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北海道十勝の東北部に位置する足寄町(あしょろちょう)。歌手の松山千春さんの出身地としても有名なこの土地には、日本一大きなフキ「ラワンぶき」が自生しています。
ラワンぶきは背丈が3メートル、茎の太さは10センチにもなり、見上げるほどの巨大なフキを実際に目にすると、その大きさに圧倒されます。
日本で出回っているフキは、一般的に「フキ」とよばれているものと、背丈が2メートルにもなる大型の「アキタブキ」の2種類のみ。よく食べられているフキは前者のフキのほうで、足寄の巨大なラワンぶきは、アキタブキの仲間と見られています。
私たちが何気なく使っている「ラワンぶき」という呼び方ですが、実はこれは足寄町農業協同組合(JAあしょろ)が知的所有権、いわゆる商標を取得したものです。町ではラワンぶきを地域の特産物として大切に育ててきたため、全国的にも有名になりました。現在は自生だけでなく農場で、自然に近い形で栽培され、収穫・販売されています。旬は6月中旬ころ。直売所などでも購入できるようです。
ラワンぶきは2001年には北海道遺産にも選定されました。また、足寄町や農協、観光協会などでは、ラワンぶきの種苗などを足寄町以外に持ち出すことを禁止しています。北海道及び足寄町によって大切にされているラワンぶき。その大きさを一度、目にしてみたいですね。
ラワンぶきはアキタブキの仲間といわれていますが、なぜ足寄のフキだけがこれほど巨大になるのか、その謎を九州大学が解明しました。
九州大学農学部附属北海道演習林の智和(ちわ)准教授らによるグループは、足寄町とともに、なぜ螺湾(らわん)地区のラワンぶきだけが巨大化するのか、2015年8月から調査を開始しました。その結果、川の水に含まれる栄養分が大きな要因であることを明らかにし、その研究成果は2021年、学術雑誌に公開されました。
ラワンぶきは、螺湾(らわん)川や茂足寄(もあしょろ)川に沿って自生しています。これらの上流には雌阿寒岳のふもとから流れる河川があり、この川の水には、植物が成長するために必要な窒素をはじめ、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウムといった栄養が、ほかの平均的な川より約10倍も多く含まれているというのです。
このように、川の栄養、つまり自然の恵みによってラワンぶきが巨大になることが、研究者たちの調査によって明らかになりました。この貴重な成果は2021年1月、国際学術誌「Scientific Reports」(オンライン版)に公開されました。
6月になりラワンぶきが旬を迎えています。足寄町にある農場では、高さが2メートルを超えるラワンぶきの収穫真っ最中。作業員たちが鎌を使って手作業で、1本1本ていねいに刈り取っているそうです。
刈り取られたラワンぶきは食用として販売されます。収穫は7月上旬まで。生産者によると、今年のラワンブキは軟らかくて食べやすいとのこと。道内のスーパーなどでも販売されています。もし、こんな大きなフキがプレゼントで届いたとしたら、贈られたほうはとてもビックリすることでしょうね。
参考
あしょろ観光協会:ラワンぶき
JAあしょろ:日本一おおきなフキ ラワンぶき
北海道十勝足寄町:ラワンブキが巨大化する原因を解明
九州大学:日本一巨大なフキ「ラワンブキ」はなぜ大きいのか? ―巨大化の原因解明に挑む―
北海道ファンマガジン:ラワンブキ、日本一の巨大フキ
十勝毎日新聞:足寄 ラワンブキ収穫始まる
北海道新聞2021年6月15日夕刊5面:水も滴るラワンブキ 足寄
まるで漫画やアニメにでも出てきそうなほど大きなラワンぶき。この巨大なフキは、味噌汁をはじめ、煮つけや和え物などで食べることができますが、大きいからといって大味なわけではなく、川の水のミネラルが豊富なせいか、味が濃く、歯ごたえもシャキシャキしています。あんな傘みたいな大きなフキを食べることができるなんて、ちょっと想像がつきませんね。