今回試作したのは容量50AhのEV用で、急速充電に要する時間はわずか6分、従来のリチウムイオン電池を搭載したコンパクトEVと比較して走行距離は3倍の320kmにまで延長することを可能にした。また、チタンニオブ系酸化物を用いるメリットは超急速充電と高エネルギー密度だけではなく、低温充電による電池の劣化や短絡の原因となる金属リチウムの析出が無いことで、耐久性と安全性を高めることにもある。東芝独自の合成方法によって結晶配列の乱れが少なく、結晶構造中にリチウムイオンを効率的に供給できるため、現行のSCiBの特徴である高い安全性と急速充電特性を維持しながら、負極容量(単位体積あたりの容量)を黒鉛に比べ2倍に増加させることが可能になった。
また、次世代SCiBは現行SCiBの長寿命、耐低温特性を継承し、マイナス10℃の低温環境下における10分間の超急速充電を確認。試作電池を用いた実証では、充放電を5000回繰り返しても90%以上の電池容量を維持したという。
現行SCiBは負極材にチタン酸リチウムを採用して、自動車やバス、鉄道などの乗り物や、エレベーターなどの産業機器、発電所などのインフラ設備など多方面で活躍し実績は豊富だが、今回試作に成功した次世代SCiBはチタン酸リチウムと比べ約2倍のエネルギー密度を実現している。安全性や長寿命、急速充電性能で多くの実績をもつ現行SCiBの大幅な性能アップを果たす次世代SCiB。2019年度の製品化を目指すというから、一般普及にかかる期待は大きい。