家から湯を持ってきて溶かしたり樹脂ベラでこそぎ落としたりと、走り出すまでに手間のかかるこの面倒を、村上開明堂がユニークな技術提案で解決してくれるかもしれない。
凍っているフロントガラスに、温かいウォッシャー液を吹き付けて溶かすというのがその仕組み。では温かいウォッシャー液はどうやって作るかというと、直前の走行時に仕込んでおくのだ。ウォッシャータンクとノズルの間に加熱と保温機能を持たせたタンクを設置、これが魔法瓶構造になっているので、シャットオフ後も温度は急激に下がることなく、翌朝の噴射時にもある程度の温度を保っていられるという構造だ。
沸かすときには40〜55度程度、前日の夜に作った「お湯」は次の朝には30度程度だという。写真のデモンストレーションでは噴射液温度はさらに低い20度程度だと言っていたが、凍らせた盤面はあっという間に溶けていった。
氷雪が頑丈すぎて魔法瓶の「お湯」を全部使い切っちゃったらどうするんですかと訊いてみた。そのときには当然エンジンONの状態であり、タンク内では新たな「お湯」が作られている。それを待つのもよし、そしてそれができあがる頃にはデフロスターも機能を発揮し始めているので、いずれにせよそれほど困ることはなさそうだ。
課題はタンクを含むシステムの置き場所。エンジンルームが過密化している昨今では搭載スペースを確保するのも一苦労だが、後付けならまだしも新車装着が叶うなら当初よりレイアウト要件に入れてもらえる。さらに製品化の暁には写真のものよりも小さくなる見通しとのことだ。
こんなシステムを考えたくらいだから、村上開明堂さんって寒いところの会社でしたっけと訊いたところ、静岡だという。暖かいところじゃないですか。だから冷凍コンテナを買い、その中で開発しているのだという。その努力が報われてほしいと思う新技術だった。