セレナに続いてプロパイロットを搭載したエクストレイル。そのハイブリッド仕様でロングドライブに出かけた。総走行距離1150km。プロパイロットでのドライブは快適だったか? プロパイロットは役に立ったか? そして燃費は?

好みは分かれそうだが、マイナーチェンジで精悍になったフロントグリル。

日産エクストレイルは、2013年に現在の三代目にモデルチェンジをしている。ハイブリッド仕様がラインアップに加わったのは2015年春。そして2017年6月にマイナーチェンジを受けた。日産デザインのキーとも言える「Vモーション」がより強調された精悍な面構えになったとともに、高速道路同一車線自動運転技術と日産が言う「プロパイロット」を搭載した(一部グレードにメーカーオプションとして設定)。




今回、ロングドライブに連れ出したのは、エクストレイルハイブリッド20Xの4WD仕様。ボディカラーはプレミアムコロナオレンジ。綺麗な柿色だ。目的地は、宮城県のスポーツランド菅生である。東京ー菅生の往復は約900km。しかもその大部分が高速道路だ。ここでプロパイロットがどのくらい有効か、試してみたかったのだ。

エンジンはMR20DD型2.0ℓ直列4気筒DOHC。燃料噴射は筒内燃料直接噴射(DI)だ。エンジンカバーがあっても外しても見える景色にほとんど変化がない。

エクストレイルには、2.0ℓ直4エンジン搭載モデルと、同じエンジンにモーター&バッテリーを積んでハイブリッド仕様にしたふたつのパワートレーンがある。どちらもトランスミッションはCVTだ。ハイブリッドは、30kW/160Nmのモーターが付く代わりに、車重が1640kgと100kg重くなる。


モード燃費は、ガソリン仕様が15.6km/ℓ、ハイブリッドが20.0km/ℓである。

一応、お約束で手を離して写真を撮ってみる。が、こういうふうにする理由がない。ステアリングホイールにそっと手を載せておけばいいのだ。

出発して間もなく首都高速に乗る。乗ったらすぐにプロパイロットを作動させる。作動させるのは、とても簡単だ。ステアリングホイールのスポークの右側にあるプロパイロットのスイッチをON。すると「セーフティシールドがオンになりました」とインパネに表示が出て、そのあと、「SET」ボタンを押せばプロパイロットは作動する。車線の白線をシステムが認識しているかどうか、ステアリング操作までシステムがアシストしてくれているかは、わかりやすく表示される。これはありがたい。




首都高速は例によって渋滞箇所があった。前車との車間距離は3段階で調整できる。一番間隔を狭くしてもとくに前車と近すぎて怖いということはない。したがって、一番狭い間隔を選ぶ。エンジンを切って再始動するたびに、この動作をしなくてはならないのは、ちょっと面倒だ。

翌々日の東名道。渋滞ドライブは、非常にラクチンだ。

全車速で前車に追従してくれるので、渋滞時はとても楽だ。ステアリングも車線中央をキープしてくれるので、そっとステアリングホイールに添えていればいい。のだが、首都高速の渋滞の場合、ドライバーのマナーがよろしくなくて、かなり無理な割り込みが頻繁にある。ゆえに、プロパイロット作動中とはいえ、あまりリラックスはできない。しかし、渋滞中にクルマが完全に停止してしまって速度がゼロになった場合でも、3秒以内ならクルマは自動的に再スタートする。それ以上の時間停止した場合でも、「RES+」を押せばプロパイロットが再始動してくれる。

4WDの切替は「2WD」「AUTO」「LOCK」から選べる。今回は終始2WDで走行した。

東北自動車道に入ると、渋滞はなくなり快適なドライブとなった。もちろんプロパイロットでのドライブだ。両足はペダル操作から解放される。これが想像以上にラク。ステアリングホイールに添えた手は、6秒ほど手放しすると警告が出る。と言っても、添えて置くだけだから、あえて手放しする必要もない。


プロパイロットの設定速度の上限は115km/hだ。もちろん、制限速度は最高100km/h(12月1日から花巻南IC〜盛岡南ICで試験的に110km/hになるが)。とはいえ、東北自動車道では実際には100km/h+αの速度でクルマは流れている。115km/hという上限の設定は(法律的は話は別にして)リーズナブルだと思う。

バッテリーを積む関係でトランクの床面がやや高い。スペアタイヤを搭載するから、という理由もある。エクストレイルに求められる走破性を考えると、パンク修理キットではなくスペアタイヤを搭載する必要があると開発陣は考えたそうだ。スペアタイヤレスなら、もう少し床面を下げられただろう。

トランクの手前側には物入れスペースがある。

気になったシーンもあった。


プロパイロットで設定した速度より前走車のスピードが遅くて、追い付いてしまったとき、走行車線から追い越し車線に出て追い越しをする。そのとき、たとえば80km/hまで速度が落ちたあと、「わりと」全力加速で設定速度(たとえば100km/h)まで戻そうとするのだ。「わりと」と書いたのは、自分がアクセル操作をするなら、そんなに焦って速度を上げないだろうな、と思うからだ。しかも、こういうシチュエーションではCVTの悪い面が顔を出す。車速が上がる前にエンジン回転が上がり、タイムラグをともなったあとに車速が上がる。いわゆるラバーバンドフィール的な気持ちの悪さとエンジンのうなり音がするのだ。




これを避けるには、前走車の速度と距離を上手にコントロールして早めに追い越し車線に出ることだ。うまくできるとストレスなく追い越し、ドライブを続けられる。


それにしても、この疲れなさ度合いはなんだろう? 深夜まで仕事をし、早朝取材が続いていて疲労困憊だったのだが、菅生まで一回のトイレ休憩だけで走り切れてしまった。ペダル操作と速度管理、進路管理がドライバーにとってどれほど負担になっているか痛感した。退屈な高速道路での移動はできるだけ疲労・ストレスなくこなし、移動先の楽しみのための体力、気力をとっておく。あるいは、運転が楽しい道のドライブを満喫する集中力を温存しておく。これがプロパイロットでのドライブのメリットだろう。




とはいえ、プロパイロットは、「自動運転」ではない。ドライバーは常に周囲を見ていなければならない(当たり前だ)。でも、プロパイロット有り・無し、は長距離のドライブではドライバーの疲労に大きな差が出るのは、明らかだ。

エクストレイルハイブリッドのオートハイビームは使えるか?

夜のドライブで効果的だと思っていた「ハイビームアシスト」も試してみた。要するに常にハイビームにしておけば、必要に応じてロー/ハイを自動的に切り替えてくれる機能だ。東北自動車道は首都圏の高速道路と比べても交通量が少なく照明も暗い。にもかかわらず、ハイビームになることがあまりない。というか、ほとんどない。これまで同様の機能をさまざまなクルマで試したが、国産車は「ハイビームにしたがらない」。また、ハイビームになる条件がドライバーにとってよくわからなかった。これなら手動で切り替えた方がいいと感じた。

では、電子ミラーであるインテリジェントミラーはどうか?

東京ー菅生往復882.5kmの燃費は、16.0km/ℓだった。JC08のモード燃費が20.0km/ℓだから、その80%。背の高いSUVということを考えれば、なかなかよい燃費だ。


翌日の復路、そして、翌々日の東京ー富士スピードウェイ間(酷い渋滞の区間があった)、合計で1152.2km走って、トータルの燃費は15.4km/ℓだった。


ちなみに、エクストレイルハイブリッドを日産本社に返却する際に都内から約30kmを渋滞なし、速度域も最高90km/hに抑えた場合の燃費は19.5km/ℓだった。




プロパイロットの恩恵は実感できた。Xにメーカーオプションとして設定がある。価格は約14万円。エクストレイルを選ぶなら必ずプロパイロットは付けておきたいと思った。




実際、ロングドライブをして取材することが多い身としては、プロパイロットのような先進運転支援技術は本当にありがたいのだ。


パワートレーンはどうだろう? 20X(4WD)とハイブリッド20X(4WD)の価格差は、約34万円だ。ガソリン仕様だと、モーター分のパワー/トルクの上乗せがないかわりに、ドライブのフィールも軽い。実際、ガソリンとハイブリッドの比率は7:3程度らしい。ガソリン仕様を選んでプロパイロットを付ける。ハイブリッドとの価格差分でスキーやキャンプにいく費用に充てる、というのもよい選択だろう。

プラントコードが「W」となっているから、日産自動車九州で生産されたクルマだ。

日産エクストレイル ハイブリッド20X(4WD)


■ボディサイズ:全長4690×全幅1820×全高1730㎜ ホイールベース:2705㎜ ■車両重量:1640㎏ ■エンジン:MR20DD型直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1997cc ボア×ストローク:84.0×90.1㎜ 圧縮比:11.2 最高出力:108kW(147ps)/6000rpm 最大トルク:207Nm/4400rpm ■モーター:最高出力30kW(41ps)最大トルク160Nm■トランスミッション:CVT ■駆動方式:4WD ■サスペンション形式:F:ストラット/コイル Rマルチリンク/コイル■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:F&R 225/65R17 ■燃費:20.0km/ℓ(JC08)■車両本体価格:309万8520円(税込)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 エクストレイルハイブリッドを1150kmドライブ。プロパイロットは?燃費はどうだった?