PHOTO&TEXT:牧野茂雄
NSK(日本精工株式会社)が技術発表したバリオリンクサスペンションは、その名のとおりサスペンションリンクの長さ可変にするシステムだ。部品構成は3点。通常のサスペンションアームと同じ働きをするアーム。そのアームを押し/引きしてボディ側取り付け部分から車輪までの長さを変えるボールねじ機構。このアームとボールねじ機構を収めるケースである。
モーターの回転を90度ひねって直線方向の動きに変えるボールねじはNSKが得意とする機構であり、近年の自動車用途では電動パワーステアリングや電動ブレーキなどに使われている。今回はこの機構を足回りに応用した。参考出品されたシステムは5本のリンクを持つマルチリンクサスペンションであり、NSKによると「もし、自動車に採用する場合はこの5本のリンクと通常のばね/ダンパーを使う」とのこと。
5本のリンクがすべて「長さ可変」であるため、車両進行方向に対して車輪の向きを変えることができる。つまり電動パワーステアリングの代わりになる。また、タイヤと地面の位置関係も自由に変更できる。トーイン/トーアウトは自由自在、対地キャンバーの設定も自由である。
たとえば、後輪サスペンションの後部リンクにこの機構を左右1本ずつ使うと後輪操舵ができる。しかも左右輪の切れ角を左右で変えられる。また、トー角も左右輪でそれぞれ別々に設定できる。どのように使うかは「目的に応じて」である。想像するに、自動運転時代に求められる正確な車両運動制御という分野でも有効だろう。
左右1本ずつ。あるいは左右2〜3本ずつ。場合によってはすべてのリンク。そのクルマにどのような性能・機能を与えたいのかによって、このシステムの構成は変わる。まだ研究段階だが、将来が非常に楽しみである。