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冬は新酒がでまわる季節です。同時に「酒粕」もできたてが手に入りやすい時、まず「酒粕」とはどんなものなか、見てみましょう。
清酒の原料は蒸した米と水、それに麹菌や酵母を加えることで作られています。米は麹菌の酵素によりでんぷんがブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に分解されます。さらに酵母の力でブドウ糖は発酵しアルコールになります。こうして「もろみ」ができます。これを絞って清酒の原酒を取り、残ったかすが「酒粕」というわけです。
「かす」というと役に立たないもののように感じますが、「酒粕」にはタンパク質や食物繊維、ビタミンBといった私たちの健康を維持する上で大切な栄養成分が残されているのです。同時に含まれているアミノ酸や酵素こそ料理に活かしたい成分なのです。
タンパク質が分解されてできたアミノ酸の中でも豊富に含まれているのが、昆布出汁のうま味成分として知られているグルタミン酸です。このあたりに「酒粕」の活用方法があるのではないでしょうか。
参考:
<文部科学省 食品成分データベース:酒粕>
<特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター:酒粕を検索>
「酒粕」は売られている状態は板のように固いものや、柔らかなお団子状のものと形はさまざまありますが、どれもお湯になじませながらふやかして使います。「かす」とはいえアルコール分が含まれていますから、お子様やアルコールの苦手な方は煮立てて、充分にアルコールを飛ばすことが大切です。
最も手軽なレシピといえば「甘酒」でしょうか。「酒粕」を好みのとろみ状態まで煮溶かし甘味をつければできあがりです。砂糖でもいいのですが、伝統的な製法で作られたみりんもオススメです。みりんの材料はもち米と麹に焼酎をいれて仕込み熟成させたもの。どちらもお米の美味しさが凝縮されていますから相性もピッタリ、甘さもほんのりといった上品さにしあがります。
寒い夜のご馳走といえばやはり「粕汁」となりませんか。魚や茸類といったうま味成分をもった食材と合わせることで出汁がなくてもうま味たっぷりの一品ができあがるようです。酒の風味が魚の臭みを取ってくれますから、寒い時の手間いらずはありがたいですね。
《粕汁にあたたまりゆく命あり》 石川桂郎
《粕汁や母の味なる具だくさん》 川端正紀
熱々の鍋から立のぼる湯気にふんわりまじる「酒粕」の甘さと香りが食欲をそそります。冬の食卓のなつかしい想い出の味としても存在の大きさを感じます。
風味やコクが増す鍋や煮込み料理のほかに「粕漬け」もまた美味しい使い道です。
ひと塩した切り身を1時間ほど置き、出てきた水分をふきとった後、程良くゆるめた「酒粕」を表面にぬりラップでしっかり包み、冷蔵庫で数日寝かせます。焼くときは「酒粕」をぬぐい取ってください。焦げやすいので注意です。
魚の粕漬けの美味しさはご存じのとおりです。そのからくりは、魚介類が持つイノシン酸と「酒粕」のグルタミン酸がダブルで活かされ、同時に甘味やうま味が染みこみ味わいを深めているのです。また酵素の働きでタンパク質が柔らかくなるため、身の口あたりがよく食べやすくなります。醤油などの塩分とは違った味付けで料理の幅を広げていけそうです。
ほかにもクリーム状にした「酒粕」に、同量のクリームチーズを合わせて作るディップもオススメです。合わせるのはレーズンやドライフルーツ、またタラコや明太子との取り合わせも美味しそうです。
いくつかのメニューを試しながら「酒粕」の美味しさを実感できれば、次はあなたの味覚に合わせたレシピが作れそうですよ。
新酒が出まわる冬は同時にできたての「酒粕」が手に入りやすい時期です。酒屋さんはもちろんスーパーなどでも気軽に買えます。発酵のうま味に挑戦して今年の冬を心ゆくまでに味わい尽くしてみませんか。
参考:
小泉武夫著『絵でわかる麹のひみつ』講談社