイヤ直径)も稼いだことで従来以上の安定感を確保している。マキシス製M6029というタイヤの銘柄も、性能にこだわったチョイスとなっている。




 これに加えて、フロントフォークは、φ33のインナーチューブ(アドレス110はφ26、アドレス125/ V125はφ30)を採用。剛性を高めるとともにオイル量を増やすというメリットも同時に得ている。


アドレスV125で1本式だったリヤショックは2本式に変更。複筒式構造のショックを用いることで、伸び側、厚側ともにしっかりと減衰が効き、しっとりとした乗り心地としている。

タイヤは高性能なスクーターに使用されることの多いマキシス製(M6029)。独自のトレッドパターンはハンドリングの向上と優れたグリップ力を備える。

パワーユニットにもこだわりアリ

バルブのレイアウトを狭角とし、燃焼室をコンパクトに設計。これによって高い圧縮比と優れた吸入効率を両立している。

 スウィッシュに搭載されるエンジンは、定評のあるSEP(スズキエコパフォーマンス)。基本的にはアドレス125と同じものが搭載されている。このエンジンの大きな特徴が、フリクションロスを低減し、リニアなスロットルレスポンスを追求しているという点。


 例えばシリンダーヘッド側は、タンブル流を作るために吸気ポートと排気ポートをバナナポート(曲線状)とする、燃焼室形を最適化するといった施工を行い、燃焼性能を高めている。これに加えて吸気バルブのステムをウエスト化と傘部分に二段面取りを行い、混合気の流れも最適化する。


 シリンダーはスリーブのホーニングを最適化し、ピストンのスカート部にレジンコート処理を行い摺動抵抗の低減を徹底。ピストンスカートは極限まで薄く、ピストンピンも小さくして、軽量化も図られている。




 駆動系の仕様がスウィッシュならではの設定で、アドレス125では1個あたり18gだったウエイトローラーを15gに変更。軽量化したことで、従来よりもよりパワフルな高回転域で変速するようになり、加速力がより高められた。




 同社が行なったスウィッシュ、アドレス125、アドレスV125の3車による加速力の比較テストでは、15mまでは3車ともほぼ同等の出足。しかし、20mあたりからスウィッシュが他を引き離すという結果を得ている。

ワンステージ上の装備が多数

 実用性の高さが求められる125ccスクーターのカテゴリーにおいて、今回のスウィッシュは「便利」を徹底的に追求している。


その一つが、28ℓに容量を拡大した収納スペースである。アドレスV125ではシート下後方に設けられていた燃料タンクをフロアボード下に移設。これまでフルフェイスヘルメット1個がギリギリ収まる程度の収納スペースが、レインウエアといった+αの荷物も収まるようになった。




 またキーシリンダー横に配置された電源ソケットは、今まで防水性の面から採用を見送られてきたUSBソケットをスズキ製バイクとして初めて装備(Vストロームなども電源はDCタイプである)。


 灯火類にもこだわりの装備が満載で、ヘッドライト、テールランプ、ポジションランプにはLEDを採用。さらに左手側のスイッチにはパッシング、右手側のスイッチにはハザードランプを装備し、細かな部分の利便性にも配慮されている。

ヘッドライトのハイ/ロースイッチには、パッシング機能も加えられている。
125ccクラスのスクーターには珍しいハザードランプのスイッチも標準で装備。その下のスタートボタンは、ワンプッシュでエンジン始動可能な「スズキージースタートシステム」を採用する。


冬向け装備のSWISH LIMITEDもスタンバイ

 9月21日にはこのスウィッシュをベースに、走行風から手元を守るナックルバイザーと、電熱効果で指先を温めるグリップヒーター、臀部を温めるシートヒーター(温度調節はサーモスタッドが行う)を標準装備するスウィッシュリミテッドも発売が開始する。


「真冬もガシガシバイクで移動する」という方には、このポカポカ仕様が救世主となってくれることだろう。



ディテール解説

ヘッドライトとポジションランプにはLEDを採用。ヘッドライトを両サイドからダクトで挟み、GSX -Rシリーズのイメージを演出している。

キーシリンダー右にUSBポート(定格5V1A)を装備する。

500㎖のペットボトルが2本収まるフロントインナーラックと、カバンホルダーの積載重量はそれぞれ1.5kgまでと十分。

シート下トランクの容量は28ℓとかなり広め。後端側の底面に隆起がある。

ヒンジ部分左右にヘルメットホルダーを1つずつ装備する。

スウィッシュは台湾でも先行発売されており、台湾仕様車はリヤスポイラーを採用。一方の日本仕様車は写真のとおりリヤキャリアを装備し、積載量は6kgまでとなっている。

フル液晶ディスプレイにはスピードメーター、タコメーター、オドメーター、トリップメーター、燃料計、時計を装備。

上下のチューブ状のLEDがテールランプ。その中央部分の粒状のLEDがブレーキランプとなる。

170cmで足着きチェック

770mmという一般的なシート高だが、170cmのライダーがまたがるとかかとが浮いた状態に。

かかとが浮くのはシート両サイドがぷっくりと幅を持っているためと思われる。ただし、ふくらはぎ部分のフロアボードがシェイプされているので、さっとましたに足を下ろせるのは高ポイント。

■主要諸元■

型式 2BJ-DV12B


全長 / 全幅 / 全高 1,830 mm / 690 mm / 1,095 mm


軸間距離 / 最低地上高 1,250 mm / 120 mm


シート高 760 mm


装備重量 114 kg


燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 51.0 km/ℓ (60km/h) 2名乗車時


WMTCモード値 50.1 km/ℓ (クラス1) 1名乗車時


最小回転半径 2.0 m


エンジン型式 / 弁方式 AF11・強制空冷・4サイクル・単気筒 / SOHC・2バルブ


総排気量 124 cm3


最高出力 6.9 kW 〈9.4 PS〉 / 7,000 rpm


最大トルク 10 N・m 〈1.0 kgf・m〉 / 6,000 rpm


燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム


始動方式 セルフ式


潤滑油容量 0.8 ℓ


燃料タンク容量 5.5 ℓ


クラッチ形式 乾式自動遠心シュータイプ


変速機形式 Vベルト無段変速


フレーム形式 アンダーボーン


ブレーキ形式(前 / 後) 油圧式シングルディスク / 機械式リーディングトレーリング


タイヤサイズ(前 / 後) 100/90-10 56J / 100/90-10 56J


乗車定員 2名


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情報提供元: MotorFan
記事名:「 [遂に詳細公開] 中身もこだわりが満載でした! 新型125ccスクーター「スウィッシュ」/スズキ