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「土用の丑の日」でよく知られる「土用」は、雑節の一つです。
雑節とは、中国から伝わる二十四節気に加え、季節の変化をさらに細かく示す目印として作られたもので、節分や八十八夜、半夏生などもそれにあたります。
その中で、土用は年に4回ある、変わった雑節です。
土用の由来は、中国の戦国時代(紀元前4-5世紀ごろ)に誕生した五行思想(五行説)です。五行思想とは、あらゆる物は木・火・土・金・水の5つからなるとする思想で、4つの季節も例外でなく5つに分けようとした結果、できたのが土用です。
春=木、夏=火、秋=金、冬=水とし、余った「土」はそれぞれの季節のおわりの1/5をとって割り当てられました。
現在の雑節の土用は、春土用は4月17日ごろ、夏土用は7月19日ごろ、秋土用は10月20日ごろ、冬土用は1月17日ごろ。
土用の明けは立春・立夏・立秋・立冬の前の日です。
つまり、「土用」は年に4回、二十四節気の立春・立夏・立秋・立冬の前に、約18日間ずつあるのです。
土用といえば、夏の「土用の丑の日」にウナギを食べるという方は多いのではないでしょうか。
夏の「土用の丑の日」は、毎年日にちが変わります。
丑の日とは、日にちを干支で割り当てたとき、丑にあたる日のことで、土用の丑の日は、土用の期間中の丑にあたる日です。
丑の日は12日ごとのサイクルでやってくるため、約18日間の土用の期間中、年によっては2回やってくることがあります。2回となる場合は、1回目の土用の丑の日を「一の丑」、2回目を「二の丑」と呼んでいます。
2025年の夏の土用期間は7月19日(土)から8月6日(水)まで。丑の日は2回あり、一の丑が7月19日(土)、二の丑が7月31日(木)です。
夏の土用の丑の日にウナギを食べるようになったのは、諸説ありますが、江戸時代、様々な肩書を持つ学者である平賀源内の発案が始まりという説が有力です。
当時、平賀源内が、夏にウナギが売れず困っていたウナギ屋に「本日土用丑の日」という張り紙をして宣伝することを勧めたところ、ウナギ屋は大繁盛。やがて多くのウナギ屋がマネをするようになり、夏の土用の丑の日にウナギを食べる習慣が根づきました。
古来より丑の日には“う”のつくものを食べると縁起がよいとされ、無病息災を願う習わしがあったことも背景にあったようです。
土用は、中国の五行思想に由来し、年に4回、各季節の変わり目にあるとお伝えしました。土用の丑の日も、各季節にあるのですが、「丑」の日が注目されるのは夏の土用です。
土用の期間、干支で割り当てられた日のうち、春土用は「戌(いぬ)」、夏土用は「丑(うし)」、秋土用は「辰(たつ)」、冬土用は「未(ひつじ)」の日に、それぞれの頭文字のつくものを食べるとよいとされています。
これは、干支で12か月を割り当てたとき、各季節の土用にあたる干支とは反対の干支をとっています。反対をとるのは、五行思想の概念です。
例えば、春土用の場合。春土用にあたる干支は「辰」ですが、その反対、秋土用にあたる干支の「戌」の日に“い”のつくものを食べるとよいということです。
さらに、五行思想では、春は青、夏は朱(赤)、秋は白、冬は玄(黒)と、それぞれの季節に色が定められていて、その季節の色と反対の色のものを食べるのもよいとされています。
各季節の土用に食べるとよいものをまとめると、次のようになります。
〇春土用…「戌の日」に“い”のつくものと白いもの
いちご、いわし、いくら、芋、いか、豆腐、かぶ、大根など。
〇夏土用…「丑の日」に“う”のつくものと黒いもの
ウナギ、梅干し、うどん、瓜(胡瓜・きゅうり、苦瓜・ゴーヤ、西瓜・すいかなど)など。
〇秋土用…「辰の日」に“た”のつくものと青いもの
玉ねぎ、大根、たこ、青魚(さんま、さば、いわしなど)など。
〇冬土用…「未の日」に“ひ”のつくものと赤いもの
ひじき、ひらめ、りんご、かに、パプリカ、トマトなど。
土用は、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期なので、できるだけ旬の食べ物を取り入れて、健康に過ごしたいですね。
土用にしてはいけないとされることが大きく3つあります。
①土を動かすこと
土用は、土の神様・土公神がやどる時期とされ、土を動かす作業は避けたほうがよいとされています。具体的には、土いじりや草むしり、井戸掘り、新築の基礎工事、増改築、地鎮祭などです。
ただ、土用の期間でも、土の神様・土公神が離れて、土を動かす作業のできる日があり、その日のことを「間日(まび)」といいます。
各季節の間日は、干支で割り当てられた日のうち、
春土用は「巳」「午」「酉」の日、
夏土用は「卯」「辰」「申」の日、
秋土用は「未」「酉」「亥」の日、
冬土用は「寅」「卯」「巳」の日です。
2025年の夏の土用期間の間日は、
7月21日(月・祝)、22日(火)、26日(土)、8月2日(土)、3日(日)となっています。
②新しいこと
土用は季節の変わり目で体調を崩しやすい時期。環境が大きく変わることのないよう、静かに過ごしたほうがよいと考えられていました。
このため、土用期間は、転職・就職、新居の購入、結婚・結納、開業・開店など新しく始めることは避けたほうがよいとされています。
③移動すること
土用期間は、すべての方角が良くないと考えられ、旅行や引っ越しなど場所を移動することも避けたほうがよいとされています。
特に、「土用殺」と言われる「凶」方位に注意が必要です。
各季節の土用殺は、春土用は「南東」、夏土用は「南西」、秋土用は「北西」、冬土用は「北東」です。
土用には、様々な言い伝えがあるようです。
気になる方は、土用の期間をなるべく避けるとよいでしょう。
土用のつく言葉が、夏の土用の過ごしかたのヒントになります。
〇「土用干し」
まずは、「土用干し」です。
土用干しとは、夏の土用の時期に行われる行事で、着物などの衣類や書物、梅干し、田んぼを干すことです。特に、衣類を干すことを「虫干し」といいます。
梅雨が明け、晴れの続く日に、衣類や書物を陰干しして風にあてることで、カビから守ることができます。
また、梅干しは干すことで保存性が高まり、風味が増します。
田んぼは、水を抜いて土にひびが入るくらいまで乾燥させ、稲の成長を促すのだそうです。
〇「土用餅」・「土用しじみ」
次に、土用のつく食べものが「土用餅」と「土用しじみ」です。
土用餅は、いわゆるあんころ餅で、夏の土用の入りに食べると暑気あたりをしないといわれています。
土用しじみは、土用の時期にとれるしじみのことで、身が大きく栄養が豊富です。
夏バテ予防を意識しながら、しっかり栄養をとることが大切ですね。
〇「土用波」
最後に、気象に関わる土用のつく言葉で「土用波」があります。
土用波とは、夏の土用に発生する大きな波のこと。波の発生原因の多くは、日本から数千kmも南に離れた台風周辺で発生したものが日本の沿岸まで伝わってきたことによるものです。
夏の土用期間のころは、台風の発生が多く、大波には注意が必要だと言われていました。自分のいる場所が晴れていたり、風が弱かったりしても、大きな波が発生することがあります。台風がはるか遠くの海上で発生している場合でも、海に近づく際は十分な注意が必要です。
子供たちの夏休みと重なりますので、海水浴などへお出かけの際は、海の天気を確認するようにしてください。