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チョキは「チヨコレイト」、パーは「パイナツプル」、グーは「グリコ」。階段などでじゃんけんをして、勝った人が、自分の勝った手の文字数分だけ進めるという遊び。ほとんどの人が子どものころに体験したのではないでしょうか。
この遊びは「じゃんけんグリコ」と言い、発祥は戦前とも言われています。正式な(?)ルールなどは、江崎グリコのホームページなどでも公開されています。
でも、「じゃんけんグリコ」という遊びなのに、北海道ではなぜか「グリコ」という名称は使わずに、「グスベリ」と言って遊んでいた人も多いと思います。道南では「グスペリ」と言っていた人もいるのではないでしょうか。
グーを「グリコ」とは言わずに、なぜか「グスベリ」。まるで、何かの呪文のようにも思える「グスベリ」という不思議な言葉。この正体はいったい何なのでしょうか。
「グスベリ」という不思議な言葉。実はこれは、「グースベリー」という植物の名前を縮めた呼び方なのです。
英語で表記すると「gooseberry」。さまざまな品種があり、緑色や赤色の実がなりますが、大きく分けて、セイヨウスグリとアメリカスグリに分けられ、これらを総称してグースベリーまたはグーズベリーとよびます。
前者のセイヨウスグリのほうは、うどんこ病などの病気に弱いため、北海道や冷涼な気候の土地でないと栽培が難しいといわれています。つまり、北海道で使われている「グスベリ」という呼び方は、グースベリーのうちのセイヨウスグリのほうだと思われます。
北海道で暮らす筆者が子どものころは、近所の公園の脇に野生(?)のグスベリが生えていて、子どもたちはそれを摘んで食べていました。まだ緑色のその実はとても酸っぱくて、グスベリといえば、「酸っぱい味」が真っ先に思い出されます。
最近になって、それがグースベリーというベリー系の実だったことがわかり、とても驚きました。グスベリは本名ではなかったのです。子どものころ、緑色の時に食べてしまわずに、赤くなるまで待っていれば、もしかしたらグスベリの思い出は「甘くておいしい実」となっていたかもしれません。
グースベリーの旬は6月中旬から8月にかけて。ちょうど今ごろがおいしい季節です。日本には欧米などからの冷凍ものが輸入されますが、国産は北海道や長野などでわずかに栽培されていて、生のフレッシュなグースベリーが手に入ることもあります。実が赤くなったらジャムにして食べるのが一般的ですが、欧米ではガチョウ(つまりグース)料理のソースとしても使われます。
子どものころはその辺に生えていたグスベリですが、今ではなかなか手に入らない、貴重なフルーツとなってしまいました。
参考
NHK出版「みんなの趣味の園芸」:グーズベリーの基本情報
旬の食材百科:グースベリー
江崎グリコ:じゃんけんグリコをはじめよう
じゃんけんでグーを出したとき、グリコだと3歩しか進めませんが、グスベリだと4歩進むことができるので、ちょっとお得な気がします。ちなみに、北海道ではじゃんけんをする時、「じゃんけんぽん」ではなく、「じゃんけんしょ」と言います。
「じゃんけんグリコ」は、北海道のグスベリ以外にも、チョキやパーでも違った言い方をする地方がたくさんあるようです。あなたの住む地域でも、グリコ、チヨコレイト、パイナツプル以外の言い方で遊んでいませんでしたか?