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満月は、ほぼひと月に1回みられます。それは月の満ち欠けが約29.5日周期で起こるからなのですが、数年に一度くらいのタイミングで、満月が2回に! その2回目の満月は『ブルームーン』とも呼ばれています。ちゃんと2回目とわかるように、月が青くお色直しを?などと思いきや…実際は、ぜんぜん青く見えない!? どうやら4月の『ピンクムーン』(その季節に咲く花から)や6月の『ストロベリームーン』(イチゴの収穫期だから)などと同様、満月そのものの色ではなくて「暦」から付けられた呼び名のようです。
月はその時々で違う色に見えるから不思議ですよね。地平線近くにある赤っぽい月、高い位置にいる青っぽい月、またあるときは緑がかって見える月…これは、地球の大気や大気中のチリなどが、月からの光を屈折させたり散乱させて起こるものと考えられています。青い光は赤い光よりも散乱の影響を受けやすいため、私たちには「赤い月」のほうが多く見えているみたいですよ。
「blue moon(ブルームーン)」という言葉は「ありえない」「めったにない」という意味で"once in a blue moon"のように使われたりします。それでもごくまれに、ブルームーンが本当に青く見えることもあるのだそうです。「ブルームーンを見ると幸せが訪れる」「願いが叶う」なんて言い伝えも! もっとも、超レアな青い月を見ている時点で、相当幸せな状況に思われますが…。
月は、地球の周りを回っている唯一の衛星です。地球の4分1くらいの大きさで、衛星としては破格の大きさなのだそうです。地球から最も近く、世界中の老若男女が肉眼で親しんできた稀有の天体です。太陽の次に大きく見えるのですが、太陽はまぶしくて見られないので、月は地上から最も大きく見える天体といえましょう。ちなみに月から見る地球は、地球で見る月の大きさより約4倍大きく見えるのだそうです。
月の誕生には諸説ありますが、まだ地球ができたばかりの頃、火星くらいの星が地球にぶつかってできたという説が有力です。衝突の衝撃で飛び散った地球の表面のかけらと、ぶつかった星のかけらが合体して月になったというのです。つまり月の材料は、なんと地球だった!? 人類が月に抱くただならぬ親近感は、そんなところからもきているのでしょうか。また当時は、月と地球との距離は今の10分の1くらいの近さだったといいます。だんだん距離が延びてゆき、今も少しずつ遠ざかっているそうです。
さて、太陽の重要さはなんとなくわかりますが、月ってどれくらい重要なのでしょうか?
じつは月が誕生するときに地軸が傾いたことで、地球には四季ができたといわれています。そして月の引力で潮の満ち引きが起こり、いのちが生まれました。もし月がなかったら、地球は今の3倍くらいの高速で自転し、大気圏の動きもずっと激しくて、繊細な生きものは暮らせなかったのでは…ともいわれています。人間が生まれたとしても、外見が今とはかなり異なっていた可能性大。もし月がなければ地球は別物になっていたというくらい、重要な存在だったのですね!
ところで、月は地球につねに同じ面を見せて回っているのをご存じでしょうか?
地球人は、いつも同じ模様を眺めることで月への想像力をたくましく育ててきたのですね。日本人には「餅つきウサギ」に見える黒い部分は、玄武岩でできています。岩なのになぜか「海」と呼ばれ、場所ごとに名前が付いています。白い部分は「高地」と呼ばれて、クレーターや山があります。
そしてやっぱり気になるのは、お月さまが決して見せてはくれないダークサイド(裏側)! 宇宙から撮った写真を見ると、そこに「海」はほとんどなくて、クレーターだらけ。…私たちが見慣れたお顔とはぜんぜん違う「裏の顔」が、そこにはあるようです。
外に人工的な光がない時代、夜とは闇でした。太陽が沈むと、人は外で活動できません。ただ、月が明るい晩だけは、足元やまわりが見えて出歩くことができたのです。農民、旅人、逃亡者、犯罪者…。昼の太陽は全てをあるがままはっきりと浮かび上がらせますが、夜の月は灰色のベールで覆って色を奪い、遠くにあるものを近くに見せたりします。人が悩むのはたいてい夜。月を見ては黒い模様に死を見出したり、満月のもとでは日中動かないものが奇妙に活気づいたり。「夜」を司る月に「死や恐怖や狂気」などが結び付けられることで、「ハロウィンといえば満月」のイメージとなっていったのでしょうか。
けれど同時に、月は「闇に光をもたらすもの」でもありました。恋人たちにとっては、ロマンスの証人、ふたりの時間を見守ってくれる優しい目として。真っ暗な世界にいる人には、暗闇の恐怖に抗う希望の光になったのです。コロナ禍のハロウィンにあらわれる満月は、お祭り騒ぎをしなくてもおうちでお月見して楽しめるようにとの、宇宙からのプレゼントかもしれません。
「お天道さま」はまぶしすぎて見ることができませんが、「お月さま」はゆっくりと眺めて思いをめぐらすことができます。月は人の感情を宇宙へと導いてくれる、ま〜るいとびらなのですね。
10月31日にあらわれるのは、ブルームーンでマイクロムーン(2020年最小の満月)という、記念すべき満月! 今年はぜひハロウィンをお月見で楽しまれてはいかがでしょうか。次回のブルームーンは、2023年8月31日です。
<参考サイト・文献>
国立天文台
アストロアーツ
月探査情報ステーション
『月 人との豊かなかかわりの歴史』べアント・ブルンナー(白水社)
『知識ゼロからの宇宙入門』渡部潤一 監修(幻冬舎)
『恒星と惑星 手のひらに広がる夜空の世界』アンドリュー・K・ジョンストン監修(化学同人)