ZFのアドバンスト・エンジニアリング部門の責任者であるトーステン・ゴレウスキーは次のように述べている。
「未来の都市交通は、ローカルゼロエミッション(クルマからは排気ガスを出さない)で自律的に走行し、多様な要件にも極めて柔軟に対応できるようになるでしょう。当社のIDDCは、このために必要な技術的・機能的要件に対応しています」
完全に電気化されたIDDCは優れた操縦性を備え、人が運転しなくても都市部を走行でき、また理論上は乗客キャビンがなくても走行可能。これは、24時間365日での連続運行が想定されている、Rinspeed Snapのような車両コンセプトには最適である。これに対し、「ポッド」と呼ばれる上部構造は、最新の要件に合わせて絶えず変更される。ポッドは人やモノ用の可動式または固定式のキャビンで、ステアリングホイールがない。
IDDCはフロントアクスルも革新的だ。EasyTurnと呼ばれるシステムは、改良型電動パワーステアリングによって最大75度のステアリング角を実現。ちなみに、従来のソリューションでは最大切れ角は50度。リヤアクスルシステムとの組み合わせによって、Rinspeed Snapはほぼその場で旋回することが可能となり、混雑した都市の中心部では多大なメリットが得られる。ZFの統合ブレーキ制御(IBC)も、IDDCの他のコンポーネントと同様にSnapでは電動。このテクノロジーも自動運転の要件のひとつとなっている。
そして、IDDCの中核的な要素が、モジュラー式のリアアクスルシステムであるmSTARS(モジュラー型セミトレーリング・アーム・リア・サスペンション)である。組み込まれているアクティブ・キネマティックス・コントロール(AKC)後輪操舵は、最大切れ角を14度まで拡大。電動モーターとパワーエレクトロニクスがアクスル内部に配置され、効率的に車両を駆動する。通常の電動アクスルドライブ出力が150kWのところ、Snapでは50kWに抑えられている。これは、比較的低速で最大限の距離を走行し、都市部のカーシェアリングにおける耐久性も考慮した設計としたから。