ブースのカウンターに寄って情報を得ようとすると、日本語で話しかけられた。「?」まったく知らなかったのだが、ASPARKは日本のメーカーだったのである。
話を聞いてみると、ASPARKは、2005年にエンジニアの派遣会社として設立された会社だ。電気自動車開発やシステム開発、大手メーカーへの技術力提供などを行なってきたという。タイで唯一の日系エンジニア専門紹介会社でもある。本社は大阪にある。
社長である吉田眞教氏が、ものづくりがしたくて立ち上げた会社だという。会社を設立して1年目からクルマを作れるはずもなく、資金、ノウハウもない。そこでまずはエンジニアの人材派遣会社を作り、外部のエンジニアを協力パートナーにして資金や人材を集めていったそうだ。
今回のOWLは、2014年からプロジェクトがスタートしている。開発に協力しているのは、イケヤフォーミュラだ。
自動車を開発する際、従来の内燃機関を搭載するクルマでは部品点数も多く、生産も難しい。そこで、開発するモデルはEVにすることにした。製造するとなると工場が必要になる。しかしASPARKが考えているのは、企画・開発の部分をASPARKが行ない生産は委託するという、いわはAppleのようなものづくりだ。
自動車を量産して販売するのはハードルが高い。そこで少量生産モデルをターゲットとした。少量生産でビジネスベースに乗せるには、高価格でないと成立しない。高価格であれば、無名の自動車ベンチャーが名を売るためには「ナンバー1」という勲章が必要になる。電気自動車の最大の特徴は大きなトルクだ。トルクを有効に活用できるのは、加速。
それで、0-100km/h加速2.0秒という驚異的な加速力を開発目標に据えた。
それをひっさげて打って出るのだが、マーケットを日本に限定してはビジネスが成り立たない。そこでお披露目の場所として東京ではなくフランクフルト・モーターショーを選んだというわけだ。
2年後からの販売を予定していて、価格は300万ユーロ、およそ4億円。最大50台の生産・販売を目指している。
展示したモデルと同じクルマが現在日本でテスト中だという。今後はJARI城里のテストコースなどでテストをしていくという。展示モデルでは法規に適合していない部分もあるので、それらはこれから開発をすすめていくという。まずは欧州基準への適応を考えている。
エネルギーストレージにはキャパシタとリチウムイオン電池の併用を考えている。キャパシタは回生用ではなく駆動にも用いる。またキャパシタは、JMエナジー製のリチウムイオンキャパシタを使う。
デザインを担当するのは、株式会社アッシュインスティテュート代表の大津氏、基本デザインは吉田社長が考え、大津さんが形にするという方法を採ったという。
取材しているうちに、吉田社長が現れた。
吉田社長にOWLについて訊いた。
ー社長の夢としてこれをやりたかったですか?
吉田 これもやりたかったんですが、これがゴールというわけではありません。これを成功させて新しいモノも作りたい。これの次にも作りたいものがあるんです。クルマ以外のものも。乗り物、たとえば飛行機や医療機器なんかもそうですね。そういったいままでなかったものを作りたかった。その第一弾がこれです」
ーどんな開発体制なんでしょう?
吉田 設計はうち(ASPARK)。製造は全部委託する。アップルのように頭脳は作るけれど、実際の製造は別のところに請け負ってもらう、というふうに動いています。
ーOWLはカーボンモノコックですか?
吉田 これはパイプフレームです。今後、フレームで剛性がとれるかテストをしていきます。できるだけ軽く作りたいのです。
ー価格は、300万ユーロ。4億円ですね?
吉田 あれも予定価格です。最初は100万ドルくらいのイメージだったのだが、こだわって開発していくととてもそれでは収まらなくなってきました。さすがに常識的な範囲で、決めました。10億では現実味がないんで。できれば3億円くらいで売りたいな。というにがあったのですが、えいやーで発表しました。
ASPARK OWL SPECIFICATIONS
ボディサイズ
全長×全幅×全高:4830×1935×990mm
ホイールベース:2757mm
トレッド:F1603/R1552mm
車重:850kg
ボディ重量:50kg
定員:2名
パフォーマンス
0-100km/h加速:2.0秒
航続距離(目標):150km
最高速度:280km/h
最高出力:320kW
最大トルク:764Nm
バッテリー
スーパーキャパシタ+リチウムイオン電池
総電圧:300V
最大電流:2000A
ドライブトレーン
最終減速比:4.44
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:F 275/30R19/R 335/30R20