エンジンは水冷4気筒だが、わざわざ空冷っぽいフィンが刻まれカバー類もZ1風のアレンジが施されるなどこだわりが見て取れる。シャーシの基本骨格もZ900とほぼ共通だが、伝統のスタイルを再現するためにスチール製トラスフレームの構造の一部やブレーキまわり、マフラーやホイールデザインなども丸ごと変更しているし、もちろんLED単眼のフェイスまわりやタンク、テールカウルなどの外装パーツもすべて新設計である。つまり、最新スポーツモデルの中身にZ1の香りぷんぷんの見た目が与えられたのがZ900RSなのだ。
……という理解を持ってこのマシンに乗るとすべて納得がいく。なにせ走りがキレているのだ。まずエンジンの吹け上がりが凄い。軽くブリップしただけでタコメーターの針は鋭く跳ね上がる。排気音は期待どおりの迫力の重低音だ。節度感のあるシフトをローに入れると、クラッチを放すだけでZは力強く走り出した。
スロットルは軽く、レスポンスは極めて鋭い。試しにガバッと開けてみると、間髪を入れずフロントが浮いてくる。低中速からなみなみとトルクが出ている証拠だ。路面温度がかなり低かったので慎重にウォームアップしながら徐々にペースアップしていくが、マシンが走りたがっているのが伝わってくる。「よ~うし!」とさらにスロットルを開けていくと、ウォーッッッという咆哮とともに軽やかに加速していく。「速い!」と思わず呟いてしまった。かつてのZ1とは比較にならない俊敏な加速フィールは明らかに現代のマシンだ。
2速で最終コーナーを立ち上がりすぐに3速、続けて4、5、6とギヤをかき上げていくが、ホームストレート中ほどを過ぎたところでメーターの針は190㎞/hで固定。リミッターがなければまだまだ余力がある感じだ。
■Z900RS 諸元■
・全長×全幅×全高:2,100mm×865mm×1,150mm
・軸間距離:1,470mm
・最低地上高:130mm
・シート高:800mm
・キャスター/トレール:25.0°/98mm
・エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ
・総排気量:948cm³
・内径×行程/圧縮比:73.4mm×56.0mm/10.8:1
・最高出力:82kW(111PS)/8,500rpm
・最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm
・始動方式:セルフスターター
・点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)
・潤滑方式:ウエットサンプ
・エンジンオイル容量:4.2L
・燃料供給方式:フューエルインジェクション
・トランスミッション形式:常噛6段リターン
・クラッチ形式:湿式多板
・ギヤ・レシオ:1速2.916(35/12)/2速2.058(35/17) /3速1.650(33/20) /4速1.409(31/22) /5速1.222(33/27) / 6速0.966(29/30)
・一次減速比/二次減速比:1.627(83/51) / 2.800(42/15)
・フレーム形式:ダイヤモンド
・懸架方式:前テレスコピック(インナーチューブ径 41mm)/後スイングアーム
・ホイールトラベル:前120mm/後140mm
・タイヤサイズ:前120/70 ZR17M/C(58W)/後180/55 ZR17M/C(73W)
・ホイールサイズ:前17M/C×MT3.50/後17M/C×MT5.50
・ブレーキ形式:前デュアルディスク300mm(外径)/後シングルディスク250mm(外径)
・ステアリングアングル (左/右):35°/ 35°
・ 車両重量:215kg
・使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
・燃料タンク容量:17L
・乗車定員:2名
・ 燃料消費率(km/L):28.5km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)/20.0㎞/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)
・最小回転半径:2.9m
・メーカー希望小売価格:(キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ)1,328,400円/(メタリックスパークブラック)1,296,000円