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1876(明治9)年5月10日、日本初の広域的な地質図が誕生しました。アメリカの地質学者ベンジャミン・スミス・ライマン(1835〜1920年)らが、「日本蝦夷地質要略之図(にほんえぞちしつようりゃくのず)」を作成したのです。また、1878(明治11)年のこの日、地質の調査を扱う組織として、「内務省地理局地質課」が設置されました。この歴史的な日を記念して、一般社団法人日本地質学会、産総研地質調査総合センターなど地質関係の組織・学会が、2007年(平成19年)に「地質の日」を制定しました。
地質は、地下資源、地盤、地形など、人間の生活と深く関係しています。この日は地質への理解を推進する日として、全国の博物館や大学などの研究機関によりイベントが開催されています。
※「地質の日」関連イベント
地球は46億年前に誕生したといわれています。壮大な「地球の歴史」を、その時代に生きた主な生物種族の生存期間で区切ったものを「地質時代」と呼びます。手がかりのひとつとなるのは、地層に含まれる化石です。その時代にどのような生物が存在し、どのような環境だったのかを、化石によって知ることができます。
地質時代の区分は「代」(古生代、新生代など)で、それが「紀」(カンブリア紀、白亜紀など)に分かれ、さらに「世」(更新世、完新世など)に分かれています。生物が爆発的に増加したのは、5億4100万年前の古生代・カンブリア紀のこと。そのため、地質時代を大きく分けると、「先カンブリア時代→古生代→中生代→新生代」という流れになります。
【地質時代と主な生物】
◆先カンブリア時代(46億年前〜)
→主な生物:細菌類、原核生物
◆古生代(5億4100万年前〜)
→主な生物:三葉虫、魚類、両生類
●カンブリア紀
●オルドビス紀
●シルル紀
●デボン紀
●石炭紀
●ペルム紀
◆中世代(2億5190万年前〜)
→主な生物:恐竜、爬虫類、アンモナイト
●三畳紀
●ジュラ紀
●白亜紀
◆新生代(6億6000万年前〜)
→主な生物:哺乳類
●古第三紀
●新第三紀
●第四紀
→主な生物:人類
・更新世
・完新世(1万1700万年前〜)
私たちが生活する現在は、最終氷河期が終わる1万1700年前に始まった「新生代・第四紀・完新世」の時代にあたります。地球の歴史のなかでは氷河期の終了がつい最近の歴史で、今の時代まで続いているという事実に驚かされますね。ところが近年、科学の分野でこのような定説を覆す議論がされているのです。それは一体なぜなのでしょうか。
「人新世(Anthropocene/じんしんせい、ひとしんせい)」とは、人類の経済活動によって地球環境や生態系に大きな変化をもたらした地質時代を想定しています。この用語をはじめて使ったのは、フロンガスによるオゾン層破壊の研究でノーベル化学賞を受賞したオランダの化学者、パウル・クルッツェン(1933〜2021年)です。クルッツェンが2002年に英国の科学誌『ネイチャー』で人新世の概念を正式に発表すると、この用語は多様な分野で使われるようになりました。現在、正式名称として定義されていないにも関わらず、経済思想や科学技術の分野でも注目を集めています。
氷河期が終了した約1万1700年前から現在まで続く「完新世」は、温暖な気候と安定した地球環境のなかで人類が大きく発展した時代でした。その時代が終わりを告げ、新しい地質年代に入ったということは何を意味するのでしょうか。地質年代は地層に含まれる化石や岩石の状態から区分しますが、人間の活動が地球に与える影響は恐竜を絶滅させた巨大隕石の衝突と同じレベルの痕跡を残す可能性があると考えられているのです。具体的な例では、二酸化炭素濃度の上昇によるオゾン層や生態系の破壊、森林伐採による動植物の絶滅、プラスチックやコンクリート、放射性物質の地上への拡散などがあります。
クルッツェンは、「人新世」という用語を通じて自分たちの活動が地球にどんな影響を及ぼしているかを自覚して欲しいと発言しています。「人新世」とは「人類の時代」という意味。人類が地球の歴史にどのような痕跡を刻むことになるのか、私たちは「人新世をどう生きるのか」を問われています。
参考サイト
産業技術総合研究所 地質調査総合センター
日本地質学会
ナショナル ジオグラフィック「地球環境を変える人類の時代」
参考文献
斎藤幸平『人新世の資本論』集英社新書