同時に8万9000バーツ(およそ30万円)という車両価格も発表された。ちなみにモーターショー会場で予約する人には会場特別価格が適用され、8万4900バーツになるとのことだ。またタイホンダの純正カスタムブランド「H2C」や、バンコクのカスタムショップ「BIKERS」のアクセサリーを装着したカスタマイズ車両もブースに展示され、ノーマルモデルとともに脚光を浴びていた。
いずれもドレスアップ要素の強いカスタマイズだが、その表現は控えめで、どれも品よくまとめられているのが印象的。個人やショップで過激なカスタムを施すのがあたりまえのタイだからこそ、メーカーとしてはあえて車両本来の魅力を前面に出しているわけだ。
またプレスリリースでは、かつてスーパーカブC100がユーザーのライフスタイルを変革したことに触れていることが興味深い。「1960年代に、モーターサイクル産業を変革しました。コンパクトなデザインで、あらゆる世代の人が簡単に運転することができました」と記されている。
たしかにスーパーカブは、それまで野蛮な乗り物だったモーターサイクルを、家族の誰もが気軽に使える移動ツールへと変えた。C125でも、こうしたキャラクターを引き継ぎ、幅広い世代に親しんでもらいたいということなのだろう。それは今回のホンダブースの構成からもうかがえることができた。
ホンダブース全体も、これまでにない新しい構成がなされていた。ここ数年のバンコクショーでは、ホンダはブースを2つのエリアに分けて展開。販売ボリュームの大きな小排気量モデルが並ぶエリアと、多くのタイ人にとって憧れの対象となる大排気量モデルを集めた「ビッグバイク」エリアという構成だ。しかし今回は、もうひとつ大きなエリアが設けられていたのだ。
それはモンキー125とC125だけを並べた「CUB HOUSE」エリア。ここでは車両とそのパーツだけでなく、アパレルブランドとコラボして、車両の世界観に合わせて作ったファッションもディスプレイ。またブースもカフェとガレージが一体になったようなデザインにされ、ちょっとだけオシャレな日常生活とモーターサイクルのある世界を融合させていた。
この演出の背景には、スーパーカブをはじめとしたアンダーボーンフレームモデルの位置づけの変化がある。タイをはじめとした東南アジア各国では、かつてアンダーボーンフレームを採用したモデルが市場の主流だった。
しかし現在はスクーターがすっかり浸透し、スポーツモデルの販売も少しずつ増加している。「生活の足」としての役割はスクーターが担うようになってきているわけだ。いまやアンダーボーンモデルは目新しさがなく、むしろ古臭くさえ思える存在になりつつある。だからこそホンダは、マイナーになりつつあるアンダーボーンモデルに「日常をちょっとオシャレに彩り、ライフスタイルを豊かにする」という価値を与えようとしているのだろう。