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海の上に浮かぶ波の花は、白いような茶色っぽいような…。でも、アワといっても、甘いホイップクリームのような「おいしそう」な感じはしません。どことなく、煮物を料理しているときのアクのような雰囲気です。
このアワの正体はプランクトンです。海中のプランクトンや海藻類の粘液が、極寒の日本海の荒波にもまれ、岩に打ちつけられて白い波の花となり、海に浮かぶのです。
アワは発生してすぐは白くてきれいなのですが、時間が経つと、岩に付着している細かい砂粒などが混ざって、徐々に茶色っぽくなります。まるで、真っ白い生クリームに、コーヒー味のクリームが混ざっていくような感じです。
波の花に出会うには、いくつかの条件が重ならなければなりません。
見ごろの時期は11月~2月。厳寒の冬の海です。
風速は13m/s以上。風が強いことが必須です。
波の高さは4m以上。波も高くなければいけません。
風は北北西または北。北からの強い風が条件のようです。
気温は0℃以下。
時間は早朝がベスト。
強い風によって波が岩にたたきつけられ、海水の温度が下がることによって、プランクトンや海藻の粘膜の粘りが強くなってアワとなるので、波の花は一定の条件がそろわなければ見ることができません。ただ、これらすべての条件をクリアしなければ絶対に見られないということでもなく、ある程度そろえば、そこそこ見ることができるようです。
波の花は日本海側の海でよく見られます。有名なところでは石川をはじめ、新潟、秋田などで発生します。
北海道では留萌(るもい)から石狩にかけての海岸でよく見られます。寒さが厳しい冬に海が大荒れになると、海水が岩に打ちつけられ、波の花が岩場に大発生します。特に、留萌の黄金岬は夕日の名所でもあるため、多くのカメラマンが訪れます。
留萌から石狩にかけての国道のうち、海のすぐ横を走る区間では、強風に乗って波の花が飛んできて、国道が波の花だらけになることもあるそうです。
少しだけ発生する白いアワだと、どことなくカワイイ感じがする波の花ですが、大量に発生し、風に乗って道路や住宅のほうまで飛んでくると、少々厄介者となってしまいます。
波の花はプランクトンと海藻のネバネバです。そして、塩分を含んでいます。それが車や家の窓ガラスにつくと単に汚れるだけでなく、サビの原因にもなります。また、洋服につくとシミになり、しかも、独特の臭いがします。観光客にとっては、アワが空を飛び、あたり一面真っ白になる光景は幻想的で美しく思えるかもしれませんが、地元の方たちにとっては、あまりありがたくないアワのようです。
〈参考:北海道留萌振興局「留萌の冬の風物詩 ~けあらし・波の花~」〉
〈参考:NHK CREATIVE LIBRARY 「波の花 強風で吹き飛ばされる」〉
〈参考:輪島観光ナビ「曽々木海岸・窓岩」〉
〈参考:『石川県大百科事典』、北国新聞社、2005〉
北海道の日本海で厳冬の時期にしか見られない波の花。その発生は気象条件によって左右され、いつでも出会えるとは限りません。もし撮影に訪れる際は、防寒着とカッパを持参し、風下に立たないことが賢明です。そして、波の花は海藻の粘液なのでヌルヌルしています。岩場で撮影するときは転ばないように気をつけてください。