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「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言われる言葉です。厳しい暑さや寒さも、お彼岸のころには和らいで過ごしやすくなるということですが、今年はまだ暑さが続いていますね。この言葉には、どんな辛いこともいつかは和らぐという、優しい気持ちや人生に対する心持ちが感じられます。
さて太陽が、真東からでて真西に沈み、春分と同じように夜の長さが等しくなるのが秋分です。太陽信仰の国々では、特別な日とされることが多いです。日本という国号からも、私たちは、ことのほか太陽にシンパシーを抱くようです。かつては、春分秋分が1年の始まりだったこともありました。本日は、そんな彼岸にまつわるよもやま話を見ていきます。
春分・秋分の日に前後3日をあわせた7日間をお彼岸といいます。初日を「彼岸の入り」、終日を「彼岸のあけ」といい、春分の日・秋分の日は「お中日」といいます。
~ 2020年 秋彼岸の日程 ~
彼岸入り:9月19日
お中日 :9月22日(秋分の日)
彼岸明け:9月25日
~ 2021年 春彼岸の日程 ~
彼岸入り:3月17日
お中日 :3月20日(春分の日)
彼岸明け:3月23日
春分、秋分に最も近い戊(つちのえ)の日を「社日」といい、春の社日を春社、秋の社日を秋社とよび、土地の神や五穀の神を祀る日で、春には豊作をいのり、秋には収穫を感謝する行事が各地で行われます。
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉のとおり、季節が急に移り変わる時期。残暑もおちつき、例年なら雄大な雷雲のかわりに鱗雲があらわれてくるころです。米作りで生きてきた日本人には、苗代作りや稲刈りの目安にもなる大事な節目でした。
古来「赤色」には「魔除け」の力があるといわれていましたので、小豆は祝の席や儀式の際にはお赤飯や砂糖をまぜてあんこにして供えました。彼岸の時期には、お餅には「五穀豊穣」を、小豆には「魔除け」の意味を込めてぼたもちやおはぎを作って仏壇にお供えしたり、家族みんなで食べたり、ご近所におすそ分けをしたりして、祖先や人とのつながりを大事にします。ぼたもちは牡丹の花、おはぎは萩の花に見立てられました。
「彼岸」という言葉は、サンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜もしくは波羅蜜多(はらみった)」の漢訳「到彼岸」の略だと言われています。文字通り「彼岸」に至ることを意味します。
私たちの生きている「此岸(しがん・この世)」から、悟りの境地「彼岸(ひがん)」に到達するためには、修業が必要です。修行で乗り越えるべき煩悩と迷いを川に喩え、川のこちら側が「この世」。向こう岸は「悟りの境地」というわけです。
それが歴史を経て、死後の「極楽浄土」と考えられるようになりました。真東から登った太陽が真西にしずみ、昼と夜の長さが同じになる「春分の日」と「秋分の日」には「彼岸」と「此岸」が通じやすくなると考えられました。だからこそ、お彼岸には、お墓参りや供え物をして、ご先祖様に感謝の思いを伝えるようになったのです。
悟りへの「修行」は「六波羅蜜(ろくはらみつ)」とも呼ばれ、お彼岸期間中はこれを実践して、徳を積むことが大事とされています。
1.布施(ふせ)…親切 おしみなく施すこと
知識や教えを伝えること、温かい言葉をかけること、恐怖心をとりのぞいてあげること、体をつかって手伝うこと、善い行いをほめること、場所や機会を提供すること
2.持戒(じかい)…慎み 約束、決まり事を守ること
自分勝手な行動を慎み、ルールを守って助け合うこと
3.忍辱(にんにく)…忍耐 短気でない
思い通りにいかないこと、悲しいこと、辛いことがあっても困難をのりこえること
4.精進(しょうじん)…努力 なまけないこと
まずは最善をつくして努力すること。良い状態が得られたら、慢心せず向上心を持って維持や改善のために努力を継続すること
5.禅定(ぜんじょう)…平安 心を静かに保つこと
心を落ち着けて、どんな状態でも動揺しないこと
6.智慧(ちえ)…修養 正しい判断力を身につけるため、学ぶこと
もともと仏の智恵を授かり、この世に生まれてきている私たちですが、この世で欲望や知識などで真理を曇らせやすい傾向にあります。上記5つの実践により、真理を見極めること。単なる知識だけでなく、バランスよく心身を使って真実を得ること。
ハワイの言葉「アロハ(ALOHA)」は、こんにちは、さようなら、ありがとうの挨拶や愛情をあらわす場面まで、幅広い意味で使われますが、以下の言葉の頭文字をとっています。ALOHAの中に大事なエッセンスがこめられているのだそうです。なんだか六波羅密に似ていませんか?
Akahai=思いやり
Lokahi=調和
’Olu’olu=喜び
Ha’a Ha’a=謙虚
Ahonui=忍耐
ハワイではご先祖様はアウマクアと呼ばれ、家族を代々守るサメやかめ、ヤモリなどに化身して身近にいるとされています。また、太陽の動きと、此岸と彼岸も密接なようで大事なイベントの前には、日の出の見える東のスポットにお祈りにいったり、西の岬に死者に会えるというスポットがあったりもします。古代からの日本のマインドとハワイ文化には共通する部分があり、面白いですね。
宇宙規模でとらえていくと、太陽の黄道を考え、黄道が「南側」から「北側」へと交わる方の春分と黄道が「北側」から「南側」へと交わる方の秋分は変化の大きなエネルギーにあやかることができるチャンスと、お彼岸や秋分の日に瞑想のイベントも多いようです。
忙しい毎日を過ごしている私たちです。お彼岸は、自分と脈々とつながっている祖先に感謝したり、宇宙や自然とつながっている自分自身を感じたり、心身と自分自身の状態のつながりに気づき状態を整えたり、「つながり」を感じられるワークや実践ができるチャンスかもしれませんね。
季節の変わり目です。様々なものとのつながりを感じつつ、心身をお大事にお過ごしください。
参考文献
七十二の季節と旬をたのしむ歳時記「くらしのこよみ」 平凡社
優しくひもとくハワイ神話 フィルムアート社
参照サイト
神仏ネット
仏教WEB入門講座
六波羅蜜寺