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冬が来た! 肌で感じる朝晩の冷えこみや風の冷たさ、それよりも目に映る景色こそが冬を告げていると実感します。葉を落とし枯れ枝になってしまった木々、雨風に曝され色褪せ倒れてしまった草花など、気づけば景色はいつの間にか色を失っています。
もの寂しいのが冬の景色ですが、「この冬枯れの風景こそ秋に負けていない!」と宣言しているのが『徒然草』の作者・吉田兼好です。同書の第19段で冬の荒涼とした景色の中にある美しさを述べています。
その一つが冬の月。興ざめなものとして誰もが見向きもしないという常識をくつがえし、寒々と澄んで空にある冬の月の心細げなようすに感慨を深めています。皆さんは秋にばかり月の美しさを愛でますが、私は冬にこそ美しさを感じていますよ、と多くの人々に対抗する兼好法師ならではの視点が面白いですね。
薄の穂が光をうけて輝きながらふわふわと風に乗って飛んでいくようすもまた、冬の荒んだ景色の中で美しく感じられます。澄んだ空気のなかで寒いからこそ冴える美しさなのでしょう。わが身を置いたそれぞれの季節に、どんな厳しさがあっても美しさを見つけ出そう、と自然を観察する目を持つことは、季節を楽しむ心に通じていると気づかされます。
12月の楽しさは人とのふれ合いが増えることでしょう。長年のおつき合いには変わらぬ親しみをこめて、また今年特にお世話になった方へは感謝の心で、お歳暮やクリスマスプレゼントを贈ったり頂いたり。贈り物選びには親しさの距離感によって悩むことも多いですが、浮き立つ心に変わりはありません。
「師へ父へ歳暮まゐらす山の薯」 松本たかし
「あれを買ひこれを買ひクリスマスケーキ買ふ」 三村純也
12月を迎える喜びや満足感に溢れる顔が見えてきます。少ない言葉の中に季節の光景を切り取って見せる俳句の魅力が光ります。
街に華やぎをもたらすのはイルミネーションやライトアップ。そして忘れてはいけないのが赤と緑に白や金をあしらったワクワクを誘うクリスマスカラー。真っ赤なポインセチアにやわらかな色合いのシクラメンが、生き生きとした華やぎを醸しだします。喧騒と忙しさの中で味わう心の豊かさは師走の街に吹く風の冷たさを忘れさせてくれます。
「事納め」は陰暦12月8日に1年の農作業を終える行事として行われてきました。収穫という明確な終了がない仕事をしている人々にとっても、12月は1年の終わりとして区切りをつけたい気持ちにかわりはありません。職場ではなんとなく積んでしまった書類の整理、また家庭では後でとほったらかしてきた家事も気になります。やはり12月は絶好のチャンス、身のまわりをスッキリさせればやる気や元気も新たに湧いてきます。月初めから早め早めに手をつけるのがコツだそうです。
いよいよ押し詰まると開かれるのが「歳の市」。注連縄に門松、玄関飾りと新しい年の準備が始まり時の流れはいっそう足早に感じられます。今年にけじめをつけながら新しい年を待つ12月は「春待月(はるまちづき)」とも言われます。冬の中にも心を澄ませ春への期待を持つこの時季こそ大切に過ごしていきたいですね。