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今回は、本を読むきっかけにもなる、おうち図書館「家族の本棚」を生活に取り入れることをおすすめします。「家族の本棚」にぴったりの本も一緒にご紹介します。
本棚というと大がかりな感じがしますが、「家族が共有で過ごすリビングなどの場所に、10〜20冊の本が置けるスペース」ならば、意外に、簡単に作ることができるのではないでしょうか? テレビ台の横など、ふとした時に目に入る場所がおすすめです。そこには、家族みんなが読める本を置くようにしましょう。家族に読んでもらいたい本を置くのもひとつです。読書の習慣があまりない場合も、ふと目に入る場所にあると、つい手にとってみてしまうのがこの本棚の良いところです。
あるおうちでは、お母さんがこの本棚に「簡単に作ることができる料理の本」を置いていたそうです。すると、その本に載っているレシピのリクエストがあったり、キッチンに立てない時に、家族が代わりにこの本を見ながら作ってくれたということがあったそうです。
筆者の家ではもう10年以上、この「家族の本棚」があります。字が読めなかった子がだんだんと大きくなり、とはいえ読書習慣があまりないことを寂しく思っていたところ、時々この本棚から引っ張り出しては読んでいるということが増えていました。本をきっかけに会話が広がることもありました。
また、来客時、お茶の準備をしている際に手に取ってくれていたり、本の話題になることもあり、新しい出会いがあったりもします。
本の入れ替えは、気分によってだったり、交代で担当してみたり、各自の担当冊数だけ決めてあとは本人に任せる、など様々な方法があります。自分の知らない本や、家族の新しい一面を知れたり、感想を言い合ったりとサプライズやコミュニケーションも増えるかもしれませんね。
まだたくさんの字を読むことができない年齢のお子さんがいるご家庭でも置くことができる本を、2冊ご紹介します。
☆シュナの旅 宮崎駿/徳間書店・アニメージュ文庫
日本が誇るアニメーターの雄として活躍する宮崎駿さんの絵物語です。チベットの民話を基に絵と物語が紡がれていて、字が読めなくても伝わるものがあります。あとがきには「この民話のアニメーション化がひとつの夢だった」と記されています。宮崎駿さんが作るアニメーション映画を一編観たような、壮大な物語です。読む人それぞれに深い印象をもたらす作品で、読むたびに色々と考えさせられます。自分のペースでゆっくりと読み進めていけるのも本の良いところ。ぜひ、何度も読んでいただきたい作品です。
☆森に還る日―Michio’s Northern Dreams〈4〉 星野道夫/PHP研究所・PHP文庫
写真家・星野道夫さんのたくさんの写真と文章が載せられています。詩のようにとてもシンプルな文章ですが、それゆえに、写真とともに素直な言葉が胸に刺さってきます。人よりも、もっと大きなものの力を捉えたような写真も、見る人に様々な印象をもたらしてくれると思います。全6巻のシリーズで、こちらの『森に還る日』は木々や動物がメインになっています。印象に残る写真やイメージから、シリーズの中のお気に入りを見つけてみても良いかもしれませんね。
1人で読み始めた年齢の子にとって、本に必要な条件は、ふりがなが多くあることと読みやすさかと思います。そこでぴったりなのが童話。大人も、知らなかった童話の世界を広げて、少し童心に帰ってみるのも良いかもしれませんよ。
☆絵のない絵本 アンデルセン(著) 矢崎源九郎(訳)/新潮社・新潮文庫
「おやゆび姫」や「マッチ売りの少女」などの童話を残している、世界的にも有名な童話作家のアンデルセンの短編集です。一生を旅から旅へとさすらったといわれるアンデルセンの体験を基に、月が絵かきに語りかける物語として紡がれています。大人も少しクスッと笑える、ユーモアが織り込まれていて、楽しい作品です。ひと夜ごとに区切られているので、読み聞かせにも良いかもしれません。
☆世界一周おはなしの旅 リンダ・ジェニングス(編) 乃木りか(訳)/PHP研究所
ページを開くと、世界地図のイラストが描かれている、世界のあちこちにある童話を集めた本です。字が大きく、表現も分かりやすく、挿絵も可愛らしくて、とても読みやすいのでおすすめです。世界地図を眺めながら読んでみると、行ったことのない国やよく知らない国にも、親近感が湧いてくるかもしれませんね。
家族みんなで読みたい本としては、リアルなノンフィクションや伝記などの社会や生き方を考えさせられる本がいいのでしょうが、心がふっと軽くなる、優しい世界が描かれている本もおすすめです。
☆朝の少女 マイケル・ドリス(著) 灰谷健次郎(訳)/新潮社・新潮文庫
作者が初めて書いた子供向けの本です。カラフルで抽象的な挿絵も、物語の世界観を広げてくれています。訳者である灰谷健次郎さんは児童文学作家で、著書である「兎の眼」や「天の瞳」などは、テレビドラマ化されており、知っている人もいるのではないでしょうか。
この「朝の少女」の解説あとがきで、灰谷さんは「教師はもちろん、自然や環境保護に関心のある人たち、政治や経済の仕事にかかわっている人たち、そして何より、わが子の行く末を気遣っている世の親に読んでもらいたい」(引用)と結んでいます。優しく穏やかな世界の読了後に、大人にとっては考えさせられる後味を持つ、不思議な物語です。
☆南の島のティオ 池澤夏樹/文藝春秋・文春文庫
こちらも作者が子供向けに書いた初めての本になります。10の短編からなっていて、素敵で不思議な、南の島を舞台に12歳のティオという少年を通して様々な出来事が描かれています。ゆったりと流れる時間感覚で、長期で旅行に行ったかのような気持ちにもさせてくれます。読了後の感想はそれぞれかもしれません。家族で話してみるのも良いかもしれませんね。