時代遅れだという見方もあるだろうが、かつてスポーツバイクやレーサーモデルは2ストマシンが主流だった。とくに50cc/2ストスポーツなら、シンプルな構造はエントリーユーザーにとってホビーになりやすく教材にもなっていたし、シンプルゆえに軽量なことも馴染みやすい要因であった。
その一方で、2ストは不完全燃焼のまま排気ガスを大気中に放出してしまったり、燃費も悪かったりといったデメリットを持つがゆえに、徐々に淘汰されてしまった。
そんな中で、アプリリアの2ストは、競技車ではなくフツーの街乗り用としてまだ現役で販売しているのだから素晴らしい。EICMAに出展されていたSR50Rもそんな1台である。そもそもSR50Rは1992年から販売されているモデルで、キャブレターだった吸気システムは、1999年にはフューエルインジェクションに進化。ECUによって燃調を管理することで2ストエンジンでありながらも、しっかりとクリーンな排気ガスの排出に貢献している。
今回のショーに展示されていたのはそのSR50Rの2018年仕様。2スト50cc、水冷単気筒のHi-Per2 Proエンジンは、現代の厳しい排ガス規制「ユーロ4」に準拠したもので、優れたエンジンパフォーマンスと環境性能、低燃費を実現としているのである。そもそも、それほど製造コストをかけることができない50ccというカテゴリーにおいて、様々な技術を投入することで、2ストエンジンをラインナップとして残しているアプリリアは、もっと評価されて良いのではないだろうか。
スペック面も必要にして十分どころか、オーバースペック過ぎるほど。フレームには最適な重量配分を実現する「高張力スチール」を採用するほか、足周りには13インチの大径ホイールに、ロープロファイルタイヤを装備。リヤ側にドラムブレーキを用いることも多い50ccスクーターの中で、このSR50Rのブレーキは前後Φ190mmディスクとして、圧倒的な制動力を確保した。
2018年モデルからはエアフィルター、エキゾーストカバー、ナンバープレートブラケットを刷新。テーパ付きシールド、デュアルヘッドライト、中央の空気取り入れダクト、空力を考慮したテールフェアリングなど、細部にいたるまで緻密に計算されている。すなわちこのSR50Rは、最先端の技術を惜しみなく投入することで2スト50ccスクーターというニッチなカテゴリーを突き進む、孤高の存在なのである。
同じ2スト50ccというカテゴリーのRX50Factoryは、2018年1月のデリバリーを予定しているモデルである。こちらはエントリーユーザー向けオフロードモデルで、50ccであっても本格的な仕様であるところにアプリリアの本気が感じられる。
例えばΦ41mm径の倒立フロントフォークはホイールトラベル240mmを確保し、21インチ・スポークホイールを履く。リヤはプログレッシブリンクシステムによってホイールトラベル200mm&18インチ・スポークという仕様。またハンドル周りもブラックアナダイズド・アルミハンドルバーによって引き締まった印象だ。