岡田貴浩広報部長による概要説明では、1997年のデビューから現行モデルである四代目までの歴史を振り返りつつ、グローバルでの販売台数推移とメイン市場である米国でのスバル車におけるフォレスターの販売比率、日本市場の販売比率が紹介された。日本ではモデル末期ということもあり、2017年度の販売比率が減少しているものの、アメリカではそのような傾向もなくアウトバックと並んで高い比率を占めている。現行モデルがデビューした2012年から米国市場では販売台数も一気に増加しており、米国仕様が真っ先に公開されたのも頷ける。
新型フォレスターのコンセプトは『世代を超えて元気で若々しく活動的な気持ちを駆り立てるクルマ』。ユーザーがフォレスターに寄せる「どこにでも行ける、どんな場所でも使える」という信頼をベースに、デザインや機能性で冒険心を後押し。家族や友人と共有する豊かで快適な空間が活動的な時間をもたらす、「Stir of Adventure」「Comfort for Loved Ones」というふたつのテーマが込められている。
それは活動的な愉しさをボディラインで表現するとともに、SUVらしい背の高さ、如何にもモノが詰め込めそうなモダンキュービックなデザインに集約されている。さらに、ルーフレールやクラッディングパネルにアクセントカラーを施すことで、スポーティでアクティブな印象を高めている。
インテリアでもふくよかでゆとりを感じる造形がSUVらしい逞しさや安心感を生み、開放感のある空間を演出。もちろん、スバル車の共通美点である視界の広さ(=死角の少なさ)は、より優れたものになっている。
新型フォレスターは荷室まわりを中心に使い勝手を向上させてきた。荷室開口幅が1300mmと現行モデルから実に+134mmと広がっており、荷室フロアの拡大と合わせてこれまで斜めに入れていたゴルフバッグを真横のまま積み込むことができるようになっている。積載容量としては520Lを確保し、リヤシートを倒さずともゴルフバッグや大型スーツケースを4つ積み込むことができる。リヤシートは従来と同じく6対4分割可倒式でフラットな荷室を実現。荷室側からもワンタッチで倒すことができる。
さらに、新開発のパワーリヤゲートは開閉速度が向上したほか、ドアロック連動スイッチをスバル車として初採用としたのがトピック。ワンアクションでゲートを閉めて施錠まで行なわれるのはありがたい。
また「SPORT」グレードにはリヤゲートの開放に連動した作業灯を用意しており、スバル初のLED光源の採用と合わせて夜や暗いところでの作業性が向上している。荷掛けフックも増設されており、地味ながら実用性は確実に向上していると言えるだろう。
ルーフレールにはタイダウンホールを設け、リヤドアの開口幅を広げたうえ開口部に大型ステップを設けることで、ルーフレールへの荷物の積みやすさにも優れている。
いずれも派手さこそないがユーザーの使用実績に基づく着実な進化であり、スバルらしい実直さを感じさせるポイントだ。
これら数々の仕立ては、推測ではあるが、グレードによる違いはあったとしても日本仕様にも踏襲されだろう。少なくとも荷室寸法、ルーフレールや大型ステップなどの装備で違いが出るとは考えにくい。荷室の使い勝手や積載性に関しては日本仕様も期待大だ。
荷室寸法(従来比)
高さ:884mm(±0mm)
フロア幅:1100mm(+27mm)
フロア長:908mm(+35mm)
最大開口幅:1300mm(+134mm)
荷室容量:520L(+15L)
今回公開されたのは米国で展開されるグレード「TOURING」と「SPORT」の2台。それぞれ機能や外観が少しずつ異なっており、「TOURING」がより上質な豪華モデル。「SPORT」にはその名の通りスポーティな外観が特徴となっている。
インプレッサ、XVに続きスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用したボディサイズは現行モデルから僅かながら拡大されており、室内スペースが拡充されている。特に33mm延長したホイールベースは後席の室内空間に充てられた。20mm拡大した全幅はそのまま左右席間距離に充てられ、前後席ともに「全ての乗員が愉しい空間」の実現に貢献している。
米国を主戦場にするフォレスターだけにモデルチェンジで大幅なサイズアップとなるかと思いきや、大型化を最小限にとどめているのは、米国市場にはさらに大きなアセントが存在していることが関係しているのかもしれないが、取り回しを考えれば日本のユーザーにとってはありがたい。
パッケージング(従来比)
全長:4625mm(+15mm)
全幅:1815mm(+20mm)
全高:1730mm(−5mm)
ホイールベース:2670mm(+30mm)
フロントオーバーハング:965mm(−10mm)
リヤオーバーハング:990mm(−5mm)
左右席間距離:740mm(+20mm)
後席スペース:946mm(+33mm)
搭載されるエンジンはFB25型 2.5L水平対向DOHC直噴ガソリンエンジンのみ。従来の2.5Lエンジンから実に90%の部品を刷新した新開発のエンジンだ。182ps/5800rpmの最高出力と176lb-ft(24.3kgm ※編集部換算値)/4400rpmの最大トルクを発揮。現行モデルからは12ps向上しているが、同クラスのライバルと比較してずば抜けた数値ではない。しかし、加速性を高めスポーティな走りを実現しているのは、マニュアルモードを7速化した新型CVTによるところが大きい。
リニアトロニックと呼ぶスバルのCVTは、新しいチェーンとプーリーによるレシオカバレージの拡大や新形状のミッションケース、新型のオイルポンプの採用など多岐に渡る改良で、ドライブトレーンの大幅な性能&質感向上を果たしている。
同時にSI-DRIVEを最適化。I-MODEとS-MODE(「SPORT」はS♯-MODE)を設定し、ドライビングプレジャーを追求している。
もちろん、全車スバルの十八番であるシンメトリカルAWD。悪路での駆動を統合制御するX-MODEは制御を最適化し、より悪路走破性を高めているだけでなく、操作インターフェースがわかりやすくなったのも特徴。
というのも、雪道やアイスバーンなどの滑りやすい路面と砂利や河川敷などの未舗装路では、従来型ならX-MODEとTCSを両方ともオンに。深雪や泥濘、砂地などのタイヤが埋まるような状況ではX-MODEをオンにしつつTCSはオフにする……というような操作が必要だった。オフロードをよく走るユーザーには自明の設定ながら、一般のユーザーにはこの操作がわかりづらく、折角のX-MODEが有効活用されていないというケースがあったとか。
そこで、X-MODE+TCSオンを「SNOW・DIRT」に、X-MODE+TCSオフを「D(ディープ)SNOW・MUD」にすることで操作を簡略化。誰でも簡単にX-MODEの恩恵を享受できるように工夫している。
S
UVとしては十分な220mmという最低地上高はもちろん、アプローチアングル、ディパーチャーアングル、ランプブレークオーバーアングルもしっかり確保されており、X-MODEと合わせて行動範囲を広げてくれるのは間違いない。
安全面でのスバルのアドバンテージは大きい。スバルが力を入れてきた優れた視界性能、SGPがもたらす高剛性なボディは衝突安全性能はもちろん、進化した足まわりと新採用のVGR(Variable Gear Ratio)ステアリングギヤボックスの組み合わせによる優れたハンドリングがもたらす危険回避性能は世界屈指のレベルに到達している。アイサイトに代表される先進安全装備と合わせて、USNCAPやIIHSの総合評価最高ランクを獲得できる性能を達成している(社内試験結果)という。
さらに、新型フォレスターにはクルマがドライバーを認識し、快適さや安全性を高める新システムを採用しているのが大きなトピックだ。
「ドライバーモニタリングシステム(米国仕様システム名称:DviverFocus)」は、マルチファンクションディスプレイ(MFD)上部に設置された赤外線カメラにより、ドライバーの目と口を認識。その状態により、ドライバーの脇見や居眠りを検知してメーター内のディスプレイとMFDで注意を促してくれる。ドライバーの運転負担を軽減してくれるアイサイトツーリングアシストがあるだけに、抗いがたい人間の本能(睡眠)まで踏み込んだ安全装備と言えるだろう。アイサイトとのより深い連携によるさらなる高機能化への期待も高まるシステムだ。
「ドライバーモニタリングシステム」は安全性向上のみならず、おもてなしも提供してくれる。カメラで認識するドライバーを登録することで、そのドライバーが設定したシート位置やドアミラー位置、エアコン、燃費表示を乗り込むと同時にドライバーに合わせてセッティングしてくれるのだ。登録できるのは最大5人までで、利用する家族が多いとありがたい設定だ。惜しむらくはステアリングのチルトとテレスコピックが電動調整式ではなく、連動して動いてくれないことだろうか。
今回公開された米国仕様は2018年秋の販売開始が予定されている。日本仕様の発表や販売時期についてはまだ公開されていない。米国では「TOURING」と「SPORT」の2グレード展開で、ドライブトレーンは共通ながら、装備や外観がキャラクターに合わせて差別化されている。フォレスターはスバルがグローバル戦略車と位置付けているだけに、おそらく、日本でもグレードごとの差や環境の違いによって異なる点はあっても、米国仕様とそれほど大きく違いはないのではないだろうか。
全方位で着実な正常進化を果たした新型フォレスターだが、それだけに日本仕様の発表時には何かプラスアルファを期待したくなる。発表が待ち遠しくてたまらない。