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明治初頭までの暦は太陰太陽暦でした。日付の移り変わりを太陰である月の満ち欠けで決めていたので、正確な季節をつかむことが難しかったのです。そこで季節の目安として太陽の動きを基にした「二十四節気」が作られました。
「二十四節気」は春・夏・秋・冬をそれぞれ「初」「仲」「晩」と3つに分け、さらに2つに分けて6分割し、1年を24に分けました。「立春」や「秋分」はおなじみですが、「清明」や「白露」などその時季にふさわしい二文字があてられています。1つの節気はおよそ15日、春夏秋冬はそれぞれ90日とされています。
基となった太陽の動きとは、地球から見て太陽が地球を一回りする1年の軌道、黄道をいいます。太陽が1周360°の黄道上のどこにいるかで季節が決まり、「春分」を起点とした角度を「太陽黄経」と呼びます。太陽黄経0°に到達したときが「春分」です。90°動くと「夏至」に、もう90°動き180°で「秋分」に、更に90°動いて270°で「冬至」に。そして再び0°に戻り春が巡ります。このように1年を通じて決まった動きをする太陽なら、季節を間違えることはありません。360°を24分割すると15°、1節気は太陽の黄道上の動き15°にあたるのです。
季節の移り変わるようすや風物を語っている「二十四節気」に感じるのは情緒や風情ですが、実は太陽の動きと時間が計算された、大変論理的なものなのだと理解できます。
家の間取り等、方角の善し悪しがよく取りざたされます。これも「五行思想」からきています。日常生活の中でも気づかないくらい、中国の思想は日本文化の底に根付いています。
中国の「五行思想」は「木・火・土・金・水」の5元素が万物を生じ万象を変化させるものである、という考え方です。この5元素が象徴する「気」や「働き」が「五行説」となって発達し、さまざまな方面へ展開されました。
五行は四季にも割り当てられ、「木」に「春」、「火」に「夏」、「金」に「秋」、「水」に「冬」となりました。春は生物の伸びゆくさまを、夏の暑さ、秋の稔り、雪降る冬のさまなどを考えると、なるほどと頷けるものがあります。残った中央の「土」には割り当てる季節がなかったため、四季それぞれに「土用」として18日間が振り分けられたということです。
こちらも太陽黄径で決まっています。「春土用」は27°、「夏土用」は117°、「秋土用」は207°、「冬土用」は297°から始まり、それぞれの季節は盛りを過ぎ終わりへと向かう時季となっています。
「土用」が割り当てられたのは季節の最後、新しい季節が立つ前です。春の「穀雨」から「立夏」へ、夏の「大暑」から「立秋」へ、秋の「霜降」から「立冬」へ、冬の「大寒」から「立春」へ。このように並べてみると季節の転換の大きさを感じることができませんか。季節の変わり目、それが「土用」と言えそうです。
「春土用」は4月の下旬から5月の始め。新入学や進学、入社、転勤など生活環境が大きく変わり、精神的な疲れを感じていらっしゃる方も多いかもしれません。また待ちわびた春のぬくもりに思わぬ寒さがぶり返すなど、気温の変化も身体にはこたえます。季節は太陽の動きと同じように少しずつゆっくりと進みますが、地球を育む自然の中では予期せぬ現象も起こりがちです。
さまざまな変化を越えて次の季節への橋渡しとなる「土用」は、立ち止まって深呼吸をする季と考えるのはいかがでしょう。特に現代の私たちはつい無理をしがちです。春はすくすくと成長するために穀物がたっぷりと恵みの雨をいただく時です。春爛漫の自然を楽しみながら身体と心を見つめ直し整えていく「春土用」にしてはいかがでしょう。
参考:
『日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典』ブリタニカ・ジャパン