各地でマラソン大会が多く開催される季節ですね。フランスでも、ランニングは年々人気を増しています。
この記事では、フランスのマラソン文化について、ブームのきっかけやその目的、ランナー構成の変化などについて日本との比較を交えながら紹介します。

さらに、気象条件がマラソンに与える影響や、フランスと日本で異なる最適なマラソンシーズンについても解説します。
フランスで最も有名なマラソン大会や、フランス特有のユニークな大会についても取り上げます。


フランスと日本、各国のランニング人気を比較

近年、フランスではかつてないほどランニングが人気です。
ランニングを始めたり、走る回数を増やしたきっかけは、2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために実施されたロックダウンだという人がとても多いそうです。

2024年4月に発表されたデータによると、20歳以上のフランス人のうち、4人に1人(25%)にあたる約1250万人もの人がランニングを楽しんでいるそうです。

そのうち約800万人は、少なくとも週に1度はランニングをするなど、多くの人が日常生活にランニングを取り入れています。

以前は男性ランナーの方が多かったのですが、女性ランナーも徐々に増加し、今では男女比はほぼ同じくらいです。

実施したアンケートの結果によると、ランニングをする目的は主に健康維持のためで、その最大のメリットは「メンタルヘルスに良い効果をもたらすこと」という回答が多かったようです。[※1][※2]
ランニングは、思い立ったときにすぐ行える手軽さが魅力です。仕事のお昼休みに走ってリフレッシュしたり、仕事の後に走ってストレスを解消することもできますね。

一方、日本では、2022年の調査によると、20歳以上の人のうち、ジョギングやランニングを少なくとも年1回以上行う人は約877万人(8.5%)でした。
そのうち約557万人(5.4%)は少なくとも週に1度はランニングをしているそうです。
割合でみるとフランスよりかなり低めですが、それでも多くの人が日常的に行っています。

コロナ前の2018年の実施率(年1回以上行う)は9.3%でしたが、コロナ禍の2020年には10.2%へと増加しました。この傾向はフランスと同じですね。
コロナ禍の1,055万人をピークに、2022年のランニング人口は877万人(8.5%)と、その後はやや減少しています。

性別でみると、男性の実施率は12.3%、女性は4.6%と、女性よりも男性の方が多い傾向にあるようです。[※3]


ランニングに最適なシーズンは?

マラソンを快適かつ効率的に走るためには、適切な気象条件が重要です。

2012年に「フルマラソンの記録に影響する環境要因」(Impact of Environmental Parameters on Marathon Running Performance)という学術論文が発表されました。
この学術論文では、ロンドン、ニューヨーク、パリなどの6つのマラソン大会のランナー約180万人を対象に、気温、湿度などの気象条件とゴールタイムとの関係を分析しています。
この調査では、フルマラソンのタイムに最も影響を与える要因は「気温」であると結論づけています。

この論文では、走力別にベストパフォーマンスを発揮できる気温を男女別に割り出しています。
例えば、フルマラソンを3時間30分目安に走るトップ市民ランナーレベルの男性では、6.02℃。その他のランナーも含め総合的に見ると、概ね6~8℃が最適だそうです。
想像よりも低く感じますが、調査した大会の出場者の多くが欧米人であることも影響しているかもしれません。

では、日々のランニングに最適な気温はどのくらいかというと、個人差もありますが、10℃から15℃程度と言われています。
この程度の気温であれば、身体が冷えて筋肉が硬直することもなく、走ることで発生する熱は空気が冷やして放散させてくれます。[※4]

季節でいえば春や秋が理想的で、これらの時期は気温や湿度が安定しており、過酷な気象条件が少ないため、多くのマラソン大会が開催されます。

このように気温から見ると、フランスでは春や秋がマラソンに最適なシーズン。最も有名なマラソン大会であるパリマラソンも毎年4月に開催されています。

一方、日本は梅雨や夏の高温多湿を避けた、秋から春先にかけてが理想的です。
東京マラソンは3月、大阪マラソンは2月など、この時期には日本各地でマラソン大会が開催されています。

適切な気象条件下でのマラソンは、ランナーにとって快適に走ったり、記録更新を狙ったりと、ランニングを最大限に楽しむことができますね。


フランス最大級のマラソンイベント「パリマラソン」

パリマラソンは毎年4月に開催され、世界中から約5万人のランナーが参加するフランス最大級のマラソン大会です。

フルマラソンの距離である42.195kmのコースは、パリの歴史的建造物や美しい景観を堪能できるルートとしても知られています。
スタート地点はシャンゼリゼ通りで、凱旋門を背にスタートします。コンコルド広場、エッフェル塔やノートルダム大聖堂など観光名所を巡りながらセーヌ河沿いを走り、エッフェル塔の近くでフィニッシュを迎えます。

毎年、パリマラソンの応募者はとても多く、定員を超える場合は抽選となります。
ランナーの国籍も多岐にわたり、日本を含む海外からの参加者も多数。2023年は約52,000人が参加したそうです。

一方、日本で最も有名な大会といえば東京マラソンですね。2023年には約38,000人が参加しました。
こちらも人気で、毎年応募者多数のため、抽選が行われています。両国ともに、都市型マラソンの魅力がその人気を支えています。

また、マラソン大会では、コースの途中にエイドステーションという場所が設営され、様々なドリンクや補給食が提供されていますが、フランスの大会では、ちょっと驚くものもあるんです。

日本の大会では、水分補給は水やスポーツドリンク、補給食は甘いものや炭水化物などが一般的です。
フランスのワイン作りが盛んな地方で開催される大会では、各所でワインも振舞われています。ワインを飲んでマラソンとは、倒れてしまわないか心配になりますが、とてもユニークですよね。

また、ブルゴーニュ地方の大会に参加した知人の話によると、名物である「牛肉の赤ワイン煮込み」も振舞われたそうですよ。

ところ変わればエイドステーションのラインナップも様々。
国内に限らず海外でも、旅行先でマラソン大会に参加してみるのもいかがでしょうか。走るだけでなく、その土地ならではの一味違った楽しみ方ができるかもしれません。

ランニングはシューズさえあればできる、手軽なスポーツです。近所の公園や川沿い、旅先のランニングスポットなど、そのコースは無限にあります。

日本では特に、快適に行えるシーズンは秋から春先までと長く、適切な服装を取り入れることで日常的に楽しむことができます。
何か運動を始めてみようと思われている方にも、ランニングはおすすめです。

私も以前は習慣的にランニングをしていましたが、長らく遠ざかっていました。健康維持とリフレッシュのためにもう一度ランニングを始めたいと思い、今年の3月にハーフマラソンに挑戦することにしました。
フランスのこの時期は寒さが厳しく、トレーニングも億劫になりがちですが、防寒対策をして励みたいと思います。


〈出典〉
[※1]L'UNION sport &cycle
https://www.unionsportcycle.com/accueil
https://www.unionsportcycle.com/les-actualites/2024-03-29/observatoire-du-running-2024

[※2]populationpyramid.net 世界の人口ピラミッド
https://www.populationpyramid.net/ja/フランス/2024/

[※3]笹川スポーツ財団
https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/data/jogging_running.html

[※4]UP RUN
https://up-run.jp/columns/columns9/

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 給水所にワイン!?フランスのマラソン人気と最適なシーズン