今回投入する溶接システムの設計年産能力は90万トンで、これにより連続的に接合されたビレットは、エンドレス圧延が可能となり、これまでのビレット単体の圧延加工と比較して加工時間および生産能率が大きく改善するとともに、冷却床の使用効率も向上して運用自由度も増えることから、コイル重量のカスタマイズも可能になる。本溶接システムはビレット加熱炉と圧延スタンドとの間に設置され、急速集中加熱によるフラッシュ溶接でビレットを連続溶接します。これにより固体状態のビレット同士の接合が可能となるため、溶加材を使用する必要がなく、すべてのプロセスパラメータをリアルタイムで制御するダイナミックフラッシュ制御システムにより、高い接合品質を実現するだけでなく、エネルギー消費を減らしながら材料歩留を向上させることも可能だ。
ハードの周辺機器として、溶接終了に伴い溶接ヘッドが上昇した後、接合部のバリがセルフクリーニング式バリ除去設備(デバリングステーション)で除去される。このバリ除去設備は溶接ユニットとは独立して稼働するため、サイクルタイムには影響しない。さらに、プロセス品質を維持するために搭載されるアクティブスパッタ保護機能は、機械や電気装置を溶接スパッタから保護して、部品寿命を延長し、円滑なメンテナンスを実現する。
電気システムとしては、コンパクトかつ信頼性が極めて高い一体型の高周波変圧器をコア機器として採用しており、メンテナンスフリーでエンドレスに溶接を継続することが可能だ。安定して持続可能なプロセスフローには電圧の安定化と制御時間の短縮が不可欠であることから、サイリスタ回路の10分の1の時間で電流制御を行い矩形波電圧を生成するコンバーターと、各変圧器には高周波の矩形波電圧を安定的に一定のDC電圧に変換する半導体とが実装されている。
今回のビレット溶接システムで、三菱重工はバリ除去設備(デバリングステーション)、払い出しシステム、ピンチロールやせん断機、ローラーテーブルなどの付属設備を含むビレット溶接システム「ERT-EBROS」一式に加えて、流体システム、電気機器およびオートメーションシステム、溶接制御用技術パッケージ、温度損失を補うために圧延機スタンドの手前に据え付けられる誘導炉を供給し、プロジェクトのエンジニアリング、さらに新設機器の組立と試運転も担当する。
プライメタルズテクノロジーズ(PrimetalsTechnologies,Limited)は本社を英国、ロンドンに置き、金属鉄鋼産業にとって、エンジニアリングやプラント建設全般の、世界的リーダーかつライフサイクル・パートナー。プライメタルズテクノロジーズは電機、オートメーション及び環境の総合ソリューションを含めた技術、製品、サービスの一式を提供する。鉄鋼のあらゆる分野を網羅するだけでなく、非鉄分野部門にも最新の圧延ソリューションをお届けします。プライメタルズテクノロジーズは三菱重工グループで、株式会社日立製作所、並びに株式会社IHIが資本参加している三菱日立製鉄機械と、シーメンス・グループのシーメンスVAIメタルズテクノロジーズ社の統合により発足した。出資比率は三菱日立製鉄機械が51%、シーメンスが49%。従業員数は全世界で約7000人。