それに対して本品は、シートトラックのロックレバーを動かしたときにその前後左右4カ所の樹脂ブロックも下に落ち込む構造とした。常時接触式の従来品に比べればその優位性は明らか。結果、シートトラックとガイドレールはローラーベアリングだけで接触していることとなり、体感した「ヌルヌル」という感触につながったというわけだ。
さらに本品の樹脂ブロックはくさび形状とし、作動時は真下ではなく斜め下に動くようにした。固定時に隙間があればどんどん食い込んでいく、摩耗にも強い構造としたのだ。
シートトラックの工夫だけに目が向きがちだが、その実現にはガイドレールの寸法安定性の高さが大いに寄与している。トヨタ車体精工はガイドレールに100kg級(980MPa)の超ハイテン鋼を使用、35回ものロール成形機を用いて、社名どおりの精工な加工を施している。
スルスル動くのに気を良くしていたら「動きすぎるという声もありまして、だから前に動くときにはスムースに、うしろに行くときは少し抵抗を持たせてという可変機構を開発中なんです」と担当者はおっしゃっていた。人間、欲張るときりがないとは言え、だから高機能製品というのは次々と生み出されていくのだとあらためて認識した。
なお、本品はホンダ・ステップワゴンをはじめとしてすでに採用されている。
同社ブースにはアルファード/ヴェルファイアのシートフレーム一式も展示されていた。あの、レバーを引くとバヨーン!と一気に跳ね上がる3列目は、こんな機構で成り立っていた。道理で操作が軽いわけだ。ちなみにシート自体はトヨタ紡織の製品。トヨタ車体精工はロングトラベルのガイドレールを供給している。