今回の合意の背景には、世界の炭素繊維事業分野が航空機用途や風力発電用風車翼用途をはじめとした環境・エネルギー関連用途で需要拡大していることにある。特に航空機業界では中・小型の単通路機の需要が大きく伸長し、今後これらをターゲットにした次世代航空機の開発が本格化することが予想され、生産機数が多い中・小型機には部材成形の効率化などによりトータルコストダウンが可能となる熱可塑プリプレグの採用が一層拡大していくことが想定される。
東レが2017年度より進めている中期経営課題「プロジェクト AP-G 2019」では、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」を全社的に推進しているが、その主要な事業の一つとして炭素繊維事業の事業拡大と市場開拓がある。東レは既に航空宇宙用途向け炭素繊維事業分野において多くの取引を行っているが、今後更なる拡大が見込まれる航空機用途需要に対応するため、従来の熱硬化プリプレグに加えて熱可塑プリプレグなど、より多様な分野での一層の技術開発と拠点整備が課題になっているという。
今回、買収を決めた「TCAC」は、欧米に主要製造拠点を有するプリプレグメーカーで、同社の材料は航空宇宙用途において、熱可塑性樹脂及び高耐熱熱硬化性樹脂材料を中心に幅広い採用実績を有しており、特に熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維基材のグローバルリーディングカンパニー。今回の買収により「TCAC」が得意とするこのような製品群に対し、東レが強みを有する幅広い炭素繊維技術やポリマー技術などを投入することで、大きなシナジーが期待できる。
さらに両社の商流を融合させることで、顧客に対してより幅広いラインナップを提案することができるとし、迅速に小型航空機向け市場拡大に対応し、中長期的には自動車用途などの産業用途に向けて、一層の事業拡大を図っていくという。