会場となったSMBCホールは、満員。この分野の第一線がいまどうなっているか、という話は非常に面白かった。と言っても、「上記の領域」に関する知識がない者としては、正直言って難解だったのだが、少なくとも、この分野の「熱気」のようなものを感じることはできた。
最初の講演は国内最大級のAI研究拠点「AIPセンター」を率い、日本のAI研究をリードする杉山 将教授(理化学研究所革新知能統合研究センター センター長)による「限られた情報からの機械学習」
2コマ目は動画像処理、パターン認識・理解などの研究を深める藤吉 弘亘教授(中部大学工学部 ロボット理工学科大学院 工学研究科 情報工学専攻)による「分解して高速化-SVMからDNNのアクセラレーション」。 どちらも、数式は理解できなくても(すみません。力不足で)「最前線がどうなっているのか」「なにがテーマなのか」を知るための絶好の講演だった。
メインイベントとも言える金出武雄教授(カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授でデンソー技術顧問)と加藤良文デンソー専務(技術開発センター センター長)によるトークセッションは、興味深い内容だった。 金出武雄教授は、「Kanade」の名前がついた画像解析法で、コンピュータビジョンの分野に革命をもたらした世界的先達。AIの分野でも活躍しているレジェンドだ。教授は自動運転の研究を1980年代半ばから始めていて、1995年にピッツバーグからサンディエゴまでの3000kmを自律走行車で走破しアメリカ横断を果たしている。 金出教授は「そのころのプロポーザルには、87年には道路に沿って走るRoad Followingを達成、88年には一般道での人や他車の認識が可能になり、91年にはいまのレベル5の完全自動運転のクルマが完成と書いてありました。楽観的でしたねぇ。自動運転の技術開発は私に言わせれば30年もかかってしまったという感じです」 という。 トークセッションのなかで金出教授は 「人間より自動運転のほうが上手に運転できるというは、ある意味当然のことです。私は、アメリカで暮らしている時間もあって約35年しか運転していません。私がやってきた運転経験の多くは、この中(頭を指して)に入っていますが、まだ一回も出合ったことのない場面は無数にあるわけです。みなさん一緒にデータをとったりしているということは、それぞれの運転経験、何千、何万、何兆キロもの運転経験を、全部蓄積していくことができる。私が学んだことを違う人に伝えるときに、頭の中身を転送する方法はありませんが、機械は転送することができます。ロボットソサエティーとして考えたら、ロボットソサエティーはトータルとしてものすごい運転経験があることになります。当然のことながら交通状況として起こりうるあらゆるすべて、少なくともいままで起こったすべてを経験したクルマを作ることができるはずです。だから、それができるようにならならければいけない」 と話す。 「車両のデータを収集するにしても一企業が集められるのはたかがしれています。みんなで、企業グループがノンプロフィット的な発想で、一緒に集めるべきです。作られたクルマからの情報をどんどんデータを採る、そういうイニシアチブがなければ。すぐにイニシアチブをとらないとドイツのメーカーに負けてしまうとかすぐに言うじゃないですか? そういうことを言わないで、全世界的の人のために「スーパーヒューマンドライバー」を作らなければならないのだから、そういう発想で音頭をとってやるぞ、とやってほしい」 これに対して加藤常務は 「いまは、データの収集は競争領域だ、となっているんです。明日からそういう活動をするとはすぐに言えませんが(笑い)、なるべくそういう方向へいくように努力していきます。努力することはお約束します」と応えていた。 「これだけクルマが走っているんだからクルマ全体が大センサーシステムなんです。社会の状態を常に知っているのは、クルマなんです。そういう発想が全体のシステムにないと」と話す金出教授。 トークセッションは、盛り上がり、「もっと聴きたい!」というところで終了した。 セミナー後半は、 技術講演「Mobility×IoT:データ科学が作る新しいクルマ社会 」 梶 大介さんDP-Mobility IoT推進室 サービス技術開発課 課長 技術講演「自動運転に向けた End To End 深層学習」 有江 浩明さん先端研究4部 AI研究室 AI研究1課 担当係長 の2セッションが行なわれ、終了した。