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「ふたご座流星群」は、ふたご座の2等星カストルの近くに放射点(星が流れる中心)があるため、この名で呼ばれています。毎年12月14日前後にあらわれ、8月のペルセウス座流星群・1月のしぶんぎ座流星群とともに「三大流星群」とされています。この時季は夜が長く、放射点がほぼ一晩中見えているため、夕方から明け方まで流れ星を見るチャンスがあります。冬は明るい星が多いので、都会の空で星座を探すのもわりと簡単! ただとても寒いので、外に出る際はしっかりと防寒しましょう。
多くの流星群は彗星が落とした細かいかけらから生まれていますが、ふたご座流星群の母天体と推定されているのは、彗星ではなく小惑星フェートン(ファエトン)。長い尻尾は見られないものの、過去に放出されたと思われる大量の塵が軌道上の全体に溜まっているのだそうです。彗星の場合と同じく、軌道に溜まった塵が、年に1度回ってくる地球とぶつかって、そのエネルギーで大気が発光してたくさんの流れ星が生まれているのですね。
ところで、ふたご座って夜空のどこにあるのでしょうか?
冬の夜空でいちばんわかりやすいのは、オリオン座の「等間隔に並んでいる3つの星」です。まるで服のボタンみたいですね。12月14日1時の夜空(画像の星図)では、その右上にある赤い星が「ベテルギウス」です。そしてその下のほう、キラキラと瞬くもっとも明るい星が「シリウス」です。その左上に輝いているのが「プロキオン」。この3つで「冬の大三角形」をつくっています。そしてプロキオンの上のほうを見ると…同じくらい明るい星が2つ! これが、ふたご座の兄弟「カストル」と「ポルックス」。左側のちょっと明るいほうが、弟のポルックスなのです。
星座には、おおむね明るい順にギリシャ文字のアルファベットをあてて星を呼ぶ「バイエル符号」というのがあるのですが、ふたご座の場合はカストルがα、ポルックスがβと、なぜか暗いほうのカストルが先頭になっています。星が流れる中心が近いから? カストルが神話でお兄さんだから? など、諸説あるようです。
線で結んだふたご座だと、ちょっとカエルの目玉っぽくも見える2つの星。昔の日本人は、お雛様に見立てて「ひなまつり星」と呼んだそうです。ちょうどひな祭りの夜に真上で輝く星だから。とても風流な呼び名ですね。
さて、ふたご座の兄弟はどんな双子さんだったのでしょうか?
ギリシャ神話によると、カストルとポルックスのお母さんは、レダ。スパルタ王のお妃様です。王妃から生まれた「双子」の兄弟と思いきや…じつは同時に、クリュタイムネストラとヘレネという姉妹(妹のヘレネはトロイア戦争の原因となった絶世の美人です)も誕生。ふたご座の兄弟は、「四つ子」だったのです! しかもこの4人は、レダさんが産み落とした2個の卵から孵化しました。文字通りの「一卵性双生児」が2組で4人という構成です。…って、レダさんは人間なのになぜ産卵を!?
どうやら原因は「お父さん」にあるようです。
ある日、水浴中のレダ王妃に魅せられた大神ゼウス(←妻あり・好色)。なんと白鳥に変身すると、鷹に追いかけられたふりをして、まんまと王妃の腕の中へダイブ成功! 人なつこく甘えてくる鳥類につい心を許したばかりに、レダさんは卵を産む運びとなってしまったのです。
この「レダと白鳥」のエピソードは、ダ・ヴィンチも描くほど西洋美術で人気の題材に。絵画や彫刻で目にしたことがある方も、きっといらっしゃるのではないでしょうか。
双子(四つ子)の誕生には諸説ありますが、ひとつの卵からカストルとクリュタイムネストラが、もうひとつの卵からポルックスとヘレネが生まれたともいわれています。なぜなら、兄のカストルはスパルタ王の血を、弟のポルックスはゼウスの血を引いていたから。
両親とも人間のカストルまでが卵から誕生するのは謎ですが…もしや不倫をごまかすためにゼウスが計っていたりして(ちなみに、白鳥は夫婦の絆がとても強いことで知られています)。
仮に父親は違っていても、この兄弟はとてもとても仲良しでした。
カストルは乗馬の達人、ポルックスはボクシングの名手。いつでもどこでも一緒に、さまざまな冒険をして武勇をとどろかせます。ところがある日、生身のカストルは従兄弟の手にかかって死んでしまうのです。ポルックスは不死身なので、「いつかあの世で再会」もありえません。嘆き悲しむポルックスを不憫に思ったゼウスが、2人を一緒に夜空に上げて星座にしたと伝えられています。並んで輝くふたご座は、美しい友情のシンボルともされています。
2020年のふたご座流星群の活動が最も活発になるのは、12月14日(月)午前10時ごろと予想されています。明るくなる前、つまり13日の宵から14日の明け方にかけてが観察のチャンス! 今年は12月15日が新月にあたり、月明かりの影響がまったくない絶好の条件となりますよ。日付が14日に変わる頃、暗い場所で観察すれば、最大で1時間あたり55個前後の流星が見られると予想されています。また12日の夜、14日の夜も、最大で1時間あたり20個を超える流星が出現すると考えられるそうです。
いずれの夜も流星は、20時頃から現れ始めるので、お子さんとも観察を楽しめそうですね。本格的な出現は22時頃からで、夜半を過ぎた頃に数が最も多くなります。ふたご座流星群の放射点は、深夜1時台に最も高くなるので、この時間に起きている方はぜひ空を見上げてみてはいかがでしょうか。
流れ星は放射点を中心に空全体に現れ、いつどこで流れるかわからないため、なるべく広い範囲を見渡すのがコツです。街明かりなどが視界に入らない方向を中心に、リラックスして空を広く見渡すようにすると見やすくなるそうです。なかなか見られなくてもすぐあきらめないで、少なくとも15分くらいは待ってみてください。体をあずけるチェアやレジャーシートに寝転ぶと、首もラクで快適ですよ(マナーと安全面にはくれぐれもご注意を)。
また、寒いと落ち着いて空を見ていられないので、防寒は万全に! 携帯カイロや温かい飲み物の準備、また、家の近くで見るなら、ときどき室内で暖まることをおすすめします。
『流星群の観察方法』(国立天文台)はこちら
冬の夜空には肉眼で楽しめる明るい星がいっぱいです。流れ星を待つ時間もいろいろな星を眺めて、ゆったり楽しみましょう。今夜の願いがどうか叶いますように!
<参考サイト・文献>
国立天文台
アストロアーツ
『星座の見つけ方と神話がわかる 星空図鑑』永田美絵(成美堂出版)
『星座の神話がわかる本』藤井 旭(誠文堂新光社)
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