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※写真は主催者から特別に許可を得て撮影したものです。
今回の展示では99%日本で作成された作品を展示していますが、ただ1点のみ、プロローグで本展覧会のキャラクター・カンザン君のモデルとなっている作品「寒山図」(元時代13~14世紀 紙本墨画 1幅)が展示されています。カンザン君同様、こちらもほのぼのとした雰囲気を漂わせていて、まるで「墨は楽しいよ~」と語りかけてくれているようです。続く第1章では「祈りの墨~古写経~」と題して古写経の名品が展示されています。この時代の特徴は、仏教普及との深い関連により国家事業として写経が行われていたことでしょう。祈りの墨、というタイトルは仏教との関わりを表わしているのですね。大陸から渡来した墨の文化は、王羲之の楷書体にならい一文字一文字、丁寧に祈りを込めて記されています。墨のコーティング力は強力なもので、このように古い時代の作品が1300年の時を超えて伝わっています。ちょっと感動しませんか?
平安時代になると、和歌とともに仮名文化が発展します。仮名のはじまりは漢字を音に変えた「万葉仮名」ですが、崩し字として現れた「草仮名」から「平仮名」へと変化します。平仮名は女手(おんなで)と呼ばれ、平仮名を続けて描いた(敢えて書くではなく描くと言いたいです!)「連綿(れんめん)」で描かれた書は、『「平安時代から鎌倉時代の和様の名筆」を意味する「古筆」を象徴するもの…』(引用抜粋)と言われています。平安時代は和歌とともに書が発展した時代でもあります。平安貴族がその優雅さを競った名品の数々は料紙(りょうし)や額装の美しさはまるで絵画のような色彩美でもあります。今回の展示では、「国宝 和漢朗詠照 大田切(平安時代 11世紀)が修理後初公開されていていますのでお見逃しなく!
色彩美大好きな筆者は水墨画に今まで食指が動かかなかったのですが、今回の展示を拝見して目から鱗が落ちる思いをいたしました。色には明度と彩度があり、一つの色でもその色合いにより同じ色ではありません。墨も同じ、という当たり前のことに今回気づかされました。水墨画は、鎌倉時代に禅僧により外来文化であった水墨画が日本でも描かれるようになりました。その後室町時代になると絵と詩で一つの軸となった「詩画軸(しがじく)」が流行します。幕府の御用絵師になった周文や次世代の雪舟などの活躍により水墨画は多彩な表現を確立して行く中、墨の濃淡はもちろん軸から屏風絵への進化や四季の移ろいを自然や人々の情景で表現し、黒の中に淡い色彩を織り交ぜるなどまさに多彩な表現が目に優しく感じます。水墨画の世界へようこそ、という作品があなたを待っています!
【展覧会概要】
会期:2019年8月31日(土)~10月14日(月・祝)
休館日:毎週月曜日(ただし9月16日・9月23日・10月14日は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)
開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料:一般1,000円、大学生・高校生700円、中学生以下無料 ※20名様以上の団体は200円割引
イベント:講演会をはじめ、ミニコンサートなど秋の1日を楽しめるラインナップです。詳細はリンクサイトよりご参照ください。
【出展・引用】
静嘉堂文庫美術館 展覧会カタログ
静嘉堂文庫美術館 展覧会リーフレット