三菱重工業は液炭設備全体のEPC(設計・調達・建設)を請け負う三菱ケミカルエンジニアリング株式会社にCO2回収技術のライセンスを供与するとともに、CO2回収装置の基本設計を担当し、主要機器を供給した。
日本液炭は大陽日酸株式会社のグループ企業で、日本国内の炭酸ガス関連事業を手掛けている。日本液炭は石油化学会社やアンモニアメーカーなどから高濃度の原料炭酸ガスを購入し、液化・精製して液化炭酸ガスやドライアイスとして販売している。
大陽日酸グループは、2014年11月に三菱ケミカルホールディングスグループの一員となり、同グループの事業会社各社との協働を進めている。今回の液炭設備は、日本液炭が水島工場を置く三菱ケミカル 水島事業所内で発生する低濃度の炭酸ガスから吸収液を用いてCO2を分離・回収し、高品質な液化炭酸ガスを製造するものだ。
この液炭設備は、日本液炭による今後の中四国から関西地区に向けての炭酸のさらなる安定供給に貢献する。
三菱重工業のCO2回収技術は、関西電力株式会社と共同開発した高性能な吸収液(KS-1)を用いた「KM CDR Process」と呼ばれる化学吸収法で、エネルギー消費量が従来法に比べ大幅に少ないのが特長。1999年から、天然ガス焚きや石炭焚きのプラントなどで発生する排ガスからのCO2回収商用装置を、世界各地で12基稼働させており、CO2回収装置の商用実績では圧倒的な世界トップシェアを誇っている。
三菱重工業のCO2回収技術は、液化炭酸ガスやドライアイスの製造用に加え、尿素、メタノール、ジメチルエーテル(DME)の製造など化学用途、さらには、火力発電所などから発生するCO2の回収・貯留(CCS)や、生産性が低下した油層にCO2を圧入して生産増加をはかる原油増進回収(EOR)などでの幅広い利用が可能だ。