前回のボディ編に続いて今回は3代目カイエンのパワートレインに関して解説しよう。新たに開発されたセンターターボレイアウトの採用など、パワー&トルクアップを実現したその背景に迫る。




REPORT◎山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

ポルシェが新型カイエンに、まずラインアップしたエンジンは3タイプだ。スタンダードな「カイエン」には2995ccのV型6気筒ターボ、「カイエンS」には2894ccのV型6気筒ツインターボ、そしてトップモデルとなる「カイエン・ターボ」には、3996ccのV型8気筒ツインターボの各エンジンが搭載される。




この中で最も注目されるのは、新型カイエンのために新開発された直噴式のV型8気筒ツインターボエンジンだろう。センターターボレイアウト、すなわちVバンクの中央にツインターボのシステムをコンパクトに搭載するレイアウトを採用することで排気経路を短縮することに成功。それによってターボラグを最小限に抑えた、レスポンス性に優れたエンジン特性を実現しているのが大きな特長だ。冷却や潤滑システムなどにも及ぶ、非常に広範囲な高効率化へのアプローチも見どころのひとつである。




550psの最高出力、そして770Nmの最大トルクは、先代のターボよりも30ps&20Nmの性能向上となった。最大トルクの770Nmは、1960~4500rpmで完全にフラットに発揮され、燃費性能は11.9~11.7ℓ/100kmを実現。272~267g/kmとされるCO2排出量(いずれも欧州複合サイクル)も、その動力性能から考えれば相当に魅力的な数字といえるだろう。




一方、カイエンS用のV型6気筒ツインターボ、そしてカイエン用のV型6気筒ターボも、それぞれ最高出力&最大トルクが440ps&550Nm、340ps&450Nmと、ポルシェ製のプレミアムSUVとして必要十分な性能を見せる。

Vバンクの中央に位置するタービン。
タービンは可変ジオメトリーのVTGを採用。


トランスミッションは、全モデルが最新の8速ティップトロニックSで、最大で1100Nmものトルクを受け入れる能力を誇る。フロントアクスルのデファレンシャルは、このトランスミッションに一体化され、ギア比はターボのみが異なる設定となるが、7速と8速がオーバードライブとなることは共通している。駆動方式は、電子制御多板クラッチを使用したPTM=ポルシェ・トラクション・マネージメントシステムによるフルタイム4WD。リヤアクスルデファレンシャルも新型カイエンのために新設計された。

ポルシェから発表された、新型カイエン各車の運動性能はどれも刺激的なものばかりだ。トップモデルのターボは、車重が2175kgに達するにもかかわらず、0→100km/h加速で3.9秒(スポーツクロノパッケージ装着車)、最高速は286km/hを達成。Sとカイエンも同様に、4.9秒&265km/h、5.6秒&245km/hという数字を誇る。もちろんそれは、ポルシェが新型カイエンを開発するにあたり要求した性能の、ごく一部分のみを象徴するものだ。プレミアムSUVたるカイエンには、いつの時代もオンロードでの運動性能のみならず、オフロード・パフォーマンスや長距離移動における快適性、あるいはトレーラーとしての性能なども期待されている。ポルシェによれば、新型カイエンに搭載されるパワーユニットは、今後さらに拡充されていく計画とのこと。ディーゼルやPHEVなどを含め、最終的にモデルラインアップは前作と同様に非常に幅広いものになるだろう。

【動画】新型カイエンのエアロダイナミクス

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【連載】ポルシェ・カイエン 全解説②パワートレイン編《エアロダイナミクス動画あり》