では、なぜ、薄い膜がよいのだろうか。 分子膜を薄くできれば、膜作成に必要な分子の量を節約できる。つまり「省資源」化につながる。さらに、薄くすることでより小さな電力で分子膜を機能させることができ、「省エネ」が実現する。
現在の分子膜の厚さは約0.001mm。これでも十分薄いが、では人類はどこまで薄い分子膜を作れるのだろうか。千葉大学/京都大学の共同研究グループは、走査トンネル顕微鏡(STM)という超高感度の顕微鏡観察から、既存の手法で分子膜を薄くしていくと、室温では1個1個の分子が動いてしまい、安定な膜にならないことを発見した。
ところが、鉄磁石の力をかりるとこの分子の動きがピタッととまり、非常に安定な分子膜となることを発見。しかも、その分子膜の厚さを0.0000003mmという、現在使われている分子膜の1000分の1以下にまで薄くすることに成功した。
本研究成果は、平成30年1月10日(水)発行の英科学誌「Scientific Reports」(サイエンティフィック・リポート)にオンラインで掲載。
Scientific Reports, 8巻, 2018年, 30157.