少子化や若者のクルマ離れの進展、将来選択肢の多様化等により、自動車整備士を目指す若者が激減する一方で、整備要員の高齢化が進展しており、近い将来、クルマ社会の安全・安心に直結する自動車整備を支える人材不足が顕在化する可能性が高いと言われている。
自動車整備業界・整備士においては、
○ 今後も必ず必要となる点検・整備需要を背景とした安定した業態
○ 自動車の利用に係る安全・安心や利便性を確保することを通じた地域社会への貢献による満足感、達成感
○ 技術革新の著しい自動車を扱うことによる自動車整備スキルの習熟を通じた最先端技術に係る知見の獲得
といった魅力や重要性が挙げられる一方で、給与、労働時間/休日/休暇、作業環境、やりがいなどの課題が指摘されている。女性がこの業界で活躍するためにはさらにハードルが高くなり、数々の対策が求められていた。女性が整備士として働くことで、女性の顧客から話しかけやすい、名前や顔を覚えられやすいなど、支持を得られやすいメリットがある。いっぽうで体力、筋力面では男性より劣るのは仕方なく、身体的な負荷軽減が必要だ。
これらを踏まえ、具体的には下の3点をガイドラインは改善点として掲げている。
【1】工具・機器面の改善
【2】設備面の改善
【3】制度や体制面の改善
【1】については、工具や機器の軽量化、コンパクト化、作業の省力化、振動の軽減など、女性の体力、筋力面を補助する方向の取り組みと、重厚長大な部位ではなく外装や室内整備などに振り向けるなどの作業分担という取り組みがある。
【2】については、女性からの要望が多い空調設備がまずひとつ。とくに工場内における冬期の暖房を望む声が多いという。もうひとつはトイレ、更衣室、シャワールームの男女別化。女性を招くなら、そりゃそうだろうという要件だ。
【3】は、出産・育児に対する周囲の理解と対応策。これらをこなすためには長期の休暇を余儀なくされ、それ以降の継続に不安があるのが現状。出産/育児に伴う休業制度をはじめ、産休/育休後の復職制度や育児中の早期退社などの柔軟な制度が求められる。
現場からは、女性整備士を雇うメリットとして、以下のようなコメントが寄せられている。
「作業場の掃除や整理整頓など、作業環境の良化に貢献してくれています。また、女性ならではの視点やセンスで貢献してくれています」
「女性が職場にいることで、職場の雰囲気が良くなります。また、お客様対応が上手で、周りの参考になっています」
「女性のお客様は、女性の整備士がいることで接しやすいという評価を頂いています」
女性整備士自身は、彼女たちの強みを以下のように意識しているようだ。
【1位 女性客からの支持】
• 車の知識があまりない女性のお客様に対して、同じ女性視点で分かりやすく説明できます。
• 女性のお客様に親しみを持って頂けます。
【2位 女性ならではの配慮や気配り】
• お客様への細やかな配慮や気配りが多いです。そこに気づかれるお客様から、喜びの声を掛けて頂く頻度が高いように思います。
• 男性ばかりの職場の雰囲気が良くなるムードメーカーになれます。
【3位 話しやすさ】
• 人当たりが良いです。
• 老若男女問わず、話しかけられやすいと思います。
【4位 腕が細いので奥まで手が届きやすい】
• 男性にはないきめ細やかな整備作業ができます。
• 男性の手が入らない箇所も手が入ります。
【5位 女性整備士が珍しいので覚えてもらえやすい】
• お客様にすぐ覚えて頂けます。
• 会社の広告塔の役目を果たせます。
奥まで手が届きやすいというのは目から鱗である。確かにこれにとどまらず、言われてみれば女性ならではの特質を生かしている項目ばかりだ。「男性の代替」ではない、女性としての能力を生かすことで、より活性化した現場を作り出す。これからの取り組みに期待である。