「Shell Ocean Discovery XPRIZE」は、AUVを用いて深海の広域3Dマッピングに挑み、そのスピードや精度を競う賞金総額700万ドルのコンペティション。13か国・計32チームがエントリーしたが、これまで2段階のステップを経てRound 2に進出したのはわずか9チーム。その決戦の舞台に向けて、進藤氏らはいまラストスパートに入ろうとしている。
「ヤマハの中にあるリソースを引っ張り出すのも、私の大切な使命の一つ」と話す進藤氏は、チームに派遣された後もことあるごとに静岡県のヤマハ発動機に足を運んでいる。「技術的な案件ばかりでなく、ロジスティックの相談などもするのですが、我われのチャレンジに前のめりに関心を持ってくれる人が非常に多い。『これはレースだろ? ヤマハが関わるなら勝ちにこだわれ!』と。ヤマハらしいですよね?」と苦笑い。
このように、ヤマハ発動機という会社を客観的に眺められたことも、進藤氏にとっては大きな財産の一つ。「実際、何らかの課題が浮上した時、『ヤマハのあの技術、この製品が使えるのではないか?』と次つぎにアイデアが浮かんできます。あらためて幅広い技術と商品で、世界を相手にビジネスしてきた会社だなと実感しましたし、誇らしくも感じます」。
1年前、「チームのためになることなら、なんでも屋にでもなるつもり」と話していた進藤氏。しかし、やはりエンジニアの血は抑えきれないものがあるようだ。「その初心はまったくブレていませんが、AUV本体の開発やASVの運用など、技術的な役割も合わせて担っていくことがいまの目標。地球の表面の7割を占める海底を知ることで、地球への理解を深めるという大きなモチベーションを持ち続けて頑張ります!」