これを、乗用車の運転に置き換えるとどうか。端的に言えば、アクセル・ブレーキ・ステアリングの操作が雑で、加減速・旋回Gの立ち上がりが急激で、同乗者を車酔いさせてしまいそうな運転が「躍度が高い」運転、その逆が「躍度が低い」運転となる。
雪国や雪道では、ドライバーは厚着・手袋・雪靴を身に着けた状態で運転することが多く、舗装路に対しクルマの挙動を感じ取りにくくなる。その一方、路面や景色は真っ白で遠近感が掴みにくく、しかも吹雪やアイスバーン、見通しが悪い交差点、除雪され狭くなった車道など、走行環境が目まぐるしく変化するため、ドライバーは常に全神経を運転に集中させなければならない。だからこそ、「躍度」の重要性を最も体感しやすいステージとして、雪吹きすさぶ冬の北海道が選ばれた、というわけだ。
各メディアに用意された走行メニューは「一般道走行」「オートテスト」「躍度テスト」の3つ。操作速度と躍度の関係、車両特性と躍度の関係を、走る・曲がる・止まる・の各項目に分けて体感する「躍度テスト」については、現在販売中のモーターファン・イラストレーテッド(MFi)136号で、同編集部の野崎博史さんが詳しくレポートしてくれているので、ここでは「一般道走行」と「オートテスト」のインプレッションをお届けする。
最初のメニューとなった「一般道走行」は、郊外のワインディングを中心にJR士別駅周辺の市街地を含む片道約35kmのコースを、折り返し地点でCX-8あるいはCX-3へ乗り換えながら走るというもの。同時に走る4媒体に割り振られた試乗車はCX-8が2台ともディーゼルの4WDで、CX-3はエンジンこそ2台ともガソリンではあるものの、駆動方式は1台が4WD、もう1台がFFというラインアップだった。
士別駅付近で運転を交代し市街地でステアリングを握ると、交差点の手前や橋の上などアイスバーンと化している場所では路面の変化に敏感なCX-3の特性が顔を出すものの、その動きに唐突さはなく、スリップしそうな状況になっても余裕を持って対処できる。
しかも、アクセルペダルの操作に対してクルマがリニアに加速してくれるため、不必要にトラクションをかけすぎてホイールスピンを起こすことがない。雪道に不慣れな筆者ですらこうなのだから、雪国に住む人ならばより一層余裕と自信を持って運転できることだろう。
その安心感は上り坂での加速においても変わらない。CX-3ガソリン車の192Nm/2800rpmに対し450Nm/2000rpmと、2.5倍もの最大トルクを発生するCX-8は、たとえ4WD車でも神経を使うだろう……と思いきや、3000rpmまで回してもホイールスピンせず、怒濤の勢いで加速していった。
そして、CX-3と最も大きく異なったのは、アイスバーン混じりの市街地。轍やスプリットミュー路ではやや神経質な面が見られたCX-3に対し、CX-8はものともせず矢のように突き進む。二回り以上大きなボディサイズが有利に働いているのは言うまでもないが、デビューからすでに3年が経過しているCX-3に対し、今まさに発売されたばかりの最新モデルであるCX-8には、「躍度」を重視したクルマ作りがより色濃く反映されているように思えた。
その後、イギリス発祥のエントリーモータースポーツで、近年は日本のJAFも開催している「オートテスト」に、規定の躍度を超えると2秒のペナルティが課せられるなどの特別ルールを追加したマツダ版「オートテスト」にチャレンジ。
複合コーナーにスラローム、270度ターンに車庫入れまで含まれた雪上コースを、FF車のデミオ15MB、FR車のロードスターRS、4WD車のアクセラスポーツ15S Lパッケージの3台(いずれもMT車)でタイムアタックしつつ、挙動特性とコントロール性の違いを体感した。