では一方の「ノーマルオープン制御」が最近のパワートレインで一般的なのはなぜかと言いますと、自動変速機と組み合わされていることがいちばんの理由です。一般走行中の軸出力を測ってみるとわかるのですが、クルマは低負荷域で走っていることが多く、その際の出力は数kW、よくて数十kWというところです。燃料消費を極力抑えたい昨今、出力が求められていないのにタービンに排気流を当ててまで排気抵抗を増やすのは得策ではありません。そこで普段はウェイストゲートを開いておいてそちらへ導流しておくわけです。急加速したいときには変速機が活躍。瞬時にローギヤレンジに変速することで軸トルクを稼ぎ、その間にエンジン回転が高まるからその頃には過給効果が得られるという寸法です。
しかしMTが主体であろうパワートレインにはこの手が通用しません。明らかなターボラグはドライバビリティにとってネガ要素ですから、常時タービンを回しておくノーマルクローズ制御に踏み切ったわけですね。ですからもっぱらの興味は、スイフトスポーツの6AT仕様。これらをひっくるめて考えると、一定速からガバッとアクセルを開けると、ノーマルオープン車の場合はダウンシフトして加速するところ、もしかするとギヤはそのままでエンジン回転を上げていき加速するのかな──などと期待。ぜひ実車で試してみたいです。
ターボついでに、K14Cはシングルスクロール型ターボチャージャーを用いている模様。4気筒ですと1番4番/2番3番のふたつの流路で排気干渉が起きてしまいターボラグを招いてしまう、だからふたつのポート/マニフォールドを完全分流し、それぞれの排気流が干渉することなくタービンに流入する──とは、海外勢のターボエンジンが搭載するツインスクロール型ターボチャージャーの効能としてよく目にしました。ただしこのツインスクロールターボ、猛烈に高いそうです。ポート側の設計と製造にもお金がかかるのは明白で、さらにヘッド内蔵エキマニなんてことになればさらなる高騰は必至です。
先日デビューしたシビック・タイプRが載せているK20C型エンジンも、シングルスクロールターボを用いています。その理由は、高回転域においてはふたつの流路が排気干渉になるから。なるほどの理由ですね。K14Cもスポーツエンジンを標榜するなら同じ目的かもしれません。低速域の排気干渉は、ホンダK20C型は吸排気ともに備わるVVTと排気側可変リフト機構で排気タイミングをコントロールし抑えているとのこと。
K14Cも、欲を言えば応答性に優れる電動VVTを使いたいところだけどこれも猛烈に高価、吸気側にのみ(おそらく油圧の)ミクニ製VVTが備わっていますが、排気ポート設計と合わせてどのようなカムフェーズ制御としているのかが気になります。ちなみにマツダはSKYACTIV-G 2.5Tで、ダイナミック・プレッシャー・ターボシステムというシングルスクロールターボの性能を余さず引き出すポート設計/デバイスを搭載しています。