AKEUが拠点を置くドイツでは、温室効果ガス排出量の大幅削減を原子力発電全廃と並行して進めるために、総エネルギー消費に対する再生可能エネルギーの導入目標を設定し、それを達成する手段のひとつとして、再生可能エネルギーで発電した電力を水素、さらにはメタンやメタノール等に変換して交通分野等での燃料として活用すること、またその原料として産業環境から排出されるCO2を活用することが検討されている。
旭化成は、イオン交換膜と食塩電解システムの技術・ノウハウを生かして、再生可能エネルギーで発電した電力から水素を製造するための、低コストでエネルギー変換効率が高いアルカリ水電解システムの開発に取り組んでいる。
このたび、AKEUはEUの研究プログラムの一環であるALIGN-CCUSプロジェクトへ参画し、当社のアルカリ水電解システムを提供することで、他のヨーロッパパートナーと協力してドイツでの実証を進めていくこととなった。
ALIGN-CCUSプロジェクトは、ヨーロッパにおける国際的な31の研究機関と企業とのパートナーシップで行なう、CO2回収、利用および貯蔵(CCUS:Carbon Capture, Utilisation and Storage)に関するプロジェクトであり、EUと参加国(ノルウェー、イギリス、ルーマニア、ドイツ、オランダ)からの補助金を活用している。2017年から2020年までの3年間で、6つのワーキングパッケージに分かれ、CO2回収技術の最適化・コスト削減、大規模CO2輸送、オフショアでの安全なCO2地下貯蔵、CO2活用技術の開発、CCUSの社会的啓蒙のサポートを検討する。
AKEUが参画するワーキングパッケージ(WP4)は、産業環境で排出されるCO2の回収、水素製造、他エネルギーへの転換、およびこれらトータルプロセスの設計と構築に重点を置いている。また、回収されたCO2を水素と反応させて製造されるメタノールやDME等の燃料としての潜在的な市場需要の確認、適用可能性および環境性能を評価する。
具体的には、火力発電所で回収したCO2とAKEUが提供するアルカリ水電解システムで得られる水素を反応させ、グリーンエネルギー(メタノールやDME等)に変換することで、交通分野や発電分野における燃料として活用し、カーボンフットプリントの削減に取り組む。
旭化成では、40年以上の歴史を有するイオン交換膜法食塩電解事業で培った技術を基に、低コストで水素を製造するアルカリ水電解システムの開発を進めている。旭化成の水電解システムは、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用してグリーン水素を製造し、化石燃料を利用したエネルギー社会からの転換を加速するものだ。
旭化成は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、神奈川県横浜市に設置した実証機サイズの大型水電解システムで、10,000時間を超える安定的な稼働を実現している。再生可能エネルギーを水素に変換するエネルギー効率は90%と世界最高レベルであり、1万キロワットの電気を使い、常温常圧で1時間当たり2000m3の水素を製造できる。これは2年間燃料電池車が走行できる量に匹敵する。
また、本プロジェクトに先駆け、2017年度中にドイツ・ヘルテン市に再生可能エネルギーを用いたアルカリ水電解システムの実証機を設置する予定であり、ドイツでのマーケティング活動も進めていく。